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司法修習生の生態に迫る~「修習生学」の萌芽~

こんにちは。ゆっくり法律です。私は普段、司法修習に参加する傍ら、「司法修習生の生態を観察する」という裏目標を掲げて、司法修習生の行動や考え方を理解しようと努めてきました。なぜそんな変なことをするかというと、司法修習生の生態の理解はひいては法曹全体の価値観を理解することにつながると思ったからです。法曹の考え方が分からなければ、彼らと対峙することはできませんし、同じ業界で一緒にやっていくことも困難でしょう。

それに、私は文学部出身だったため、司法修習に参加するまで法学部生とまともに交流したことがありませんでした。それゆえ、法学部生の思考にどのような共通点があるのか、というのは非法学部出身の私にとって、純粋に学問的な興味がありました。

約1年間の地道なフィールドワークとインタビューを通して、修習生という人種の生態がようやく少し見えてきました。これから、1年の調査・研究の成果を発表したいと思います。

ここで注意してほしいのは、これから発表する研究成果はあくまでも全体的な傾向であり、修習生の個人個人は幅広いパーソナリティを持つ、ということです。しかし、修習生には色々なタイプがいるからといって、全体の傾向を理解する努力を怠っては、修習生を理解するという目標を達成することはできません。このような問題意識のもと、研究が行われたということは念頭に置いてください。

バックグラウンド

まず、修習生の行動と考え方を分析する前に、前提として修習生のバックグラウンドを理解する必要があります。

1年齢
予備試験組を除くと、ストレートに法科大学院に進学して司法試験に1発で合格すると、25歳か26歳になります。実際、修習生のボリューム層は25~26歳です。もちろん、社会人組でそれよりだいぶ上の人もいますし、学部在学中に予備試験に合格した人で23~24歳の人もちらほら見かけます。

2学歴・勉強歴
東大京大早慶が全体の半分を超えます。もっと気になる人は、法務省の司法試験合格者の資料を参照してください。勉強歴は人によってばらつきがありますが、学部3~4年からロー入試に向けて勉強を開始して、ロー在学中は司法試験に向けて勉強している人が多いです。もちろん、学部のころから予備試験にチャレンジしていた人はもっと勉強しています。少なくとも、3~4年は勉強漬けだった人が多いです。

3出身家庭
富裕層出身者が多いです。これは考えてみれば当たり前の話で、司法試験を目指したいとなれば、早くとも25歳まで子供を養わなくてはいけません(世間では大学を卒業する22歳まで)。司法試験に1回で受からない人は、もっと遅くなります。司法試験の合格率は3割~4割で推移しているので、1~2回落ちても問題ない、というメンタルの家庭でないと、司法試験を受けさせるのはなかなか難しいのが現状です。それに、ロースクール自体の学費も馬鹿になりません。以上を踏まえると、司法試験に合格した司法修習生の出身家庭は金銭的余裕がある家庭が多い、ということになります。実際、私の周りでもお金持ちの人が多いです。中には弁護士や国会議員の子息、という人までいます。

修習生の分析

以上のバックグラウンドを踏まえて、修習生の行動・考え方の分析をしていきます。テーマごとに、多角的に見ていきましょう。

1法曹を目指した理由
司法修習に参加する前の私の法曹(とくに弁護士)のイメージは「弱者を守る」とか「人権を擁護する」とかいうものでした。ですので、そのような動機から弁護士を目指した人が多いのかと予想していましたが、それは間違いでした。もちろん中にはそのような立派な動機の方もいますが、ボリューム層は「文系で一番難しい法学部になんとなく入って、民間就活がめんどくさいからローに進学し、なんとなく司法試験に受かった」というタイプです。自発的に目指した、というよりは、成り行きとか周りに流されて目指した、という人が多いです。ここに、修習生の特徴を探るヒントが眠っているのではないかと考えています。

2政治的傾向
驚くことに、修習生のほとんどはノンポリです。世間的には、法曹は左翼が多いとされていますが、1でも述べたように、修習生の多くはなんとなく司法試験を目指した人が多いのです。人権擁護や弱者救済の精神から司法試験を目指した人は左翼になりやすいですが、人数的には少数に留まっています。そして、右翼はさらに少ないです。ノンポリ7割、左翼2割、右翼1割未満、てところでしょうか。富裕層出身者が多いので、ノンポリと言っても右寄りの人が多いような印象です。そもそも、修習生は法律以外の勉強をしてこなかった人が多く、政治に興味を持つきっかけがなかった、というのが実情です。諸外国では法曹出身の政治家(オバマやクリントン)が多いですが、日本に少ないのはこのような事情が関係しているのかもしれません。

3気質
法学部やロースクールで画一的な教育を受けた影響か、「出る杭を叩く」傾向が強いです。これはTwitterでもよく見られる現象です。そもそも、法律家は、画一的な考え方ができないと務まらない職業です。裁判官が判例や基準を無視して個性を発揮して判決を下したらどうなるでしょうか。混乱を招きますよね。検察官や弁護士も同様に、裁判所に従う必要があるので、画一的であらざるを得ません。要件事実なんかはその最たる例ですよね。法曹と個性は水と油の関係にあるといえます。

4キャリア観
志望が裁判官・検察官・弁護士のいずれかによって話が変わってきますが、ここでは多数派の弁護士に絞って考えましょう。バックグラウンドでも見た通り、司法修習生は3~4年勉強漬けの生活を送ってきたため、司法修習でようやく解放された、という実感を持ちます。そこから先も上り詰めていこう、という大それた志を持つ人は案外少ないです。多くの人は、無難に事務所に入って一人前の弁護士になろう、という考え方をしています。もちろん中には4大でパートナーに絶対なってやる、というような熱い心を持つ人もいますが、多くの人は司法試験に受かった段階で燃え尽きており、そこから先の競争で結果を出そう、という人は少数派です。

5陰キャ・陽キャ
世間で言われているように、陰キャが多数派です。様々な理由が考えられますが、1陽キャはそもそも長期間の勉強に耐えられない、2コミュ力ある陽キャは民間就職してしまう、3富裕層出身で育ちのいい子が多い、などがしっくりくる説明でしょう。陰キャが多いため、全体的に陽キャへのヘイトがたまっています。たまに私が陽キャをディスるツイートをするとバズったりするのは法クラ全体のこのような傾向が影響していると思います。陰キャが多いとはいっても、陰キャの中で疑似陽キャが発生したりします。これは社会学的によく見られる現象であって、修習生特有というわけではありません。

6恋愛観
男女によって著しく変わってきます。まず、司法修習に参加した時点で結婚してる人はかなり少なく、大半は独身です。そして、男性の場合、勉強からやっと解法されたのも相まって、遊ぼうと躍起になります。もちろん結婚を考えている人は少数派で、たいていはマッチングアプリや合コンで各修習地で現地妻作りに励みます。女性の場合は、二極化しています。修習開始時点で彼氏がいる女性が多数派ですが、キャリア重視型の女性はあまり結婚を考えておらず、弁護士として1人前になることを優先しようとします。それに対し、アラサーという年齢的焦りから、恋人探しに積極的な女性もいます。しかし、概して「仕事重視、結婚は後回し」という空気間が強く、女医・女性研究者など、いわゆる知的職業に就く女性全般と同様の傾向が見られます。

以上で分析を終えます。今後も新たな研究成果が出たら発表していきたいと思います。修習生学が盛り上がることを祈って、ここで筆を置くことにします。





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