行列の対角要素とベクトル、単位行列
さて、前回記事でベクトルと行列がなぜ機械学習をはじめあらゆる分野における状態表現の中心になるのかを記述しました。ここで、状態間の操作や遷移を意味する正方行列について、操作するベクトル内のj番目の要素をそのままj番目の要素に重み付きで遷移させるような操作を考えます。写像側のベクトルのj番目の要素は、正方行列側のj番目の行ベクトルと操作するベクトルの内積になるわけですが、操作するベクトルのj番目以外の要素の影響を排除するわけなので、行ベクトル側のj番目要素以外の数は0になります。また、仮にj番目要素が0である場合は、元の操作ベクトルのj番目要素の影響も写像側に何ら影響を与えないということになります。つまり、
aj = (0, 0, ... Cj, 0, ... 0) ※0以外の定数Cjはj番目要素、ただし j = 1 ~ n
なる行ベクトルの束からなる行列をかけることで、そのような操作が行えることになります。つまり、以下のような感じでCjが対角上に並び、それ以外が0になるような正方行列が出来るワケです。
特に、写像を元のベクトルと全く同じにしたい場合、上記行列はすべてのjに対してCj = 1となります。つまり、以下のような感じ。
現実の問題でも、ベクトルの要素の順序によって状態が定義されているならば、ベクトルの操作の際にj番目要素はj番目要素だけに影響しておいてほしいケースが多いハズです。また、系に対して何の影響も与えないような操作はおそらく問題を数学の枠組みで考える上で最も基本的なものになります。特に、対角要素がすべて1で他が0である正方行列は、「単位行列」と呼ばれ特別な意味を持ちます。
ちなみに、ベクトルに何が入っても写像の要素がすべて0になるような行列も考えることが可能です。このような行列は、構成要素がすべて0となっているはずです。これは「零行列」と呼ばれます。