ジャズピアノのオンライン教材の問題点【連続投稿50日記念特集号】有料級【後編】
今日まで3回に渡りジャズピアノのオンライン教材の問題点について個人的な意見を述べてきた。今日は昨日の続きで、手を出してはいけないジャズピアノオンライン教材の具体例と、オススメのジャズピアノオンライン教材を紹介していきたい。
その4.講師がプレイヤーとしても優れている事。
ジャズピアノの教材を見極める時に、講師がプレイヤーとして優れていない場合は教材の内容はかなり怪しい。プレイヤーとして優れている判断基準としては講師が現場でのプロの経験があること。(又は、かつてプロとして活動して今では教育活動をしているでも良い。)又は実際の演奏動画を見てみるのも良いかもしれない。
考えてみてほしい。英語を勉強したいと思った時に、英語を2、3年しか勉強していない人と、英語のネイティブ、もしくは英語を20年以上勉強しネイティブと同様、またはネイティブ以上に英語が上手い人とどちらに英語を習いたいだろうか?勿論、彼らが一流のプレイヤーだからといって指導が必ずしも優れているとは限らない。ネイティブイングリッシュスピーカーだからと言って英語を教えるのが上手くないというのと同じことだ。
しかしジャズを教える以上、その道で一定レベルの実力がなければ人に指導する資格はないと思っている。それは一定のレベルに到達して初めて見えてくるジャズの世界があるからだ。芸術の世界では特にそのようなことはあると思う。私はかれこれ15年ジャズピアノを弾いているが、毎年上達する度に自分が昨年までなんてひどい練習をしていたものだと後悔するのである。ましてや、ジャズを弾いて数年の頃なんてジャズのジの字も分かっていなかったし練習なんてひどいものだった。だから、ジャズを弾いたことが無いような人がジャズピアノ講師としてYoutube等で偉そうにジャズについて語っているのを見ると世も末だと思うのである。
いや、私はジャズを全然知らないし、ピアノも下手くそだから、ちょっとしたテクニックをまずは教わって徐々に本格的に習っていきたいという方もいるかもしれない。なるほど、確かに言いたい事は理解出来る。
これは英語に置き換えれば、英語のTOEICを受験する際に、英語を勉強してから一年でTOEICの点数を300点あげた、英語歴3年の人に英語を習うような感覚だろうか。ちょっとしたテクニックを掴んで、試験で点数を上げるのには試してみても良いかもしれない。しかし、もしあなたが英文作家を目指すのであれば、こんな素人に英語のレッスンを受けていては回り道になってしまうこともある。TOEICで900点台後半を取るというのは最低限の英語で仕事をする上での条件に過ぎないのである。
貴方はなぜジャズを学びたいのだろうか?ジャズを通じてジャズを演奏する楽しさ、音楽の喜び、芸術の奥深さを学びたいからではないだろうか?
もし、貴方のジャズを学ぶ上での最終目標が、今度の社員旅行の一発芸でなんちゃってブルーノートスケールを披露したいというのであれば、このような素人プレイヤーからレッスンを受けるのもありだが、ジャズとはなにか、即興とはなにか、アンサンブルとはなにか、音楽とは何かを習いたいのであれば、ある程度の演奏能力がある人に習うのが良い。
長年ジャズを勉強し、ジャズの大局を見られるようになった人に初歩を習うのと、初歩しか知らない、ほぼ素人に初歩を習うのは違うということを強調しておきたい。
残念ながら私はジャズのジの字も知らない三流ピアニストだ。なのでレッスンは基本的にお断りしているが、それでもちょっとしたヒントを知りたいという方に、おこがましいがレッスンを時折している。しかし私自身、人様に偉そうに指導できるようになるにはあと数十年かかると思っている。
初心者は何から始めるべきか?
これは次回特集号として詳しく書くつもりだが、ジャズ初心者に勧める学習は本物のジャズジャイアンツを沢山聞くこと、そしてトランスクライブ(耳コピ)を沢山することだ。くれぐれも偽物を聞いたり、偽物が作成した独自のエクササイズを学ばないようにする事だ。
考えてみてほしい。もし貴方が音大で作曲を勉強している学生だとしたら、どんな作曲家の作品を研究するだろうか?勉強の題材に使うのは、ベートーベンの交響曲、モーツァルトの弦楽四重奏、バッハのコラールだろう。これらの作品はクラシック音楽の歴史に残る作品で芸術性が高く、作曲家のスタイルや管弦楽法を学ぶ上で重要だからだ。
これらの作品を勉強しないで、作曲歴3年の素人が作った作品をアナライズをしている音大生がいたら、貴方は作曲の本質を学んでいないと思うだろう。
しかしジャズ初心者の多くは歴史上のジャズミュージシャンの音楽やスタイルを学ばずに、素人が作ったジャズのエクササイズや、曲を練習する人が非常に多いのである。レッド・ガーランドやフェニアス・ニューボーンを勉強せずに、素人のジャズエクササイズを学習するのだから目も当てられない。
Piano with Jonny・・・冒頭の15秒でも見てもらいたい。なんなんだ( •̀ㅁ•́;) このエクササイズ。AVの打ち込みMIDIの音楽かと思った。ジョニーとかいうこのインチキジャズミュージシャン。ソフト・オン・デマンド社に就職したらどうだ?
