お母さんがいなくても淋しくならない薬
もともと、自分からやりたいと言った訳ではなかった。私が小さい頃に叶えられなかったためにさせたこと。
3歳から習うことができるということで、3歳になった瞬間 娘をバレエ教室に通わせた。
幼稚園や保育園に通っていた訳でもなく、バレエのレッスンが 彼女にとって 初めて親と離れて過ごす時間だった。
それまでも、育児サークルなどには参加していたものの、すぐにお友達と仲良く遊べるタイプではなく、ちょっとオモチャで遊んでは、私のところへ戻ってくる…これを繰り返すような子だった。
そんな子だったので、バレエを習い始めの頃は、「お母さんがいないと淋しい」と言って、なかなかレッスンに行きたがらなかった。
困った私は、こんなことを試してみた。
ある日、レッスンが始まる前に また娘が「お母さんがいないと淋しい」と言うので、
「ねぇ、いいものがあるの!このお薬ね、お母さんが居なくても淋しくならないお薬なの。飲んでみて!」
と言って、レッスンに送り出した。
どんな顔してレッスンから戻ってくるのかなぁと思って娘に聞いてみると
「お母さんがいなくても淋しくなかった!」
と笑顔で私に飛び付いてきた。
大成功!
そのお薬は、ただのラムネ菓子だった。
その後、そのお薬には度々活躍してもらった。
私の夢を託すような形で始めさせてしまったバレエではあったが、幸いにして バレエのみならず踊りが好きな子になってくれたのでよかった。
新聞記事の『プラシーボ(偽薬)効果』を読んで、ふと20年以上も前のことを思い出した。
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