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【読書メモ】島本理生さん『ファーストラヴ』文藝春秋
初めて読んだときは、辛くて苦しくて、それでも知りたくて、迷いながら悩みながら読み切った。
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迦葉が好きだ。
彼の、人と距離を置き、淡々としている一方、大好きな人を語るときの無邪気な姿。
由紀が迦葉とあの日を振り返るシーンがたまらなく愛おしい。
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ほんの少しの行き違いで、傷を負ってしまうほど、人は弱い。でも、ほんの小さな一言で、見える世界を変えてしまえるほど、人は強い。
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読むたびに難しいなと思う。デッサン会で環菜が感じた恐怖を、それがどれほどのものなのか、私は感じられないのだ。
思い返せば、島本理生さんの小説を読むたびに、「お前が知らないだけで、存在することなんだ」と暴力的な勢いで突きつけられている気がする。自分の無知を知らしめられて、敗北感を感じて、だから、読むのが億劫になるのだろうか。
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