ひたすら体験して学んだ修行の時期をふりかえる
1年間、乃木坂にあるカウンセラーの学校に通っていた。ちょっと変わった学校で、『家庭に入り社会から切り離された女性が働いて社会とつながるようになれるためのリハビリの場所』といった感じの場所。講師の多くはこの学校の卒業生でカウンセラーの仕事をしている方たちで、専門的な心理カウンセラーになるための勉強だけをする学校ではない。講師の方たちは個性派揃いで、分野も西洋占星術の先生もいたりまちまちで、人物的にも興味深く、面白かった。
週1のイベントレポートの宿題
毎週何かしらのイベントを実行してそのレポートを書く宿題があるのだけど、この宿題のおかげで体験したこと、会いに行った人は思い出せないくらいたくさんある。
新宿二丁目のゲイバー
・ゲイバーは興味深いところで、Campy!barというショットバーには3回通った。夜も昼のカフェタイムにも行き、ゲイの世界のことをいろいろ教えてもらった。
・Campy!barで紹介したもらいビアンバーにも行く。
六本木と浅草のショー
・六本木のバーレスクのショーでは華やかな美しい女性たちに魅了され、浅草ロック座のショーをでは女性の美しさと物哀しさみたいなものを感じた。
飲み屋とバー
・赤羽の立ち飲み屋「いこい」は、入ったはいいけどオーダーや支払いが独自ルールでなんとか見様見真似で頼んでみたり、メニューの多さと値段の安さに驚いた。
・渋谷の「アドニス」というバーではお酒とお料理の美味しさとバーテンダーさんのおもてなし、家庭とは違うのだけど家のようなくつろぎを感じた。
福祉施設
・藤沢の介護施設「あおいけあ」を訪問して代表の加藤さんから大学と連携した活動の話しを聞いたり、おばあちゃんたちに「あなたたちみたいな人はなんでみんなここに来たがるのかしら」と言われつつおしゃべりしたり、お昼ご飯をいただいた。庭で焚き火をする高齢者の方も、ここに通ってきてる人だと言われてとても驚いた。
・この時期、認知症高齢者の病院でパートで働き、「あおいけあ」とは真逆の認知症病院の現実を毎日つきつけられつつ、話しができるおじいちゃんおばあちゃんたちとの多少のコミュニケーションを楽しんだ。
教育
・流山にあるフリースクールを見学して、学校に通うのとは違う過ごし方をする子たちを見てきた。ゲームしたり漫画読んだりして過ごすのかー、というもやもやを感じた。
・モンテッソーリ幼児教育施設の見学に行った。施設や設備が整ってる。通わせるとなるとお値段が…という世界。
・不登校を考える研修会に行き、秋山先生という不登校のカウンセラーをしている専門家の方の話を聞いた。とても勉強になった。
教育関係は特に、その時に見たり体験したことでいま大いに役立っていることがたくさんある。
さまざまな習い事
・着付けに通った。その時に奄美とか十日町の着物を作っている方たちの話しを聞いて、どれだけ丁寧に多くの職人さんが関わって一つの着物が作られるかということや、産業が高齢化などで危機にあることも知った。それが今の織物とか伝統工芸への興味と繋がっていたりする。着付け教室はお着物を買わせられないように!という学び。
・ボイトレを何か月か習った。ボイトレを週1ぐらいでやってた時には、冬だったのに喉が鍛えられて風邪をひかず、喉の筋力を鍛えることの大切さに気付いた。この学びは今でも活かされている。
・習い事体験で、ダンス、エアロ・ヨガ体験、元モデルの美しい方にウォーキングを習う、アロマ関係の体験
・演技のワークショップ体験では八幡山まで行って、「設定」「感性」「表現」というポイントを教わってから同じ日に参加した若者とセリフの読み合わせを体験した。自分で思ってないことを言うのは本当に難しかった。
変身体験
・ラフォーレ原宿でのロリータ体験。メイクからヘアセットからの写真撮影から、プロによる仕事を体験した。鏡の前で自分が自分ではなくなっていくのを見て、撮影の時にはもう自分ではない気持ちで言われるがままにポーズしたのを覚えている(うさぎのぬいぐるみ持たされたりした)。
コミュニティを知る
