見出し画像

ゴブリンがせめてきた!【村編】

やぁ同好のみんな!
オールドスクールファンタジーを楽しんでいるだろうか。
今回はタイトルの通り、『ゴブリンがせめてきた!』という状況から、ファンタジー世界へ思いをはせていこうと思う。


はじめに

今回のタイトルを【村編】としたのは、攻められた側が城に避難できる状況にあるかどうかで、守り手である人側の事情も、攻め手であるゴブリン側の事情も大きく異なると考えたからだ。

古来より城壁は有事の際の避難場所として設計されており(その他の意味合いも多くあるが)、蛮族から市民の生命を含めた資産を守る役目をはたしてきた。

一方で城を持たない遊牧民のキャンプや、遠隔地、例えば町から遠く離れたところに設置されていた炭焼き場や染め物場などに住む人々は、避難所無しに彼らの資産を守る必要がある。

今回は後者の人々を【村人】と呼び、村人とゴブリンの襲撃という災禍のかかわりについてじっくり思いを巡らしていこう。

映画『コナンザバーバリアン』冒頭に出てくる村のイメージは正に今回の想定に近い。彼らは突然の蛮族襲来に対し、簡易な柵と小さな堀、小規模な槍衾を用いて対抗している。広大なファンタジー世界の中では、このように防御に不満足であったとしても、そこで生活せねばならない事情があるのだ。

『ゴブリンはなぜ村を襲うのか』

ゴブリンがせめて来た!という状況を考えるにあたり、ゴブリンがどのようにして攻めてくるのか、なぜ彼らが攻撃するに至ったのか考えることは非常に面白い。(一方で実際に襲われる人々にとってはその理由などどうでも良い。結果『ゴブリン=悪辣な生物』という村人のイメージだけが後世にかたりつがれるだろう。)

 ゴブリンを所謂“人よりやや非力”で、“背が低く”、“獰猛な”、“集団を形成する”生物として考えてみよう。

彼らは一般的な欲求として、食欲があり、それを満たすため村につながれているヤギや羊、馬を所望するかもしれない。もし彼らの食欲の先に人間が存在するならば、食料として人を襲うかもしれない。

食欲を満たすべく、狩りをする必要が発生し、人間やドワーフの作る精密な狩猟具を頂戴するため間接的に人を襲う事もあるだろう。

或いは、食欲とは関係ない全く別の理由から人間を襲うことがあるだろう。(そもそもゴブリンの生活にとって食事が必要なのかすら、われわれ人間が計り知るところではない。) 

例えば天性の欲求から人を見つけたらとびかかるという執念に駆られているのかもしれない。

例えば自分たちの部族が他のゴブリン部族との勢力争いに負けないようにするために、金品や武器、村を襲ったという功績が必要なのかもしれない。

例えばゴブリンの住む山は既にゴブリンでいっぱいなため、喧嘩で負けた数十名が集まって、仕方なく生存域を広げようとしたところ、たまたま人間の生活圏とぶつかったのかもしれない。

他にもまだまだゴブリンと人間が衝突する可能性は考えられる。多くの場合ゴブリンと人間の信条、資源、第三者の存在などが衝突の理由を考えるのに有効だろう。

発見

では理由の考察から時間を進めていこう。

ゴブリンがせめてきた!と村人の一人が甲高い叫びをあげるまで(もしくは族長にそっと耳打ちをするまで)、いろいろな出来事を想像することができるだろう。

まずは人側がその存在に先に気づく例だ。

ゴブリンが存在する世界で、特にゴブリンの襲撃が良くある災害の一つとして考えられている世界では、物見台や監視所、古典的な鳴子の様なトラップといった配備がされているだろう。

もしくは警備の野伏達が巡回しゴブリンのいた証拠(ゴブリン側の斥候や野伏が残した痕跡など)を発見することもある。この場合は人間側が先手を打ってゴブリンの前線基地を襲撃するということができるだろう。

他にもゴブリン側があえて襲撃を知らせてくるというケースがあるかもしれない。

ゴブリンが多少利口であるならば、そして村人の命が彼らの目標でないのであれば、ゴブリンは積極的に村人を脅し、目的を達成しようとするだろう。

これはゴブリン側に極力戦いを避けたい、損耗を避けたいといった動機が働くという前提での考察だ。むしろ功績を上げたい、戦いたい、戦っても圧勝できる自信があるゴブリンには効かない道理だ。

ゴブリンが既に目の前に迫ってきているなら大変だ。どうやら村はすっかりと彼らの攻撃にさらされているらしい。

急いで叫ぼう。

初戦

戦いが始まれば、ゴブリンは目的を達成しようとし、人側は自分たち自身や資産を守る為に行動する。もしゴブリン側の要求がヤギ一頭分の肉であるならば、数人対数体の小競り合いの後、互いの妥協点を探すことができるかもしれない。

小競り合いで何よりも大事なのは、相手の出鼻をくじくことだ。こちらを負かすには相応に痛手を被るぞという事を、ゴブリンにもわかるように思い知らせてやろう。

もし村をまもる自信がないのであれば、有り合わせの防具を一人に着せてそのものに名乗り上げをさせてみよう。ゴブリンどもは運悪く凄腕の戦士が村にいたと勘違いしてすぐに逃げていくかもしれない。

乱戦

生命を含めた資産の多くを守ろうとするならば乱戦は避けるべきだ。逃げ道のない戦いでこそゴブリンは最大の力と獰猛さを発揮するだろう。守るべきものを背に密集して陣形を整えるのが望ましい。

乱戦になってしまったら、第一に行うべきは指揮系統の回復だ。

それには大きな音や光が有効だろう。ラッパや笛、あるいは魔法で作った打ち上げ花火などが兵士たちを混乱と恐怖から救ってくれるかもしれない。

撤退

ゴブリンが撤退したら、人々は何をするべきだろうか。真っ先にするべきことは胸をなでおろすことではなく、次に奴らが何をしてくるか考えることであろう。

ゴブリンがあきらめを知らない狡猾な存在と知られているのであれば、キャンプを移動することも考慮に入れるべきだ。村ごと移動するのであれば荷馬車の手配を始めるか、候補地を探すために領主を訪ねてみるか。何はともあれ多くの準備が必要である。

それならばいっそゴブリンどもをくじけさせる方がよっぽど早いかもしれない。冒険者を集め、こちらからゴブリンを追い立ててやるのだ。皆の懐から金貨を集め、方々に布告を行う。

村に勇敢な若者が残っているならば(そして彼らが先の戦いで心折れていないのであれば)彼らをたきつけてみるのも村の為だろう。

彼らは不敵に次なる戦いを計略している……。

どちら側の勝利であったにせよ、籠城戦のないこの戦いは数時間から半日程度で決着がつくだろう。一方で両者が奪われる可能性があるものは甚大だ。

そんな緊張感があるからこそ、ファンタジー世界での一息はこんなにも生命を感じるのかもしれない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?