多項式の結合律
$${f(x)=a_{0}+a_{1}x+a_{2}x^{2}+\cdots+a_{m}x^{m}, \ g(x)=b_{0}+b_{1}x+b_{2}x^{2}+\cdots+b_{n}x^{n}}$$を実数係数の多項式とするとき,
$$
(fg)(x)=a_{0}b_{0}+(a_{0}b_{1}+a_{1}b_{0})x+(a_{0}b_{2}+a_{1}b_{1}+a_{2}b_{0})x^{2}+\cdots+
$$
と定めると,多項式の積が定まる.このとき,この積の結合律が成り立つかを調べたい.すなわち,$${((fg)h)(x)=(f(gh))(x)}$$となるのかを調べたい.(実数係数だと当たり前に感じるが…)
数列と対応させる
定義した積を見ると,各係数の添字の総和が一定となっていることに気が付く.そこで,多項式と数列とを対応させて考えることにしよう.
$$
f(x)=a_{0}+a_{1}x+a_{2}x^{2}+\cdots+a_{m}x^{m} \longleftrightarrow \bm{a}:=(a_{0}, a_{1}, a_{2}, \ldots, a_{m}, 0, 0, \ldots, )=(a_{k})_{k=0}^{\infty}
$$
という対応を考えよう.$${(m+1)}$$-次以上の係数は$${0}$$として対応させ
ることに注意する.
数列の積
このとき,「畳み込み」と言われるような積を定義する:
$$
\bm{a}\cdot \bm{b}:=\left({\displaystyle \sum_{l=0}^{k}a_{l}b_{k-l}}\right)_{k=0}^{\infty}=(a_{0}b_{0}, a_{0}b_{1}+a_{1}b_{0}, a_{0}b_{2}+a_{1}b_{1}+a_{2}b_{0}, \ldots).
$$
すると,$${\bm{a}\cdot \bm{b}}$$と$${(fg)(x)}$$とが対応することが分かる.故に,$${f(x), g(x), h(x)}$$が$${\bm{a}, \bm{b}, \bm{c}}$$と対応しているとき,$${((fg)h)(x)=(f(gh))(x)}$$を示すには,$${(\bm{a}\cdot \bm{b})\cdot \bm{c}=\bm{a}\cdot (\bm{b}\cdot \bm{c})}$$を示せばよいということになる.
計算の方法
ここまで把握して,でも結局総和の計算の部分が面倒くさいのではと考えてしまうが,少し見方を変えてみよう.
$${(\bm{a}\cdot \bm{b})\cdot \bm{c}=\bm{a}\cdot (\bm{b}\cdot \bm{c})}$$の両辺の各列は,$${a_{0}, a_{1}, a_{2}, \ldots, a_{m}}$$が1次の変数として含まれているから,その係数が両辺で一致することを示せばよい.
$${m}$$列目を比較しようと考えるとき,便宜的に各$${k\in \{0, 1, 2, \ldots, m\}}$$に対し,$${a_{0}=a_{1}=\cdots=a_{k-1}=a_{k+1}=\cdots=0, a_{k}=1}$$を代入すればよい.
右辺の方が考えやすい.数列の積の定義から,右辺に値を代入すると,$${\bm{b}\cdot \bm{c}}$$の$${(m-k)}$$-列目の値に一致することが分かる.つまり,右辺の$${m}$$列目の$${a_{k}}$$の係数は$${\bm{b}\cdot \bm{c}}$$の$${(m-k)}$$-列目の値になるということになる.
左辺を考えよう.$${\bm{a}\cdot \bm{b}}$$において,値を代入すると列は,$${(0, 0, \ldots, b_{0}, b_{1}, b_{2}, \ldots)}$$($${b_{0}}$$は$${k}$$列目にある)となる.計算のために,$${(b_{-k}, b_{-k+1}, \ldots, b_{0}, b_{1}, b_{2}, \ldots):=(0, 0, \ldots, b_{0}, b_{1}, b_{2}, \ldots)}$$と置いておくと,,$${(\bm{a}\cdot \bm{b})\cdot \bm{c}}$$の$${m}$$列目は,
$$
\displaystyle \sum_{t=0}^{m}b_{-k+t}c_{m-t}=\sum_{t=k}^{m}b_{-k+t}c_{m-t}=\sum_{s=0}^{m-k}b_{s}c_{m-k-s}
$$
と計算することができる.上の式は,$${\bm{b}\cdot \bm{c}}$$の$${(m-k)}$$-列目の値に一致し,右辺の値と一致することが分かる.
こういう計算は慣れなのだろうが,さあ示せと言われると,焦ってしまう自分がいる.