・要町あさやけ子ども食堂という山田さんという方が長年やっている子ども食堂に行って、ごはんを作ったり、ごはんをいただいたり、なんとも温かい雰囲気の場所だった。
・学校の研修の一部でみんなで訪れた調布の「クッキングハウス」という、心の病を抱える方がスタッフとともに働くレストランで、心の病を抱える方の当事者の話しを聞いたり交流したり、体によさそうなごはんを食べる。
・公的な支援では難しい家庭の支援を行うサポート団体で、サポートを体験した。不登校の子がいるお家の家事サービスで、料理を作ったり掃除したりした。複雑な環境の家庭に入るのは、長きにわたる忍耐力と強い使命感がなければ難しいということを痛感した。
・介護施設で高齢者にハンドマッサージをするボランティアの団体があり、その講座を受けてマッサージやアロマについて学んだ。
面白そうな人に会う
・「おっさんレンタル」する。代表の西本さんをおじさんレンタルしていろいろな体験談を聞く。「おっさんレンタル」で刑務所の面会に行った話しとか。
・スピリチュアル系のグループワークショップに参加。サイキックな能力を持つみゆきさんのセッションを受ける。前世がタイムトラベラーだったり十字軍の時代の兵士がいた。私はラテン系だからもっと自分を出していいって。
・グレイトジャーニーの関野吉晴さんに会いに、武蔵野美術大学の講座に行く。国立科学博物館の真鍋真さんとの対談や講演を聞くことができた。猿の手のつくりや、恐竜と爬虫類の腕の動きの違い、恐竜の毛の色についての話しなどが実に興味深い。
雑多によくわからん自己啓発系のワークショップだとか、子どもに勉強させるための親向け認定講師のワークショップとか、スピリチュアル系のイベントに参加したり、よくわからんDVDを買ってしまったり。そういうのも行ってみて見てみてやってみて初めて分かったことが多かった。
殻を破る!みたいなことはなくて、この後も時間と労力をかけながら、少しずつ行動範囲を広げてつきあう人たちの範囲や活動も広げていくことになる。
本格的に教育にシフトした仕事を始めたりオンラインサロンに入ったりして2017年から学びを深めていったのだけど、この準備期間があったからこそ2017年に繋がったのだろうと今になって思う。
学校のおもしろ講師
講義では毎回のように講師が変わるのだが、その中でもかなり印象強めの方がいた。おかっぱ頭でファッションも個性的、語る内容は現役恋愛トーク満載というおん年80うん歳の森本邦子先生。かなりパワフル、そしてワルテッグ・テストというアートのワークをやるとするどい洞察力で人を辛辣に分析してくる。元々は教師で、子どもたちを自然の中や社会の中に連れ出してでいろんな体験させてたと言ってたのがとても印象的だった。
もう一方は白髪で髭をたくわえたジェントルマンという赴き、だがなぜか足元は赤い靴下という、ゲシュタルト療法の百武正嗣先生。
百武先生のカウンセリングを体験した時は、なにげないキラー質問が胸に刺さり早々に号泣することになった(今考えてもあのワークは恥ずかしかった)。エンプティ・チェアという手法で3人グループでワークした時もなぜかみんなで泣き出してしまい、ゲシュタルト療法の強烈さだけが印象として残っている。
その時のワークで、人に対して『もっとこうしたらいいのに』と思うことはあんがい全部自分に返ってくるのだなというのを学んだ。
自分をあらゆる角度から、自分の視点・友人の視点から見る
さまざまなカウンセリングのワークを通して、クラスメートのことを少しずつ知っていく。すると、それぞれが抱えた問題や過去の心の傷や、見えなかったことが少しずつ見えてきて、だんだんと友人たちに対する慈しみが芽生えてきた。
子どもの病気や、夫婦関係の問題や、子育て後の自立や、親との関係、不登校など、みなそれぞれいろいろなことがあってここに来たのだなと思った。
カウンセラーについて学びながら自分をカウンセリングする
世の中には子育てや家族関係の悩みがつきない。
だがたとえば子どものことで悩んでいたとしても、実は自分を見つめること、自分が今何をしたいのかを見つめ直すことが必要ということを、この学校で学んだ。
