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子どもにとってのリベラルアーツ

絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心を育てるうえで役立つ情報を発信しています。そんな、子どもの心を育てるということを、あまりかたく感じないでください。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。

今回は、子どもにとってのリベラルアーツを考えたいと思います。

あなたは大人になって、正解のない問いが多いと感じたことはありませんか?ある立場の人から考えるとコレが正解だし、別の立場の人からするとアレが正解。社会で生きていると、そんなことばかりです。お互いにとっての正解が違うからこそ、世界では様々な争いが起きています。

そんな様々な意見が混在する社会で生きるうえでは、多様性を理解し、多角的な視点で物事を捉えられることが欠かせません。そのうえで、リベラルアーツのような学びが大切になります。だからこそ、世界の大学でリベラルアーツ教育が取り入れられています。

リベラルアーツの起源は古代ギリシア・ローマにあり、自由人として「人がもつ必要がある技芸(学芸・技術)の基本」と見なされた学問のことです。そこには、論理学、幾何学、天文学などがありました。そのリベラルアーツは現在、多角的な視点を学びながら、社会で活躍できる人を育てるための学問という位置づけにあります。

様々な知識を得ながら多様性を理解し、色々なものの見方をできる視点を手に入れるということです。そういった学びを通して、様々な相手を理解できるようになる。これから社会に出ようとする学生にとって、その学びはかけがえのない経験になるでしょう。

僕も医学生の頃、自分を深めるために様々な視点を得たいと思い海外留学をしました。バックパッカーもして安い宿などにも泊まりながら、世界から集まる学生たちと交流しました。食事などの生活文化の違いや、物事に対する考え方の違いに触れたのです。

一つの物事に対して色々な意見があっても、それはそれぞれが正解で、それらを共存させながら生きようとするにはどうしたら良いのか。学生であった僕は、そういった思いを抱きながら生活していました。今振り返ってみても、あの頃の経験は、小児科医として生きる僕にとってかけがえのないものでした。

日本の学校では子どもたちは、正解のある問いをたくさん学びます。それは、決して悪いことではありません。正解があることを知ることも大切と僕は思っています。それは、こういった考えの中では、こういった正解が導き出せる。そうやって、ある視点からある一つの答えを導き出せることを知ることは、逆にそれ以外が見えなくなることを理解できるからです。

一つの正解を導くということは、他の可能性を排除するということです。そういった世界があることを、僕は学校という場所で学びました。そして成長するに従って、あらゆる正解で成り立つ社会を感じるようになります。そうやって、自分の中の正解とは違うものが、多く存在する社会を感じたのです。だからこそ、多くのものとは違う自分らしさを追求できる心が育ちました。

これからの時代を生きる子どもたちにとって、どんな教育を提供してあげたいか。自分たちが受けてきた教育とは違うものを子どもたちには提供したい。そういった空気が社会には溢れています。でも、まだまだ「こうでなければならない」という考えがあらゆるところにはびこっています。

一つの正解を求めることも必要であるし、正解のない問いで考える経験も必要。リベラルアーツの価値を考えることは、子どもたちのあらゆる可能性を引き出すために必要なことと思います。社会の秩序は保ちながらも、自由な発想を子どもたちに与えられる環境を作ってあげたいものです。

今回はここまでです。

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