自然農たぶらかされた人たち
たった2列か、、
夕暮れに
ちくちく痛む
腰をおさえながら
僕には敗北感しかなかった
川口さんて
すごい人だなぁ
ため息しかでない、
六月の
神戸の風は爽やかで
緑豊かな
山の畠で
海の匂いが微かにする
ウグイスはいい声で
ずっとそばで鳴いている
山の水を触ると
我が家の
京丹波のキリっと痛いくらいの
水より
柔らかいやさしい水だった
今年は我が家の
3反の田んぼを
機械も使って植え終え
少し余った時間で
友達の不耕起の
田植えの手伝い
と勉強に来た
そして
一日で写真の範囲だけである
何が?
と言われたら
田植えです
と言うしかない。
午前中に
初めて友人の農園について
僕は田んぼを探した
どこ?
目の前だよ
ってこれ?
その田んぼは
よく見る
うちの近所の放置田と同じにしか
見えなかった
が、よく見ると
生えている
草たちが全然違った
田植えの道具は
定規代わりの木と
ひもとカマ
草の上にしゃがむと膝が濡れた
そんな僕を見て
水もう少し落としますねと言う
友人がカマで草をかき分けて
ミノル式で育った
きれいなみどりの苗を
草の中にさっと植える?
一緒に行った昨日知り合った
神戸の吉田さんと
うわー
そんな感じなのかと
ちょっとためらいながら
見つめていた
植えた苗が草と同化して
どこに植えたのかわからないと
言うと
そうですか
だんだんわかりますよと
友人がいう
珊瑚礁に同化してる
魚やタコを探しているのと似ている
そしで夕方までやって
これだけである
高台から見たら敗北感しかなかった
一畝も植えたろうか?
友人は
こんなもんです
みんなでやったら終わるから
と笑う
効率と行ったらどうだろう
まったく非効率だろう
ただこの田んぼは10年以上
代かきもしていないし
手植えのみだ
ノコギリカマ1本なのである
それでちゃんと5畝で
150キロほど
お米は取れるそうだ
僕は
田んぼをやるのに
トラクターと
田植え機
動力除草機
バインダーに
ハーベスター
とエトセトラ、、
友人は鎌と刈り払い機だけ
畠は耕運機つかいますよと
照れくさそうに言う
川口さんは
全部辞めたんだね
僕が言うと
川口さん子供の頃
三又クワで田んぼやってたそうだから
そんなに手放す事に
違和感なかったんじゃないですかね
と言う
それにしたって
捨てすぎじゃないか
と呟くと
川口さんは
全部なくなって
最後の土地も売って
もう何もないと
思ったら
収入が入って来たんだってと
友人の奥さんが
木陰に座り笑って言った
えっ
2人は川口さんの所で知り合ったの?
僕が聞くと
そう
とても大切な場所
大切な人なの
木陰で犬と奥さんが笑っている
全部捨ててかぁ
すごいなぁ
何か僕は
たくさんの機械や物を持ったけど
最近すごく
貧しくなってる
気がしているんだと
友人に話すと
そうかも知れないですね
やっぱり得たと
思ってる事は
反対かも知れないですね
と しずかに言う
川口さん
ここに来て
凄くうれしそうに
観てくれたんです
膝が痛いのに
この高い畔を
登らせちゃってと、
申し訳なさそうに言う
彼が
去年まで
10年離れていたけれど
いまも
僕の友人でいてくれる事を
本当にうれしいなぁと
心から思った。
川口由一さんが
福岡正信さんに
たぶらかされて
いま
ここ
この田んぼで
同じくたぶらかされた
友人と
僕もわらう。