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不妊治療をしている人の妊娠判定日とは

 不妊治療も4年目に突入しようかという頃に7回目の体外受精をした。その判定日がちょうど12月25日のクリスマスだった。結果は陽性。前日に自分で検査をしていたから結果はほぼ分かっていたから大きな驚きもない。担当のお医者さんも淡々としたもので、内診をした後はカレンダーを指差しながら、まだ胎嚢が見えないこと、一週間後に胎嚢の確認、その次の週に卵黄嚢の確認、それから心拍の確認が出来ればいいと話していた。

 妊娠が分かったのに診察室の医師も看護師も私も誰も笑わない。おめでとうもない。ただ皆一様に気持ちを表に現さないように努めて淡々と話が進んでいく。なぜなら、その場に居る誰もが妊娠が必ずしも継続されるものではないこと、そして、妊娠することはすなわち流産の始まりであるかもしれないことを知っているからだ。

 私はこの時点で40歳、すでに4回の流産を経験していた。いずれも胎児の染色体異常で6週から8週にかけて流れていた。だから、私は医師の話を聞きながら、3、4週間後に突きつけられるかもしれない現実に向き合うための覚悟をし始めた。

 家で待っていた旦那にも妊娠の報告をしたが、笑顔がないのは彼も同じ。サクッと事務的に次週以降の通院スケジュールを確認して、お互いに「まずは一つ目のハードルは超えたね」と言って日常に戻った。妻の妊娠が分かって明るい未来と幸せにひたるなんていう無邪気さは全くなかった。彼もまた直面するかもしれない現実に向き合うための覚悟をし始めたのだと思う。

 いつソレがやってくるのかとは二人とも口には出さないけれども、常に頭の片隅にデーンと陣取っている。でも、そんなことはおくびにも出さずに何事もなかったかの様に粛々と日常をおくる。そんな生活の始まり。

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