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ぼくらがなぜ「入管」に怒っているのか知ってほしい シリーズ3
「コレが公務員が言うことか?」
シリーズも3回目。2回目に引き続いて、2019〜2020 年に入管が行った「仮放免制度の濫用」に関連して、今回は入管職員の対応に怒りを覚えたことを中心に書く。
入管はそれぞれの事情を無視した「全件収容主義」を主張しており、難民申請者も収容対象となっている。
しかし、そもそも収容=拘束は送還準備のための一時的なものとされている。難民申請者は送還してはならないと難民条約で決められいるから、本来なら国際法上収容対象になるはずはない。
この種類の話をすると「治安」を持ち出す人がいる。難民申請者や在留許可を持たない人がいると不安だから治安上閉じ込めてしまえという雑な話だ。
仮に窃盗などの犯罪を行った場合は、警察や裁判所などの手続きを経て逮捕・拘束を行うべきこと。もちろん、罪を犯せば法に沿って逮捕や拘留が行われるのは私も当然だと思う。私たちは入管の全件収容を人権無視と常々言っているが、これは難民申請者や在留許可がない人を特別扱いしろとか、犯罪を免除しろとか言っているのではない。単に日本が批准する国際法を守れ、と言うことを言っているのだ。
入管が行っているのは「治安を乱しそうな人」を独自に決めて収容する予防拘禁で、犯罪をした人を捕まえることとは全く異なる。予防拘禁は権力に従わない人を拘禁する口実になりやすいこともあり、民主主義国家、法治国家で行われるべきではない。
それに、日本で一番多く犯罪をしているのは間違いなく日本人であり、凶悪な犯罪だってそこそこある。つまり人種や属性から「治安のための拘禁」を考えるなら、まず日本人全員を収容すべきということになる。また、与党の中には国会で数百回も嘘をついたり、パワハラ、セクハラ、恫喝を行なっている議員がいるばかりか、逮捕や起訴された者も続出しているのだから、属性でまとめるなら自民党議員全員予防拘禁すべきだろう。
もちろんこれは極端でばかばかしい例えであり、そもそも属性を考えて拘禁するなんて全く合理的ではない。それなら、外国人だから、難民申請者だから収容するなどという考えも同様にバカバカしいと知ってほしい。彼らにはそれぞれに事情があり、考慮すべき背景もさまざまなのだ。
入管はオーバーステイや在留許可が無いこと自体を罪としており、確かに入管法にもそのように書かれている。しかし、これは多くの点で日本が批准する国際人権法と矛盾しているのも事実だ。
国際法は国内法より優先されるべきで、国際法を批准しているならそれに沿って国内法も改めなければならない。それができていないからこそ、入管の行いは何度も国連の人権理事会から注意を受けている。
つまり、入管法自体が国際法に違反しているのであって、国内法だけを盾に「全件収容」を行うことは、国際社会から見れば明らかなルール違反なのだ。
何年も収容されていた人は、ほとんどなんらかの疾患や痛みがある。今回はその点は深くは触れないが、糖尿病などの慢性疾患がある人も多い。
長期収容のストレスは、確実に被収容者の健康を奪う。入管は「苦痛」を与えて自主帰国をうながしているのだろうが、「帰らない」のではなく「帰れない」人にとっては単なる拷問でしかない。
全件収容は彼らの時間と健康を奪う上に、社会との繋がりを絶ってしまうこともあり、生きづらい状態を量産するだけの無意味な方針だと私は思う。
穏やかな二週間はすぐに過ぎ去り…
しばらく押し問答したけど聞き入れられず、仕方なく待合室で待つことにした…
一年以上前のことだけど、本当にこういうことを言われた。今考えてもほとんど嫌がらせとしか思えない…
ちなみに、ゆっきー舎小柳はあまり話すのが得意ではなく、特に今回のように怒りや興奮があるとなおさら整然と話せない。そのため、このマンガほどテキパキと指摘できていないけど、自分なりに一生懸命おかしいことを訴えた💦
この後、総務に行って開示請求をしようとしたが、「どうせ真っ黒のしか出ないからやるだけ無駄です」と平然と言われ、ここでもまた抗議した。その際、総務職員に「入管は戦時下の特高警察より悪いと言われていることを知っているか?」と聞いてみたが、その職員はそもそも特高警察を知らなかった…
そのため、「特高警察は入管の歴史に関わってるから、勉強しなさいよ」と、陳腐な説教までしてしまった…
それから、仮放免取消事由の開示請求は本人しかできないと言われ、それまでのやりとりがなんだったのか、と脱力する場面もあった。
この時、入管問題に関わり始めて2年程度… 少しは勉強しているつもりだったが、私は何一つわかっていなかったと痛感した。
そして、先輩支援者の皆さんが「無力」という言葉をしばしば使うことに、この時初めて深く共感した。
また、この日の怒りとSさんが目の前で収容されたショックは私の中で尾を引き、数ヶ月間、高い確率で悪夢を見た。
私ごとき関与度でもこんな気持ちになるのだから、当事者や家族の皆さんはどれほど辛い日々を送っているか、想像もできない。
前述したように国際法を無視した雑な根拠で、このように人を苦しめる入管行政に、私は心底怒りを覚える。
このシリーズのタイトルを、『ぼくらがなぜ「入管」に怒っているのか知ってほしい』としたのは、入管が薄い根拠で、国際法を無視したまま、不合理な政策を続けていることを、多くの人に知って欲しかったからだ。
入管の問題は、何をどう改めるべきかは分からなくても、少し知れば「これはおかしい」、「ここまでやる必要はない」と思う人が多い。
その点は2021 年に起きたスリランカ人女性死亡の件でも明らかだ。入管の非人道行為は多くの人が知らないことで放置されてきたのであり、知る人が増えればここまで悪いままではないだろう。
しかし、今回記載した2020 年の春から夏にかけては、私は何をしたらいいのかはわからないまま、「無力感に浸っていても仕方ない」と、もがいていた。
被収容者に面会したり、仮放免者と会話することも続けた。また、医療につながるための補助や、各種手続きなどのサポートも、少ないながらも行った。
そんな中で、新型コロナ感染が拡大し、状況が少し変わった。
2020年6月頃(場所によって差があった様子)から、収容場の過密を避けるため、仮放免許可が多数出るようになったのだ。
それでも収容されている人は依然として存在するし、仮放免されても就労はできないので、経済的に困窮する人も多く、問題は山積みのままだ。
とは言え、仮放免者が増えたことで犯罪が増えた、などという話は聞かないので、「治安維持のための収容」などという考えが無意味なこと、結局全件収容は不要であることが、暗に証明されたと言えるだろう。
この後も入管に怒りを覚える体験は後を絶たないが、次回は2021 年の入管法改悪反対闘争を中心に書こうと思う。
この時期、多くの人との出会いがあって、自分の活動にも大きな影響があった。
そして、今も「無力感」はあるものの、つたないながらもマンガや記事で何かを伝えようという考えに至ることができた。
だから、次回でこのシリーズを一旦完結させて、その先に「怒り」だけでない、「前向きな活動」を残したいと思い、今、取材や記事作成を続けている。
次のシリーズのタイトルはまだ決めてないけど、
我々は「微力」だけど「無力」ではない!
と思える内容を伝えたい。
そのためにもまず本シリーズの区切りを書くので、また読んでいただけるととても嬉しいです。
ではまた。
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