あの時の黒沢の感情
(震える手で指輪の箱を開けた黒沢の心の声を妄想したものです。)
安達驚いてる。
そうだよな。重いよな。だいたいこんなの俺のエゴだ。
安達を一生、俺だけのものにしたいなんて。
安達は、自分は一生結婚なんかできないと思ってるけど、絶対そんなことない。
安達の優しさに気がついて、好きになる女性は必ずいる。
その人と結ばれて、結婚して、たくさんの周りの人に祝福され、子供ができて、幸せで暖かい家庭を築く人生がきっとあったはずだ。
それを俺が奪っていいはずない。
安達のこれから先に待っている幸せを、全部俺が奪うなんていいはずがない。
俺と一緒になっても
誰も祝福どころか、理解だってしてくれないかもしれない。
ずっと2人で隠れるように生きていかなきゃいけないかもしれない。
自分の子供を持つこともできない。
安達はきっと子供好きだ。家族連れを見て羨ましくなって辛い思いするんじゃないか。
好きな女の人が出来て、俺に隠して一人で苦しむ時が来るかもしれない。
俺は俺の愛し方でしか安達を愛せない。もちろん、安達の為ならなんだって出来るけど、俺は、女性ではない。女性にはなれないから。
いつか安達が限界になるんじゃないか。
安達は優しいから
ずっと俺の為に我慢させることになるんじゃないか。
でも。
それでも。
俺は安達とずっと一緒にいたいんだ。
死ぬまで一緒にいたいんだ。
どんな感情も全部二人で分け合って
生きていきたいんだ。
こんな俺を受け入れてくれた
優しい安達の
この先の人生まで全部奪い取りたいなんて
どこまで強欲なんだよ。
本当に自分が嫌になる。
安達が俺を見ている。
やっぱ、重いよな。
そんなの無理って、思っているのかな。
思ってること言って欲しい。
えっ?
いいの?
本当に?
左手を………
俺の左手の薬指にもはめてくれる。
封印するみたいに、くちづけもしてくれる。
嬉しい。
嬉しい。
嬉しい。
安達。安達。
安達大好きだ。愛してる。
ありがとう。
俺を選んでくれて。
生まれてから今までこんなに嬉しかったことない。
一生安達を大切にする。
安達を苦しめる全てのことから俺が守る。
俺があげられるものは全部あげる。
俺が出来る限りの力を尽くして幸せにする。
俺を選んだこと、後悔させたくないから。
俺の肩にもたれて指輪がはまった指を眺める安達は笑ってる。
ふわっとして可愛い、安達の笑顔。
ずっとその顔で、俺の側で笑っててね。
俺はその笑顔を全力で守っていくから。
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