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自然界の毒を嗅ぎ分けるチカラは
畑を一緒にやっているメンバーが、真っ黒で硬い鞘に包まれた豆を見せてくれました。
「これ知ってる?」
ムクナ豆というそうです。知らなかったし初めて見ました。
たくさん(八升も)採れるというので、八升豆ともいうらしい。
ネット検索してみたら「ムクナ豆専門店」という、どうみても健康食品メーカーという感じのサイトが出てきました。
「専門店まであるとは、これもしかして、ものすごく健康にいいやつでは?」
○○は体に良い、と聞くとココロが踊るタイプです。それが高じて、食品保健指導士という、食品の機能性についての指導をする資格までとったほどです。
…そのわりにムクナ豆、知らなかったんですけどね(笑)
ただものではない!
調べると、やはり栄養価がバツグンのようでした。
だいたい豆類は全般に、炭水化物、タンパク質、脂質、ミネラルなど豊富に含んだものが多いのですが、ムクナ豆で特筆すべきは「L-ドーパ」という成分を豊富に含んでいること。
L-ドーパは、ドーパミンを作る前駆体になる成分。L-ドーパを大量に含むので、なんと、パーキンソン病の治療に使われる伝統的な漢方薬なのだそうです。
(パーキンソン病はドーパミンの不足で発症する神経疾患で、手足が震えたり、筋肉がこわばって歩けなくなったりする病気)
しかも、L-ドーパ自体は抗酸化物質で、動脈硬化やガンの予防、アンチエイジングにも効果ありです。
さらに、必須アミノ酸スコアが高いのも特長らしい。
体内で作れないアミノ酸は9種類あって、全部がバランスよくたくさん入っていないとハイスコアになりません。アミノ酸スコアが高いほど、質の高いタンパク質ということになります。
つまり、ムクナ豆のタンパク質は良質ということ。
素晴らしいじゃないですか!やはりただものではなかったムクナ豆!!
興奮して1房いただいてきて、一晩水に浸けて、圧力鍋でふんわり美味しく炊けました。
ちょっと待った!
「わーい! アンチエイジングだよ!たくさん食べよ!」
となったところで、ふと思い出しました。
「ちょっと待った。どこかに1回3粒までと書いてあったような…」
やはり、そうでした。
L-ドーパの摂取許容値は、1.5g/日とあります。豆に換算すると30粒ですが、これは許容量。一般的には”1回3粒、一日3回”が目安と言われているようです。
食べすぎるとどうなるか?
低血圧、不眠、幻覚等の不具合が現れると言われているのだそうです。それは怖いですね。そのほかにも吐き気や下痢、めまい、筋肉のけいれんなどの症状がでると書かれていることも。
いや、それは怖いですね。
今だから、ネット検索ですぐわかりますが、このようなマイナーな食物、ひと昔前だったら、わざわざ図書館で調べたりしなくては知ることができず、そんなことしないでしょうから、知らずにパクパク食べてしまっていたかも。
アンテナが退化している?
自然界の植物も動物も人間に食べられるために存在しているわけではないこと、つい忘れがちです。それらはみんな、自らの繁栄のために、敵から身を守る武器を備えている。それは植物の場合は毒だったりするわけです。
普段、スーパーで買ってくる野菜を食べていると、そのことをつい忘れがちですが、その野菜たちだって人間のいいように改造される前は、もっと野生的で色々な毒を駆使して生きのびてきたはず。
人間は全ての動物の中で一番何でも食べる捕食者なわけですが、スーパーでの買い物に慣れてしまって、危険を察知するアンテナは退化しているでしょうね、きっと。
キノコも栽培したいね、なんて話していますが、キノコは特に危険かも。毒を見分けたり、嗅ぎ分けたりできないのなら、野生に近いものを食べる時は、せめてよく調べて食べなくちゃね。
そんなことを考えながらほくほく、美味しくなったムクナ豆いただきました。
3粒だけ。