世の中にはこのようなゴミのような情報があたかも価値のあるように出回っているので我々は気をつけないといけない。
じゃあ、一体どんなオンライン教材が良いんだという方のために、以下に著者がオススメするYoutubeのジャズ教材のリンクを貼っておく。
著者がオススメする5人のジャズミュージシャンによるオンラインレッスン
① Peter Martin
② Geoffrey Keezer
③ Chad Lefkowitz-Brown
④ Jerry Bergonzi
⑤ Yuki Futami
残念ながら② Geoffrey Keezer と ④ Jerry Bergonziは有料コンテンツがほとんどだ。①の Peter Martinと③ Chad Lefkowitz-Brownは無料で有益なコンテンツが多いので、こちらから
そして最後の天才ピアニストの動画は全て無料!そして有益だ。
問題点はビデオ数が少ないので、今後内容を充実していく必要がある。
さて、感の良い人ならもうお分かり頂けたかと思うかもしれない。
これらのミュージシャンのレッスンビデオの共通点は何だろう?
正解は、これらのミュージシャンのレッスンビデオは、私が3回に渡って力説してきた無益有害のオンラインのビデオレッスンの対極にあるのである。
その1.ニュアンス、タッチ、フィールについて教えない。
その3.フレーズや小手先テクニックを紹介する。
その4.講師がプレイヤーとしても優れている事。
彼らのビデオで、その1.ニュアンス、タッチ、フィールについて教えるビデオは少ないが、実際に生の楽器を使ってデモンストレーションを行っているのでクリアとしよう。彼らがレッスンで教えているのは、主に概念である。一つの特化したフレーズを教えているのではなく、スケールの考え方や、ソロのコンセプトである。そして、彼らは現場での経験があるプロのミュージシャンであり、実際に演奏をしてデモンストレーションを行っている。本物の音楽を届けている。
先ずはPeter Martinのジャズピアノレッスンをご覧になることをオススメする。昔の古いビデオは無料だし、内容は素晴らしい。だが、これはジャズ初心者にとってはかなり上級レベルだ。そこで、次回の特集号では、ジャズ学習初心者が最初に行うことを丁寧に説明していきたい。
【続く】
写真:今日はサムネを頑張って作ってみた 笑
これから見栄えも良くしていくつもり ( ^ω^ )ニコニコ
ジャズピアニスト 二見勇気
Youtube - Yuki Senpai
Instagram - jazzpianosenpai
Twitter - 天才ピアニストゆうこりん ❤
プロフィール
1987年4月6日埼玉県春日部生まれ。3歳からヤマハ音楽教室でピアノを始める。クラシックピアノを大場啓子氏、國谷尊之氏、松本美都子氏に師事。ジャズピアノを今泉正明氏、石井彰氏に師事。高校を卒業と同時にプロ活動を開始。都内を中心に活動する。2012年にオスカーピーターソントリビュートアルバム 「バンザイオスカー」を発売。JAPANタイムズに掲載される。2013年にニューヨーク州立ラガーディアコミュニティーカレッジに入学。勉学に励む傍ら、ニューヨークのジャズシーンで活動する。2015年にニューヨークのミュージシャンと録音した第二のリーダーアルバム「Moonlight Serenade」を発売。日本ツアーを大成功に終わらせる。2016年にニューイングランド音楽院に入学。活動の拠点をボストンに移す。これまでジェリーバーガンジー氏、フランクコールバーグ氏、ミゲルゼノン氏に師事し、クラシックピアノをブルースブルベイカー氏に師事する。2017年にボストン・スイング・トリオを結成。ブカレストインターナショナルコンペティション2017でベストバンド賞を受賞する。これまでにヨーロッパ、中国、韓国、アメリカ、日本各地で公演を行う。また2018年と2019年の中国ソロピアノツアーでは70公演、50都市以上を周り大成功に収める。現在インディアナ大学でジャズ科補助教員をしながら Jacobs School of Musicのマスタープログラムに在籍中。ピアノをLuke Gillespie氏に師事。童貞ニート33歳。