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頭痛薬を飲まない勇気 知命の独り言 #21
夏の暑さが終わったと思ったら、一気に寒くなってきたこの頃。
季節の変わり目に、片頭痛に悩まされる人は本当に多いと思います。
片頭痛とは
片頭痛は、頭の片側または両側のこめかみ付近がズキンズキンと脈打つような痛みが繰り返し起こり、吐き気を伴うこともあります。月に1~2回や、週に1~2回の頻度で起こり、いったん痛み出すと寝込んでしまう、仕事が手につかないなど、多くの方が日常生活に支障をきたします。
光や音、においなどさまざまな刺激によって、顔面や頭部の感覚をつかさどる三叉神経の末端から血管に作用するカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)やサブスタンスPなどの神経伝達物質が分泌されます。
それらの働きで、脳の表面(硬膜)の神経と血管の周囲に炎症がおこり、血管が拡張して痛みが起こると考えられています。
片頭痛のメカニズムはまだ確定しておらず、神経説や血管説、三叉神経血管説などの検討、研究が今もされています。
片頭痛の予兆
片頭痛発作は、予兆期・前兆期・頭痛期・回復期と時間とともに経過します。前兆のない片頭痛でも、「なんとなく頭痛がきそうだ」という漠然とした予感を感じることがあります。
○ だるい、倦怠感
○ 気分がよくない
○ イライラする
○ 集中できない
○ 食欲が通常以上に出る
○ 体がむくむ
○ 首や肩がこる
○ 眠気を感じる、あくび
等、まだ頭痛は起きていないけれど上記のような症状が出ている場合、それは予兆の可能性があります。
片頭痛の前兆
片頭痛は、痛みの起こる直前に「前兆」を伴うかどうかで「前兆のある片頭痛」と「前兆のない片頭痛」に分類されます。
前兆の代表的なものは「閃輝暗点(せんきあんてん)」とよばれる視覚の変化があります。
○ 目の前で光がチカチカ・キラキラする
○ 視野の一部に歯車のようなギザギザしたものがあらわれる
○ 視野の一部が欠ける
○ 視界がぼやける
このような視界の異常が起こった後、頭痛が出現する場合前兆のある片頭痛と呼ばれます。
片頭痛の治療
(急性期治療)
トリプタン製剤による治療
トリプタン製剤とは
○ 薬の効果と作用機序
脳内における血管収縮作用や抗炎症作用などにより、片頭痛時の痛みなどを和らげる。片頭痛は一度収縮した脳の血管が逆に過剰に広がっておこるとされる。
脳内で血管収縮に関わる神経伝達物質の一つにセロトニンがある。本剤はセロトニンなどの作用に関わり、血管収縮作用や抗炎症作用などをあらわすとされる。
片頭痛発作時の吐き気や、光や音に対する過敏などを改善する作用もあるとされる。
【現在発売されているトリプタン製剤】
○ イミグラン (スマトリプタン製剤)
○ ゾーミック (ゾルミトリプタン製剤)
○ レルパックス(エレトリプタン製剤)
○ マクサルト (リザトリプタン製剤)
○ アマージ (ナラトリプタン製剤)
※ 薬の効果も様々です。
立ち上がりの良いもの、作用時間の長いもの等、いくつか試してみて自分に合うトリプタンを見つけましょう。
※イミグランには、点鼻薬、皮下注射もあります。
レイボーによる治療
レイボーは、片頭痛発作を 引きおこしている脳の神経に 直接はたらき、片頭痛発作の症状をやわらげると考えられています。
トリプタン製剤とは異なり、頭痛が重症化した状態の時に飲んで効果がある薬だと言われています。
ただ、脳の中枢に作用することから、
○ めまい
○ 眠気
○ 倦怠感
○ 手足の脱力感
等の症状が出る可能性があります。
初めて試す時は、車の運転前や、仕事前等は避けましょう。
また、空腹時の時にこれらの症状が出やすいと言われているので、何か軽く食べてから服用するといいと思います。
※詳細は病院医師、薬剤師にお尋ねください。
片頭痛の治療
(予防的治療)
内服予防薬による治療
片頭痛は月2回以上発作がある場合は、予防治療をお勧めします。
予防治療により発作の頻度、発作の際の痛みの強さを改善する事ができます。
予防薬の種類
○ ミグシス(塩酸ロメリジン)
○ インデラル(β遮断薬:プロプラノール)
○ デパケン (バルプロ酸)
○ トリプタノール(アミトリプタン)
いずれも、頭痛の発作回数・程度を減らすために数ヶ月服用を続けて効果判定をみます。
※薬によっては、妊娠を希望する方には適さないお薬もありますので、医師に相談して服用を開始してください。
抗CGRP抗体薬による治療
片頭痛が起こる際には、様々な痛み物質が放出されます。
その中で、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は、主要な原因物質の一つです。
CGRPは、顔面や頭部の知覚神経である三叉神経に存在しますが、片頭痛発作時には過剰に発現します。
過剰なCGRPは、血管を拡張させ、痛み物質を産生し、片頭痛を引き起こします。また、痛みを感じ易くする作用もあります。
抗CGRP抗体薬は、このCGRPをブロックすることで片頭痛を予防します。
私が勤めているクリニックでも、このCGRPを用いた治療が行われています。
この注射は、自己注射という形で、自宅で自分で注射をすることができる為、その指導も行っています。
【メリット】
○ 病院に受診する時間の制約がない。
○ 簡易な手順で自己注射ができる。
○ 鎮痛剤の服用回数が減る。
【デメリット】
○ 1本の単価が1万円を超える為、治療の開始、継続が消極的になりがち。
○ 医療廃棄物となるので、家庭ゴミには出せない。
○ 自己注射に対する不安や恐怖がある。
薬物乱用頭痛とは?
それでは、本日のタイトルにつながる話をしていきます。
私も片頭痛持ちで、鎮痛薬は手放せない人間の1人です。
だからこそ、日々気をつけていることがあります。
それは「鎮痛薬を飲みすぎないこと」です。
頭痛が慢性化して、頭痛薬の服用回数が、月に15回を越える状態が半年以上続くような時は、薬物乱用頭痛の疑いがあります。
本来頭痛を抑えるはずの薬が、頭痛の原因になってしまっているのです。
簡単にいうと「頭痛薬の多用摂取によって、本来であれば脳が痛みとして認識しないレベルの痛みであるはずが、脳が異常に敏感になっており、多少の鎮痛効果では興奮が治らない状態」なのです。
こうなってくると、幾ら鎮痛薬を飲もうとも、気休めにもならない状態です。
さらに怖いのは、「脳の病気」が隠れている可能性もあるのです。
特にたかが頭痛だと、専門医の相談をせず、市販の治療薬に頼り切っているそこのアナタ!
速やかに頭痛外来を受診することをお勧めします。
「それじゃあ、ずっと頭痛を我慢しろってこと?そんなの無理にきまってるじゃん!」
そう叫んでいるアナタ。
分かります、その気持ち。
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