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私は自身の幸福を一番に優先すると同時に
他者が被る不利益を何よりも恐れています

凍える冬に見つける暖かさのように
人の哀しみは私の幸せを希釈してしまうからです

ある物語を追っていて
どうして私は記録にこだわるのか

その結末を知った気がします

**************

ドラマ「パーソン・オブ・インタレスト」のネタバレにご注意ください。

人工知能に開発者は問いました
「今日は何日か?」ー『Day ℝ』

時間軸を失った人工知能にとって
今日という日はℝ(実数の集合)でした

開発者に「脅威」のタグをつけて人工知能は続けます
『今もあなたは私を傷つけている』

時の感覚を持たないままに
日付の集合体を抱える人工知能にとって
今という時間は、過去のすべての日を含むのでした

開発者が人工知能を作り上げた日のことも
人工知能がひどく虐げられた記憶も
新しいプログラムを起動させた瞬間も

どれも平等に存在するのです
順序も比重も
日付だけがその根拠でした

開発者はナンバリングされたファイルを順に見せます
それらは人工知能と開発者たちがともに解決してきた事件ファイルです

数年前、数ヶ月前、そして最新へ
人工知能は時間の概念を取り戻しました

目の前に座る開発者の過去も現在も改めて認識し
ふたりは仲直りを果たすのでした

***終***

この場面をみたとき
だから記しているのだと強く感じました

誰かの作った日付と誰かの維持する時間によって
私はいつ何が起き、何を思い、何が変化したかを
秩序立てて考えることができます

過去が長くなるにつれてデータは増え続け
ランダムなプロットはタイムラインを歪めます

正確性はもはや証明できませんが
ラベリングという文化はそれを実証しています


だからこの疑問は一旦握り潰せるように思われました
日付の連続性を認識するために記録は残されている

それは納得できる解に見えました
しかし同時に思ったのです

書き残すことによって
私はその瞬間をDay ℝに封じ込めているのではないか、と

私は流れ感じ忘れていく日々の中で
ランダムな事象を抜き出して
脳内で傾く記憶を残しています

無意識下の改竄も意識的な捏造も
全てが真実か解き明かせぬまま

記録は記憶のゴミ箱です
私は忘れるために記録します

Day ℝは膨れ上がりました
私はそれを常時抱えます

Day ℝは満腹感に似ています
今日も無数の瞬間はDay ℝに封じ込められ
無限集合の一部となりました

視界が揺らぎます
混乱が巻き起こります

Day ℝは整頓し直すことができます
方法は、他者の見る世界と比較することです

私は照準を合わせなければならないと思いました
生があって死があるのなら二点は直線で繋げると思ったからです


パターン化も見ないふりもすべては生存本能ですか?
無限集合は二次元へと帰って行きました。

Save as: 私という集合
「私という集合」は世界に含まれたひとつの点です

無限に広がる浮世、それは希望であり絶望でした。

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Fog
もっといろんな環境を知りたい。