山ペンギン 5 こんびににて
オレはコンビニで働いている。
他にも仕事はあるが、コンビニでいる時間が一番長いかな。
ここは複数店を束ねる「店長」がいるのだが他の店舗にいるために、
代理としての「主任」がいる。
その人は女性だ。
オレより2つ上。
実はちょっとこの人が気になっている。
それもこの店で長く働いている理由だ。
「オレ君。今日は塩焼き鳥を推しにしようと思うのね。」
「塩焼き鳥っすね・・。」
推しの日はあの、おなじみの
「○○いかがっすかー」の声を店員でそろえてということになる。
今は6月なんだけどな…しかもこのご時世。
ハデに声をかけられず、客にむけても声をかけられず
客のいない方に壁に向かって
「塩焼き鳥オススメっすーいかがっすかー」
最初から火を通したものの温め直しなのに
「こんがり焼き上がりましたーいかがっすかー」
間の抜けていることはもう限りない。
だが、責任者の言うことは絶対だ。
「塩焼き鳥いかがっすかーこんがり焼きあがりました。」
もちろん客は、何言ってるんですか、的な反応。
ドアが開いた。
イマドだ!
「焼き鳥いかがっすかー塩だけでおいしく・・」
何嬉しそうにこっちに来るんだ。
お前もトリだろ。
まさか、塩焼き鳥食う気なのか?
「冷凍庫から解凍してレンジでチンした塩焼き鳥いかがっすかー」
主任が驚く。「何言ってるの?オレ君?」
「ご家庭で作れば原価激安の塩焼き鳥いかがっすかー。」
なんだか客がざわめいている。くすくす笑う声も。
だが嬉しそうに近づくイマドに変化はない。
トリだろ?トリ本当に・・・
カウンターに来た。
「フィッシュフライ3つください。」
イマドが言った。
「・・・・・あたためますか?」
「そのままで。」
イマドは帰って行った。
主任が
「オレ君、ちょっとバックヤードに。」
こんなときだがちょっと嬉しいオレだった・・。
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