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講演「なぜ私たちは『じゃ、どうすればいいの?』と思ってしまうのか」をレポートします

 ワークショップデザイナー(WSD)のFacebookグループに投稿された、こちらのシンポジウムに参加しました。スピーカーは青山学院大学WSD育成プログラムでのビデオ講義にも登場された佐伯胖先生。
 青学WSD受講者には佐伯先生のファンが多いらしい。実は私もその一人。
ビデオ講義の中での佐伯先生の言葉「WSDはゲリラ。市中に潜伏し、しかし確実に社会を変える。」を聞いて、「なにそれ、カッコいい!」と思ってしまった。佐伯先生の講演とあらば、聞き逃すわけにはいきません。
 自分の理解が追い付いていないところもあるかもしれませんが、ここにレポートを残します。

なぜ私たちは『じゃ、どうすればいいの?』と思ってしまうのか」

 佐伯先生の考察によれば、

  • 明治以来、日本は西欧文明の輸入に必死だった。(これからは、みんなこうすべきだ!)

  • それは何なのか/なぜなのか(WHAT/WHY)はさておき、どうすればいいか(HOW TO)を知ってさえいればいい

  • WHAT/WHYを問うのは偉い人だけで、凡人である私たちはその答えを知っていればよい

 そして、私たちは常にHOW TOをきちんとやっているか?「まじめに」やるべきことをやっているか?を評価されている(と感じている)ので、「じゃ、どうすればいいの?」と思ってしまうのだ。

デューイ、ワッサーマン、「天然知能」、「マイナスの接触」

 しかし、遊び心とまじめさは両立しうる。遊びには目的がなく、プロセスそのものを楽しむ。一方、仕事は目的があり、その達成のために手段を探し、実行する。目的を理解し、その過程を真剣に楽しみ、何か得られそうだと思うとき、仕事は苦役ではなくなる。
 正解を得るのではなく、「だったらどうなる?」の問いを次々と生み出し、何をするかを自律的に決め、考えるより体を動かしていくことで、真剣に何かを楽しむことができるようになる。
 また、郡司ペギオ幸夫「天然知能」を引用して、私たちの知能はいつも論理的なわけではなく、相反する状況を疑いもなく受け入れていることを示された。(例えば、すでに試験は終わっているのに、「どうか合格していますように」と祈ってしまうような。)
 さらに、対象への向き合い方として、「マイナスの接触」を紹介された。対象をモノ的にとらえ、一方的に接触するのではなく、対象の中に何があるのか、今どんな状況なのかを絶えず意識しながら接触する、それが「マイナスの接触」である。

そして「DND理論」

 そして、ここからが佐伯先生の真骨頂。「じゃ、どうすればいいの?」からの脱却のための「DND理論」だ。
 DNDとは、DO-NAN-DARO(どうなんだろう)の略!(まさかの!)
 常に「これはどうなんだろう?」「これをやってみたらどうなるんだろう?」と問いを持ち続けること。対象にも「どうなんだろう?」という思いが生じることを信頼し、期待して働きかける。やってみる、なりきってみる、感じてみる。そして、決着は後回しにすること。

佐伯先生からワークショップデザイナーへのメッセージ

 ワークショップを運営するとき、「こうすれば盛り上がる」というような、定石のようなものを持ってしまうと、その場では盛り上がるが、後になって「あれ、結局何だったんだろう?」と、参加者には何も残らないことも多い。
 ファシリテーターが常にDNDの態度で対象(参加者・プログラム)に向きあうことで、参加者は答えは得られなくても心に何かを残し、考え続けることができる。

感想

 引用された理論はどれも真面目で、やや難解なところもありましたが、思い返すと、全てがワークショップデザイナーにとって大切なことでした。
 一番印象に残ったのは「決着をなるべく後回しに。」
 我々はつい物事や状況に判断を下したくなってしまいますが、考え続けること、対話し続けること、矛盾した状況にも身を委ねてみること、正解だけでは割り切れない時代を生きていくヒントかもしれません。

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