理想の子育てといったマスメディアなどの情報に振り回され、子育て産業のサービスに翻弄され、家庭にも外にも相談できる相手がいないことに母親が苦悩することが”あるある”だというのは、子育てを10年してきた中で非常によく理解できる。
手触りのある子育てを、人との関わりを持つ子育てを、家庭でも一人で子育てを抱えないことがとても大切。
森本先生のテキストより
・子どもの心の健康(笑う、おしゃべりする、おいしいものを食べる、自然の中で遊ぶ)
・知能と情緒のバランスのよい発達(情操面が育っている、知的な能力の発達、情緒の安定、集中力と持続力、想像力と表現力が伸びている)
・社会の中で親の問題のある対応(過保護、過干渉、放任、無関心・拒否)
まだ子どもが小さいうちにこれらの知識を得られたのは非常に有難かった。
学校の友人たちは、もっと早くに知っておきたかったと言っていた。
講師の方々(学校の先輩)のカウンセリング技術と経験談
カウンセリングについて学ぶことは、他人との関わり方を学ぶことでもあった。カウンセラーでなくても、友人や、家族や、周囲の人など他人の悩みに向き合うことはある。
傾聴の練習などを通して、自分が人の話しを聞く時にどういう態度を取りがちなのか(すぐ解決しようとしたがるとか、アドバイスしたがるとか)、自分の価値観ではなく人の価値観を理解して共感することの難しさを体感した。
学校の先輩が講師ということが多かったのだけど、優しくて強くて芯があって魅力的な方が多くいた。そういった方々からは人生の先輩として、生き方を教わることも多かった。
臨床心理士として、精神科クリニックで働いている先輩の話しはとても具体的で、どういった仕事なのかということをを知ることができた。
クリニックでは1日に40分の面接が10人入ったりして非常に忙しいとか。
心理面接だけでなく、アセスメント(知能検査・人格検査)、心理教育、グループワークなどがあるとか。
薬物療法だけでも抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定薬、抗不安薬、睡眠薬、抗てんかん薬、抗認知症薬があるとか。
中でも非常にリアルな話しとして、カウンセリングをするということはクライアントが自死してしまう可能性とも向き合わなければならないことであるという話しは今でも心に残っている。
親や先生が知っておいたらいいのにと思うこと
人生にはいつどんな困難が訪れるか分からない。
でもどんな時でもどこかしらに頼れる人や機関があることを知ったし、それを知っているだけで安心感もある。何かあった時にどこを頼ったらよいかは、学校教育でぜひ教えてほしい。
例えば虐待・不登校・発達障害の場合
・・・教育センター、子ども家庭支援センター、児童相談所など。
心身の不調、職場に行くのが困難・外出できない、DV・離婚問題、生活困難、性被害・ストーカー、これらも公的に相談するところがある。
不登校についての理解
・「学校恐怖症」は医学モデル、「登校拒否」は心理主義、「不登校」は状態を示す用語、というように用語と対応が混乱している。
・不登校への対応。精神主義からの脱却、抽象論による助言から具体的行動処方箋の提示へ、子に応じた具体的対応策を考える。
不登校はまったく他人事ではないし、悪いことではない。と理解しておけてよかった。
まとめ
これだけムダに?動き回っていると自分が興味があることも明確になってくるし、これはあり、これは違うというセンサーもだいぶ磨かれてくる。
社会的弱者と言われる人たちのこともいろいろな状況の人たちがいることを知ったので、トラブルや問題を起こしたりした人がいても、その背景を想像する能力が働いてくる。
学校を卒業後も宿題の習慣は残り、興味のあることを見つけるセンサーが働くと、体が動いた。
学校にいた頃はどうしてもカウンセラー的なことに思考が向きがちだったが、フラットに考えてみると結局は教育(人の能力の発揮)とテクノロジーが残った。2017年以降はその2軸の活動を促進することになる。
宿題の履歴まとめ。よくもこんなにいろいろあったな。
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