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留学先で見た風景

https://voicy.jp/channel/2511/589378

こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医のしょーたです。

今日は「留学先で見た風景」というテーマで短くお話ししたいと思います。

あなたは留学をしたことはありますか?僕は医学生の頃、カナダやアメリカ、オーストラリアなどに留学させてもらったことがありました。留学担当の先生にお願いをして、大学の研究室にいた海外からの留学生に英会話の先生をしてもらったこともありました。大学の学生課にいらっしゃった留学担当の方にも、色々な書類のチェックをしてもらったりもしました。右も左もわからない一人の学生を支援してくださったことに、本当に感謝しています。

ちなみに海外に留学するためには、TOEFLという英語の試験を受ける必要があるんですね。海外の大学で勉強するにも、海外の病院で研修をさせていただくにも、英語力の保証が求められるということです。ですから、そんな英語のTOEFLの試験を受けに日本の会場に行ったりしたものです。

そんなTOEFLの試験を受けながら、思ったことがありました。小学校・中学校・高校で受ける授業は、TOEFLに準拠した授業にした方が日常生活に役立つじゃないか。そんなことを思ったものです。日本の大学の入試にもTOEFLの点数が利用されるところもありますが、その方が色々な意味で効率が良いだろうと思います。後々の留学にも役立つし、日本で学ぶ英語よりも、ずっと生活に即した英語を学べるからです。

そんな経験をして実際に留学してみると、日本以外の国から同世代の留学生が集まっていました。お互いのことを自己紹介する時には、お互いの国のことを紹介することもあります。政治に関する意見を口にする留学生もいます。そんな機会を通して、自分は日本や社会のことをあまり知らないんだなあ、なんて恥ずかしく思ったものです。

そんな留学生活を送っていると、時々塞ぎ込んでいる留学生に出会うことがありました。留学って華やかで楽しい側面もありますが、一方で厳しい現実もあることを知ったんですね。そうやって留学先で上手く生活に適応できなくなってしまう学生には、共通点がありました。何だと思いますか?

それは、家庭とのつながりの薄さです。例えば、ある留学生は裕福な家庭で育っていた子でした。母国では何不自由ない生活を提供してもらっていたようです。いざ留学という機会を与えてもらったのはいいけれど、留学後には親から資金の提供はあるけれど、コミュニケーションでの支えはなかったんです。

それに、粘り強く生きる力があまり感じられませんでした。その心をハングリー精神とも言うかもしれません。困ったなあなんて体験も、自分の力でどうにかこうにか乗り越えようとする。その姿勢があるかどうかは、子どもが人生を生き抜く上でとても大切なことと思います。

可愛い子には旅をさせよと言いますが、それは本当だと思います。ただ、そのためには、その子へ安心感を届けるアプローチは必要と思います。ただ単に金銭を提供するのではなくて、「留学の生活には慣れたか?」なんて、ちょっとその子と電話でもコミュニケーションをとってあげる。そういった支えを感じさせてあげながら、あたかも一人で頑張っているみたいに演出してあげることが必要なのでしょう。

子どものハングリー精神は、実は親の巧みな演出とも言えるかもしれません。

今日は「留学先で見た風景」というテーマでお話ししました。

だいじょうぶ。
まあ、なんとかなりますよ。

湯浅正太
小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医。一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて:https://yukurite.jp/)代表理事。イーズファミリークリニック本八幡 院長。作家。著書に『みんなとおなじくできないよ』(日本図書センター)、『ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ』(メジカルビュー社)がある。

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