第2章 道程 ②「人生は一日で変わる」
数日後の11月中旬、平日の朝10時半頃だったか、知らない電話番号から携帯に電話がかかってきた。市外局番と次の3桁の番号を見ると、どうやら長崎大学のようだ。面接日の連絡だろう。
「はい、田平です」着信音で目覚めたと悟られないように電話に出た。
「図書館採用担当の横山といいます。田平さん、お昼に仕事していますか?」あれ、何の話だろうと不安になりながら「いいえ、していません」と正直に答えた。
すると電話は一旦切れた。何か悪い話なのではとヤキモキしていると、再び電話が入った。
「実は今年の9月から核兵器廃絶研究センター(RECNA)で求人を出しているのですが、誰からも応募がありません。田平さん、学生時代にRECNAで活動していたんですよね?それなら図書館ではなくRECNAへ来てくれませんか」。何の話かさっぱり理解が追いつかない。
「とりあえず面接に来てください」。そう言われ、日時と場所を教えてもらって電話を切った。
数日後、言われたとおり面接のため図書館へ行った。奥の部屋に通されると部長と課長が座っていた。私に電話をくださった横山さんは課長だとこの時わかった。
お2人は本題に入るのを急ぐように話を始める。
「あのね、今RECNAで求人出してるの。科研費[1]の事務補助と、センターの先生方の秘書的業務ばしてもらいたかっさ。これは夜のアルバイトじゃなくて昼の仕事ね。
最初、夜勤務の方で履歴書受け取って、なんでやろう、昼に仕事ばしよるけんかなと思ったとけど、そうじゃないならRECNAに来んね。
採用は12月1日から、社会保険完備。任期は2018年2月末まで。来てもらえんやろか?」
まさに青天の霹靂であった。RECNAで働けるとは思わず、また「科研費」という言葉も初めて聞いたが、こんなに嬉しい話はない。私に白羽の矢が立ったことに感謝をしながら「ぜひお願いします」と言った。
「わかった。そしたら後は鈴木先生の許可ばもらうだけやけんが、そん時にまた来て」。
15分程度の面接を終え、私はそのまま帰宅した。
[1] 科学研究費のこと。日本学術振興会は「科学研究費助成事業」を通して、様々な分野の学術研究に科研費を交付し、研究の助成を行っている。