山ペンギン 32 消火訓練
「オレくんー。先日ウチ強盗入ったじゃないー。」
先日が微妙にかなり以前だが、
「はい。大変でしたね。(イマドが。)」
「こういう不測の事態に対処しないとね。」
「なので防火訓練をします。」
防犯じゃないんだ。もうそのまま受け入れるオレ。
商店街のご近所も合同で訓練らしい。
近くで建設工事中のファッションビルの若い監督が、
「行きまーす。」
の掛け声と共に、訓練で使うために燃やす木切れを入れた、半分に切ったドラム缶に携帯缶からドボドボ注ぐ。
そこにいた建設現場の作業員の人たちはそれを見たかと思うと一瞬で100mほど走りさり、
「あんたらも逃げろ!!」
とそこから叫んでいる。
「やめろ!カントク!火を着けるな!」
若く経験のない監督はキョトンとしていたが、事の次第を把握した消防隊員に着火用のいわゆるチャッカ○ンを手から奪い取られていた。
「ったく…防火訓練で爆発起こるとこだったぞ…」
屈強な消防士たちが真っ青になっているのがこちらからすら分かる。
商店街の人たちは若干遅れて逃げていて、
ガソリンを回収するのを遠巻きに見ていた。
そもそもなぜガソリンを用意したのかもわからない。せいぜい灯油だろう・・。
「知らないって怖いわね…」
はい。主任。仰る通りです。時々あなたのことが怖くなるのはそれです。
というか、今こそ何より泉の女神に現われてほしかった。泉の水があれば・・・。
全部ガソリンを回収した後、さらに、散々その辺りをあおぎまく(ガスが残っていても引火しかねない。)って消防隊員がおそるおそるマッチを擦って放り込む。液体を完全回収しても、木切れが結構ガソリンを吸っているはずだ。
それでもかなりの火が上がったが…
イマドがホバリングで強い風を起こし、消し去ってしまった。
「・・・特殊過ぎて参考にならないな・・・。」
商店街の人がやり直して、消火器の扱い、水のかけ方、それぞれ学ぶ。
なんであれ基本に立ち返ることと、「知らない」と言うことがいかに怖いことかを思い知った一日だった。