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古きを温め新しきを知る

劇場版機動戦士ガンダム〜ククルスドアンの島〜
拝見してまいりました。
全体的な感想として「温故知新」という言葉が
まさに当てはまるそんな作品でした。
ニュータイプ神話なき
宇宙世紀ガンダムが描いた物とは…
私とガンダムの関係性なんかも踏まえて
簡単に総括していきます。

1.ガンダムと私

そもそも機動戦士ガンダムと私の接点から
話をする。

1-1 大河ドラマ機動戦士ガンダム

1979年にテレビアニメで放送開始。
当時のロボットアニメにはない人間ドラマを如実に描いたシナリオが不評で打ち切り。
しかし、放送後に作品のプラモデル
いわゆる「ガンプラ」が人気に。
玩具の売れ行きから劇場三部作が公開される。
この三部作でアニメ版では
描けなかったエンディングまで描き、
機動戦士ガンダムは幕を閉じたように思えた。
しかし、ここからが長い長いガンダムサーガの
始まりだったのだ…
メインストリームである物語は
Z、ZZ、逆襲のシャアそして閃光のハサウェイ、
F91、Vと脈々と続く
※ユニコーンシリーズは富野ガンダムでは無いため
スピンオフとしてカウントしています。

それだけでなく、スピンオフもたくさん放送され
さらにはアナザーと称されるものまで
出てくる次第。
もはやガンダムとは大河ドラマなのである。

1-2 「めぐりあい」は偶然に…

40年以上も歴史ある作品と
今年25になる私との接点は偶然だった。
今からちょうど20年前、まだ幼稚園生だった
当時、楽しみといえば祖父の家で遊ぶことくらいでした。
祖父が見ていた夕方のニュースを見ながら
レゴブロックでよく遊んでいたものです。
その夕方ニュースの後に放送されていたのが
機動戦士ガンダムSEEDシリーズでした。
当時5歳の自分には
複雑すぎるお話ではあったが、
少し際どいオープニングと
宇宙空間を縦横無尽にアクロバティックな
戦闘をするモビルスーツに痺れ、
それだけを楽しみに毎週視聴していた。
それが私とガンダムの「めぐりあい」だ。
それからSEEDシリーズ、ダブルオーシリーズをリアルタイムで視聴した。

2.宇宙世紀と私

2-1 アナザー、宇宙世紀論争
おそらくこんな文章、ガンダム好きの一部の一部しか読まないと思うが一応説明しておく。
ガンダムを語る上で最も重要なファクター。
それが宇宙世紀とアナザー論争だろう。
極端に言って仕舞えば、
何を本流とし亜流とするのか
そう言った議論は日常茶飯事であるのだ。

2-2 登竜門としてのUC
私はアナザー作品世代で、
ファーストガンダムには触れる機会はなかった。
大学時代にツタヤで借りて
見たガンダムUCをきっかけに
宇宙世紀サーガに触れた。
UC(ここではユニコーン)シリーズは
ファーストガンダムをよく知らないものを
巻き込むにはとてもよい作品だったと思う。
作品の根幹である「ニュータイプ神話」を
真っ直ぐに描いていて、
非常にわかりやすいためだ。
ただこのニュータイプを如実に描く点が
賛否を分けてしまっているのも
事実だったりする。
まぁしかし、わかりやすて
"ガンダムあるある"が随所に散りばめられていて
登竜門としてはいい作品だと思う。
おまけに登場するメカもかっこよく、
戦闘もスタイリッシュ
見ていて飽きない作品だ。

2-3 宇宙世紀サーガにおける今作

今回の劇場版は
初代ガンダム(機動戦士ガンダム)から続く
宇宙世紀サーガが舞台であり、
初代ガンダムが舞台だ。
翻案はテレビシリーズ15話
「ククルスドアンの島」
劇場三部作からもリメイクのORIGINでも
描かれなかった話だ。
なぜ今さらリメイクされるのか疑問に思った。
世相を見ればバッチリ当てはまる
ウクライナ侵攻があるが、
この作品とウクライナ侵攻とを
重ねて語るのはあまりチープだ。
企画自体は3年ほど前からあり、ウクライナ侵攻が起因しているわけではない。
多少作品に影響を与えたかもしれないが、
そんなところを論ずることはナンセンスだ。

3 本作の見どころ ※ネタバレを含む

3-1 進化する映像表現
79年のテレビシリーズから40年の時を経て
再構築された"30分"はおよそ90分に
ディレクターズカット版とでも
言う長さになっていた。
40年の間に数多の作品が生み出された
ガンダムは、その都度都度で進化を見せてきた。
それは物語だけではなく、モビルスーツの動きという点でもそう言える。
手書きのアニメーションからフル3Dアニメまで…
今、ガンダムは宇宙空間を
自由に高速に動くことができる。
『逆襲のシャア』に続く作品で登場するMSは
アナハイムガンダムの最終世代。
亜音速かそれ以上で大空を旋回する。
そんな表現さえ映像化してしまえるほど、
日本のアニメーション技術は進歩した。
日本の映像技術は進歩した。
シンウルトラマンに関してもそうだった。
50年以上経てリファインされたそれは
洗礼されつつ、どこかノスタルジーを残した作品であった。
ではリファインされたガンダムは…
技術の進歩で亜音速を超える
MSの表現を可能とした映像で描かれた
ファーストガンダム。

※ここからはネタバレありです

3-2 新たな技術が溶かした40年モノの物語
17年に映像化されたORIGINと同じように
3DCGで描かれたMSはメカメカしさがありつつ
安彦さんの優しくも厳しいアニメにフィットしていた。
ORIGINという作品があるぶん、
その点の感動はあまりなかったが、
素晴らしかったのは、
カメラワークとMSの重量感だ。
すり鉢状のクレーターをぐるっと一周
まるで実写映画のようなワークに臨場感は
ミリタリドキュメンタリーさながら。
そして、この物語は地球戦。
宇宙とは違い、重力に引かれるMS。
昨年公開された「閃光のハサウェイ」で描かれたそれとはまた違った重力を感じた。
後者が地球の重力への抵抗を描いてるもので、
今作は、従わざるを得ない理不尽な重力という印象を抱く。
その重力感は確かに40トンを超える
重さを感じさせた。
質量を持った、確かにそこに存在するもの
としてガンダムを描いていた。
そこに前述したカメラワーク。
写実的でいて、アニメ的狭間にいるからこそ描ける作品だと言える。
その根底として、「温故知新」
古き物語を新しき技術が温め、
溶かして露わにし、改めて提示してきた。

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