見出し画像

⑭ 最終話「ひかりが私にくれたもの」 - 胞状奇胎という流産の先に見つけた幸せ-

エピローグ:
会えなかったあなたへ——「ひかり」への手紙

「ひかり」へ

あなたが空に帰ってから、一年以上が経ちました。

2024年4月。
予定よりも10日早く、妹が生まれました。

お兄ちゃんたちは2800g台だったけれど、
妹は3100gを超えて、我が家で一番大きく生まれてきたよ。

初めての無痛分娩。

かゆみや吐き気、

麻酔の独特な感覚はあったけど、

痛みという意味では驚くほど楽だった。

「私が耐えればいい」じゃなくて、
「楽なお産を選んでいいんだ」と思えたのは、

あなたが私に「もっと自分に優しくしていい」と教えてくれたからだと思う。


妊娠中。

悪阻で吐き気やだるさに苦しんだけれど、

眠気は、あなたのときの方が強かった。

一日中、頭がぼんやりしていて、
座ったままでも気づけば意識が途切れるほど。

それでも、
私はその眠気を、あなたがそばにいてくれる証のように感じていた。

あなたが、私の中で静かに息づいている証拠のように思えたから。

だかは、その眠気が消えたことを実感したとき、
私はすごく落ち込んだよ。
あなたがいなくなってしまったことを認めざるを得なかったから。

今回の妊娠でも、
また同じように強い眠気があった。

でも、今度は違った。
しばらくして、気づけば少しずつ楽になり、
次第に体が軽くなっていった。

つわりが終わるというのは、こうやって少しずつ抜けていくんだったね。

今回、無事にその時期を乗り越えることができて、
お兄ちゃんたちの時はほっとしただけだったけど、
今回は、気づいた時に、、、
泣いてしまったよ。

あなたがいなくなったときの喪失感を思い出して。

お腹の中で育つ命は、奇跡なんだと、
深く、深く、感じて。



——あなたが空に帰ってしまった日。

病院の手術台の上で、
私は生まれて初めて「幸せになりたい」と強く思った。

ずっと勉強を頑張って、

仕事を頑張って、

結婚して、

お兄ちゃんたちが生まれて。

一見、すべてが順調に見えた。

でも、
私はいつも不安で、
何かに追い立てられていた。

あなたがいなくなって、
私はぽっかりと空いた時間の中で、
初めて、自分を見つめ直した。


「全部あるはずなのに、
私はどうしてこんなに苦しいんだろう?」

「幸せって、何?」

初めてその問いと向き合った。

「ひかり」

——あなたの妊娠は、
不安の海に沈みかけていた私の唯一の希望だった。
唯一の光だった。

妊娠が分かったとき、
私はあなたに会えると信じて疑わなかった。

だから、
流産がわかったとき、、、

悲しくて、

悔しくて、

何も考えられなかった。

でもね、「ひかり」。

あなたを失って、

時間ができて、

私はやっと気づけたんだ。

パパの優しさ。

お兄ちゃんたちの笑顔。

何気なく過ごしていた日常の中に、
どれほどの愛があふれていたのか。

あなたが教えてくれた。

私が、
いかに「足りないもの」ばかりを探して、
「すでにある幸せ」を見ていなかったのか。

あなたのおかげで、
私は本当の意味で「大切なもの」を見つけることができた。


ありがとう。


あなたに会いたかった。

抱きしめたかった。

でも、
あなたが私にくれた気づきは、
これからの私の人生にずっと寄り添ってくれる。


手術の日、10月29日は、
私が「幸せになる覚悟」を持った日。


あなたが私にくれたものを、

私は絶対に忘れない。


あなたの存在を、
ただ私の記憶の中だけで終わらせたくなかった。

だから、書いたよ。
書こうと思うと、辛くて、思い切れなくて。
何回も手が止まった。

でも、私は書きたかった。
あなたがいたことを。

あなたが、私に光をくれたことを。


「ひかり」、本当にありがとう。

私たちのことを、
これからも見ていてくれたらうれしいです。

ママより

「ひかりが私にくれたもの」 - 胞状奇胎という流産の先に見つけた幸せ-
〜終わり〜

いいなと思ったら応援しよう!