医療と採算 (再掲 加筆)


病院という場所は通常は経営者が医師であることが多いので、直接本人が経営しているケースは比較的少ない。

事務長とよばれる存在が経営を切り盛りしている。
大体は職員の管理も兼ねているので、非常に激務であると同時に、

トップでありながら簡単にクビを切られる可能性も非常に高い。

役員である場合も多いが、いわゆる雇われであることも多い。

激務である割には報われない。

ベッドコントロールと言って入退院の調整を行うことも仕事の一つだ。
病院は同じ患者が長期に入院すると利益がでない。

そもそも入院とは退院を見越して治療を行うことであり、病院は住居ではない。

当然建て前だが。

自力で生活はおろか口から食事を摂ることもできない人間に


医療の世界で、医薬品の製造業も兼ねて採算は非常に厳しい。

たとえば1錠の薬価(医薬品の値段)が「5.4円」であったりする。

法律上は製造→卸→薬局or病院、この3者では医薬品は同一の値段で取引しなければならない。

当たり前だがそんなことはできない。

結果製造業は非常に安い値段で医薬品を製造する結果にもなる。

場合によっては売れば売るほど赤字になるのだが、その薬が安いなりに非常に大きな使用のシェアを持っていたりすると、赤字を承知で製造せざるを得ない。

誰もが知っていて、非常に大きなシェアを持っている薬に「バイアスピリン」がある。

この薬価は「5.7円」だ。

ドイツに本社を持つバイエル社の医薬品だが、採算が取れているのかは不明。もちろん、原価だけで言えば全く問題ない。

しかし、100錠入りの箱、一つ一つの錠剤への印刷代、ヒートへの包装などを考えると採算がどうなのかは全く分からない。

「赤字です」などと言おうものなら、株価の下落につながりかねないからだ。


この会社は全世界的に有名なメーカーなので、経営に不安はないと思う。

ただ日本国内の比較的小さなジェネリックメーカーがどうなのかは非常に不透明とも言える。

採算の話を病院に戻そう。

病院という場所には大きく分けて2種類。

一つは「治療型」

もう一つは「療養型」だ。

通常は「治療型」の病院は「出来高」と言って、それぞれの治療に要した費用をひとつひとつ請求する。

そして「療養型」の病院は「包括」と呼ばれる請求、俗には「まるめ」と呼ばれる保険請求を行うことが多い。

この請求は患者の疾患や状態に応じて、一定の金額を保険が支払うこととなる。

つまり、どういう治療を行おうが、高い薬を使おうが、同じ金額しか請求ができない。

逆にいえば、治療内容をできるだけ簡素化することで、利益を確保することも可能だ。

しかし、ここでどうしてもジレンマが生じてしまう。

人の命の問題であり、請求できないからと治療をやめるわけにはいかない。
毎日服用する医薬品代のために、すでに赤字になっている可能性もある。

この結果、他の患者での獲得できた利益を利用しその患者を治療することにもなる。

患者の入院が長期であればあるほど、それぞれの患者の治療は困難にもなっていく。

かぜ一つ引いても、発熱が少しあっても「点滴」「注射液」としてコストは上がっていく。

そういう状況の中、いかに利益ではなく、「人件費」を生み出していくかが、事務長の腕となるわけだ。

特に必要なのはやはり看護師。

看護師がいなければ、何もできない。

決して病院は儲かったりしていない。

新しい設備投資を行うのだって、プールした金を使っているわけではない。

ある程度の助成金は出たとしても正直知れている。

また、「療養型」の病院はいずれ「病院」としてではなく、
「介護医療院」という、病院と療養施設の中間の性質を持った施設に移行していく。

「治療」とは少なくとも「寛解」を目的にしなければならないのであって、「看取り」を目的にする施設が「病院」であることは概念的にも受け入れがたい。

介護医療院になれば、さらにコメディカルと呼ばれる看護師や相談員の数は激減する。

もちろん、国が支払う保険金も少なくなる。

どうやって利益を確保するのかは各部門で考えていく必要があるが、

看護師の負担を軽減できるのは

実は私たち薬剤師なのだが、今回はこのあたりで話を終えたいと思う


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