『無意識のバイアス』

ジェニファー・エバーハート 明石書店 2020.12初版 2021.32刷

「あの男の人、飛行機を襲わないといいね」。5歳の息子の言葉に黒人女性の社会心理学者である著者は憤り深く傷ついた。バイアスから自由でいられる者は誰一人として存在しない。だがそれは人間が大量の情報を処理するためになくてはならないものでもある。私たちは見て判断するのではなく、判断して見ているのだ、と帯にある。その「自然」な傾向と向き合いながら、主に人種の観点から、米国社会における犯罪と警察、地域社会、教育現場、それに著者を含む身近な人々を描くことを通じて、時に打ちひしがれながらも、著者は人間がお互いをはっきりと認識することに近づこうとする。社会にバイアスの対象となる集団が存在することはその集団の社会的適応を妨げ、帰属意識を低くしてしまう。それは公正な社会を遠ざけ、分断を広げる。本書は米国の人種問題だけの本ではない。巻末には高史明さんの解説。日本社会に存在する様々なバイアスについてもゆがめられた心を開いて注意を払うよう促してくれる。

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