見出し画像

【ゆっきー舎・考える部 書籍紹介1】  日本の難民問題入門書としておすすめ! 織田朝日著『となりの難民』

私は3年ほど前に、日本の入管国際法に違反しており、非人道なことを組織的に行っていることを知った。その後、入管に長期収用された経験がある人に会い日本で難民申請している人と一緒に暮らし入管に収容されている人に面会をするなどして、微力ながらも支援活動を始めた。

ただ、入管問題、日本の難民問題は、法的なことや歴史的経緯などがあって、初心者にはどこがどのように悪いのかを明確に説明することは難しい
そんな中で頼りになるのは、先駆者が作成した記事や書籍、動画などだ。

そこで、今後はnote上で、自分にとって役に立ったと思う書籍や記事、動画などを積極的に紹介していこうと考えている。

そして今回取り上げるのは、織田朝日『となりの難民』という児童書だ。

1・入管問題、日本の難民問題の入門書として最適!

入管問題、日本の難民問題で、最初に紹介したいのが織田朝日さんの『となりの難民』という書籍だ。
弁護士やジャーナリストがこの問題について書いた記事や書籍は多数あるが、初心者にとっては難しい言葉ばかりでわかりにくいものが多い。
もっと正直に言えば、専門用語が並んでいると理解がついていけず、眠たくなってしまうこともある💦

その点、本書は児童書の形を取っているため意識的に平易な言葉を使っているし、著者が一般人として体験したこと、その時々に思ったことを書いているので非常にわかりやすい
また、著者の体験や感情論ばかりが述べられているわけではなく、図表を多数使って入管や難民に関する問題をわかりやすく解説している部分もあるので、この問題に初めて触れる人にもかなり読みやすい。
さらに、著者の体験の一部が4コママンガで書かれていることもあって、親しみやすいのもオススメポイントの一つだ♬

2・無味乾燥な「事例」ではなく、「人」が見える内容が多い!

この種類の本では、記事内の人を客観的に書こうとする書籍が多い。ジャーナリストや弁護士の立場であればそれは当然なので、もちろんそれが悪いということではない。

しかし、本書は著者が出会った人を「友人」と位置づけで書いていることを特徴としている。
遭遇したことが無い人にとって「難民申請している人」「入管に収容されている人」は遠い存在でしかないし、近寄りがたいと思う人もいるだろう。また、数字的にあらわされることが多いので、同じ「人間」という意識を持ちにくい実情もある。

現に私も個々の人として知り合う前には、「よくわからないけどなんだかとても大変な人たち」というぼんやりした認識しかなかった。

だが、それぞれの人に会って話をすれば、どの人にもそれまでの人生があって、家族がいて、思い出があるつまり、私と何ら変わりない「人間」の一人だということがわかる

難民申請している人も、好きな歌、好きな食べ物がそれぞれにあって、コイバナをすることもある。いろいろ苦しいことが多いのであまり笑顔を見せない人もいるが、その一方で私や私の家族の健康を気遣ってくれる人が多い。

『となりの難民』もそんな感覚を強く持って執筆されており、織田さんはすべての支援対象者や、その子どもたちを対等な人として捉えている。
そんな姿勢を持つこの本に私は共感を持ち、この本を2冊買って1冊は他の支援者にプレゼントしたこともある。

3・私なりの感想や、この問題で思うこと

私がこの本を読んで強く思うのは、「難民」という種類の人たちがいるのではないということだ。彼らはひとくくりにできる記号的な存在ではなく、それぞれにいろいろな事情を持っている。出身国もさまざまで、同じ国から来た人でも状態、状況はすべて違う。難民申請をする理由ももちろんそれぞれで、戦争や紛争で家や家族を失った人もいれば、その地域の非人道な風習や理不尽な差別によって迫害を受けた人もいる。

そして、何より強く思うのは、彼らは「難民」になりたいわけではないということ。
彼らは単に普通に生きたいだけなのだ

何らかの特権とか、楽な人生を要求しているのでもなく、命の危険や迫害を逃れて、最低限の衣食住を確保して、人間らしく生きるために「難民申請という制度」を利用しているにすぎない。

制度である以上判断基準があって、残念ながら基準が当てはまらない人が出ることもあるだろう。
これは例えば大震災や、昨今のコロナ禍による弊害に対して、状況によって利用できるケアが違うのと似ている。制度に当てはまらなかった人が苦しんでいないわけではないし、一つの救済制度に適合しないからと言って、基準に当てはまらない人を粗略に扱ってよいはずはない。

日本人も先の大戦時には住む場所や経済基盤を失って途方に暮れた人も多く、海外から日本に帰れないまま亡くなった人もたくさんいる。少し想像力を働かせて、自分自身や家族が異国の地で非人道な目に合うことを想像すれば、本作に書かれたような入管の行為が許されるはずはないと思えるだろう。

日本は残念なことに、難民条約に加盟していながら内容を無視して勝手な運用をしており、今その理不尽をさらに強化しようとさえしている。

この件については、せやろがいおじさんの動画がわかりやすいので、ぜひご覧いただきたい。

※動画は11分以上あるが、最初の5分を見ていただければ入管のゆがみがある程度わかるようにまとめられている。


上記の動画にもあったように、国内に外国人が増えることに抵抗を感じる人もいるかもしれない。しかし、『となりの難民』を読めば、「ここまでの仕打ちは必要ない」と共感していただけると思う。

そう思う人が増えて大きな民意になれば、救われる人が増える。そういう積み重ねこそが、結局人類の進歩なのだと私は強く思う。

『となりの難民』、わかりやすくておすすめなので、ぜひ手に取っていただきたい。


サポートありがとうございます。サポートにて得たお金はより良い記事を書くための取材費に当てさせていただきます。 また、「入管・難民関連の記事に関してのサポート」明言していただいた分は、半分は支援のための費用とさせていただきます。