第6章 命日 ①「勲さんに捧げる講話」
2019年10月上旬、私は熊本県球磨(くま)郡水上(みずかみ)村にいた。人吉駅から路線バスで1時間のところにあるこの村は、田んぼと畑が多くある盆地だ。きれいに澄んだ秋の空に緑の山々が美しく映えている。
私はこの村の小学生に講話をするためにやってきた。
奇しくも、この日は勲さんの命日であった。そんな日に講話をさせていただくことになり、不思議な感覚になった。天国にいらっしゃる勲さんに思いを馳せながら、講話を始めた。
さすがは自然豊かな環境で育った子供達だ。とても元気がよく、素直な子達ばかりであった。特に男の子が活発で微笑ましかった。
***
講話を始める前に「あなたにとって平和とは何ですか?」と質問した。
「ちょっと難しいなーと思ったら、何をしている時が一番幸せかを考えてみてください」と付け加えた。男の子6人くらいが一斉に手を挙げてくれた。
「ケンカをせず、友達と仲良く過ごせることが平和だと思います」
「みんなが平等に生きられること」
「早死にとかせずに生きられること」という答えが出た。
体格の良いある男の子は「幸せな時は給食を食べている時です」と言い、素直な答えに思わず癒された。
「それでは、もし今、皆さんの考えた平和が、原子爆弾で奪われたとしたら?…ということを今日は考えてほしいのです」。そう導入し、勲さんの被爆体験に入った。
子供達があまりにも真剣にメモをとるので、スライドを次に進めることをためらうほどであった。
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