13年前にやりたかったことを叶えた話
今日、1人で大宮に行った。大宮にあるスパに行くために、13年ぶりに降り立った。
私の大宮のイメージはあまりいよくない。というのも、大宮には予備校生として1年、大手予備校に通っていたからだ。
受験に失敗し、次はない。模試の結果も振るわず、勉強もついていけない。結局、進路も志望校も変更しなければならなかった、暗い思い出。
それでも、いい思い出もある。
初めて大宮に来たときに母と食べたパスタ。
予備校がお昼で終わったときに食べたうどん。
幼馴染と背伸びして行った大人カフェのコーヒー。
予備校の自習室から抜け出して買いに行ったおせんべい。
氷川神社に参拝しに行ったときに飲んだ甘酒。
あれ、すべて食べ物だ(笑)
でも、これらに救われていた。私はまた、味わいたかったのだ。
そう思っていたのに、なぜ13年ぶりなのか。それはちょうど受験が終わった年に東日本大震災が来たから。
大学入学の準備もままならなかったあの頃。大宮に行く選択肢はなかった。
地元に帰るときに必ず通るけど、荷物が多かったり、わざわざ途中で降りるのもなぁと思って降り立つことはなかったのだ。
それで今日。13年ぶりの大宮に行った。前日からワクワクしていた。それはもう、前準備ばっちりで。
大宮駅に降り立ったとき、懐かしいと思った。でも改札を抜けると、私の知らない世界が広がっていた。
味わいたかったもの、そのすべてが消えていたのだ。パスタもうどんもコーヒーもおせんべいも甘酒も。全部。
愕然としながらも、目的の1つであった氷川神社に参拝した。大学に受かった報告をしたかったのだ。
参拝を終えて12時。さて、お昼はどうしよう。パスタかうどんかにしたかったんだけどなぁ。
そのとき、ふと頭に浮かんだお店があった。駅に向かう通りにある、老舗のうなぎ屋さん。
食べてみたかったけど、18歳の私には2000円のうなぎは高級過ぎた。予備校生の身で、と後ろめたくてお店に入れなくて、予備校から帰るときにいつも横目で見ていたお店。
行ってみよう・・・!!!
こんなにドキドキしたのは久しぶりかも。開いてるかな。
お店について引き戸を開けようとしたら、実は自動ドアで。自動で開いて声がでるほど驚いてしまった。だいぶ緊張していたかも。
食べたのは「ひつまぶし」。
うなぎの身はやわらかく、たれが上品に絡んで美味しかった。出汁とわさび、ねぎをかけて食べるとまた別の味に変わる。一緒についてきたお吸い物と茶碗蒸しは、出汁が絶妙で、うなぎの味を邪魔しない上品な味付けだった。
「わっおいしい!」
思わず声が出た私に、常連のお姉様たちがクスクス笑っていた。
「ここ、おいしいわよね」「はい!ずっと来たかったんです」
そう、13年前の私は、このお店にずっと来たかった。
13年前の思い出をたどることはできなかったけど、13年前にやり残したことができた。
13年前の私の願いを叶えられた。もう大宮に未練はない。
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