「引き出し屋」について
今更「引き出し屋」についてだけど、ちょっと調べてみるとかなり闇が深い話だと思って今回取り上げてみた。
まずこの引き出し屋なんだけど、「日本では8050問題が顕著になり多くの年老いた親が労働の義務を果たさずに自宅に引きこもり家庭内暴力を振るう息子に苦しんでおり、そんな息子をどうにか自立させたいと思い、引き出し屋に多額の現金を支払って暴れる息子を引き出し、就労厚生してくれる場所に連れて行ってもらうというケースが…」と説明されるんだけど、これほぼ嘘である。
こういうケースは確かにあるし、それで本当に親御さんが苦しんでいるケースがある。そしてそういう息子を自宅から連れ出す引き出し屋の攻防はリアリティ番組みたいで糞面白いし、そういうケースを前提に引き出し屋の是非が語られてしまうのだけど、実は引き出し屋の実態はあまり世間では認識されていない。引き出し屋の議論を進めていくうえでまず押さえておきたいポイントを列挙して行こう。
❶引き出されるのはニートとは限らない
はい。普通に働いていたり学校に行っていたり就職活動をしている人でも引き出し屋に自室に乗り込まれて拉致監禁されて施設に連れていかれます。
何せ引き出し屋が初めて法廷で問題視されたケースがこのケースである。2017年5月の事件だが、20代の女性は引きこもりですらなかったが、家族間で喧嘩になり母親を平手打ちしてしまった。母親は「娘が手を挙げるなんて」と狼狽え、インターネットで危ない会社を見つけてしまい、そこに相談するんだが、まぁ会社は金が欲しいので「娘さんは大丈夫ですよ」「わざわざ引き出すまでの事もない」と言うわけがない。「娘さんはこのままだとヤバいです」と言って600万円払い、娘はアパートからいきなり引き出され、会社施設に拉致監禁されて殴るける、食事をあまり与えられないなどの虐待監禁生活を送った。3か月も。
❷引き出し屋は引きこもりについて何も知らない
引き出し屋とかは「引きこもりは無駄にプライドが高い」「理想を追い求めて現実を見ない」と言っているが、これは引きこもりに関する学術論文のどこにも書いていない。
そりゃそうである。引きこもりの存在をこういうイメージにしておかないと業者は両親を洗脳出来ないからだ。
引きこもりになる要因としてデータ上相関関係が認められるのは発達障害である。「引きこもりの100%が発達障害」では決してないが「引きこもりになる理由はまず発達障害を疑え」ぐらいに考え、そうではなかったら別の対策を講じるくらいに考えても差し支えない程度には相関関係がある。つまり彼らは「自分が社会でやっていけない存在」だという今までの人生の経験で感じており、だからひきこもるのである。
つまり発達障害かどうか診断して、そのうえで支援を受けて理解ある職場での就労をした方がよっぽどいい。いや、それもそれなりに楽な道でもないが、600万変な業者にぶち込むよりは、自分が何でこうなのかを正しく理解して支援を受けた方が費用対効果はデカいはずだ。少なくとも就労活動をしている時点で引きこもりやニートからは脱出できる。
他にも当事者が「電磁波攻撃」だの「集団ストーカー」だの言っている場合は統合失調症を疑うべきだし、家庭内暴力を振るっている場合は自害や他害の恐れがあるとして措置入院させる方法もある。職場でハラスメントを受けた事や学生時代のいじめによるPTSD、極端に疲労しやすい症候群など就労を阻んでいる因子はいくつもあり、それぞれ適切な対応があるはずである。
❸カルト問題が絡んでいることがある
最初に言っておくが、ここでいうカルトは宗教を意味しない。「引き出し屋のバックには●ナ●●●ヘ●●●ス教が存在する」とか陰謀論を唱えたいわけではない。
私が言いたいのは両親が自分の息子や娘の引きこもりを業者が親身になって聞いてくれる事で、両親が業者の言う事全てを信じ、言われるがままに大金を支払って子供を差し出す姿は、完全に宗教二世問題であるという事である。勿論宗教二世は引きこもりをしたわけではなく親ガチャのせいでこうなったわけで「一緒にすんな!」とぶちぎれると思うが、まぁ話をさせてほしい。
実は発達障害の問題を調べてみると、かなりの割合で「親が発達障害を認めない」という問題がある。親が高圧的だったり暴力的だったりすると状況は最悪で「うちの子が発達障害なんかじゃない教」を子供は信じさせられ、結果として学生や就労で大きく失敗してしまう。よく発達障害者は「自己認識能力」「問題解決能力がない」と言われるのだが、親とかを悲しませたくないばかりに自分の認識を抑圧しているケースが多い。
で、いろいろ問題があったとき、親は「自分の子供が発達障害じゃない」という自己認識を肯定してくれる引き出し業者が現れたら、それを信奉してしまう。
昭和末期の不動塾事件では子供が将来に向けて活動しているのに、親が監禁スクール業者のボスを信奉していたために、学校帰りの息子を拉致するように業者に依頼して、結果子供が監禁、リンチされて殺されてしまった事件もあった。
つまり親と業者がカルト的な精神的支配関係にあるケースも存在するという事である。というかそうでなければ怪しい業者に1000万とか支払わないだろう。
この業者と親とのカルト的な支配関係は「引きこもりの子供の家庭内暴力に苦しんだ親の最後の希望」という言葉で覆い隠されてしまう傾向にある。
欧米では引きこもりでもない子供が「トランスジェンダーである」「同性愛者である」という理由で親が悩み、「子供の性的嗜好(向ではない)を治します」などと言った業者を信奉して子供を委ねた結果、子供が似たような施設で虐待されるケースがあるという。
引き出し屋の問題は「引きこもりが何一丁前に権利を主張しているんだ」という話ではないのである。そうやってネットで引き出し屋の被害者を罵倒しているあなたのアパートにもコンコン。