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「コロナにおけるエネルギー業界への影響について」

コロナ渦で人々の生活様式は大きく変化しています。SDGsやESGという言葉にもあるように、企業も地球環境に配慮したビジネスを求められています。
そこで今回、Plug and Play Japanの Energy Vertical, Director を務めるKathy Liuが企業パートナーの皆様と「コロナにおけるエネルギー業界への影響」についてお話しさせていただきました。(本内容は10月8日に行われたIndustry ExpoのKeynote Sessionの内容を元にしています)

【Plug and Play Japan 登壇者プロフィール】
Plug and Play Japan株式会社 Director, Energy Kathy Liu
京都大学法学Ph.Dを取得後、日系及び外資系コンサルティングを経て、7月にPlug and Play Japanに参画。
エネルギー産業に8年以上注力し、多くのエネルギー大手企業の中期計画、新規事業検討、事業性評価、新事業立ち上げ、再生等を支援。
エネルギー以外、製造業を含めた産業全体、スマートシティ分野にも幅広く知見があります。

■Keynote(Plug and Play Japan 登壇者からのご挨拶とエネルギー業界のトレンドについて)

今日は皆さんにPlug and Play Japanから見たコロナにおけるエネルギー業界への影響についてお話しできればと考えています。

エネルギー業界について話す前に、まずコロナによってどのようなトレンドが生まれたのか簡単に説明いたします。
下記図のWHOの統計から分かるように、現在でもコロナの感染範囲が広がっています。実際、感染者は全世界で2億人に達しており、亡くなった人数も500万人近くになっています。
もちろんこの状況に併せて、各国がワクチンの有効性も考えながら予防摂取を促進し、今後における経済活動の方向性について考えている状況です。

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-全体的な経済影響

コロナによる全体的な経済影響としては以下3つの点が挙げられます。
1点目は「国から企業レベルまで経済回復に必要な資金が不足している」ということです。
社会や企業活動を見た時に、雇用問題を解決するには大量のお金がかかります。企業レベルであれば 、サプライチェーンの修復、停止した事業の再開、従業員の職場復帰にも大量の資金が必要です。
2点目は「中小企業の破綻」です。企業レベルで経済活動を詳しく見ると、大手企業と比較して中小企業の破綻が深刻な問題となっています。
特にサプライチェーン全体、そして生活サービス産業界の崩壊が非常に厳しい状況になっています。
3点目は「経済セクター別での影響差が大きい」ということです。大半の経済セクターがダメージを受けている中で、食料品、医薬品 IT系の状況は非常に好調です。各経済セクターの回復状況によってもこれから各国の影響力は変化していくと予測されます。回復状況が遅れているセクターでは高失業率に伴い、経済への打撃が起こることとも考えられます。

-地政学から見るコロナ状況

次は地政学の観点からコロナの影響をみていきたいと思います。
経済においてはさまざまなダメージがありながらも、新しく見えてきたはアメリカと中国の冷戦の始まりです。
GAFAをはじめとするIT企業がコロナ渦で飛躍的に成長している点から考えると、以下3つのことが見えてくると考えられます。

1つ目は「新しい地域主義(ナショナリズム)の高まり」です。
各国は中国に対して非常に経済的なリスクを感じていることから、サプライチェーンや貿易でも中国から離脱していくトレンドが起こるように考えられます。
2つ目は「人口構造における社会課題の変化」です。
今回のコロナ感染においても、高齢者の感染保護や若年層の失業率の増加は大きく考えさせられる例でした。
3つ目は「環境対策に対する投資の加速」という点です。
今回コロナの影響で欧米中心に環境投資が以前よりも高まりました。
今回は主に資源エネルギー、電力、ガスにおける影響について考えたいと思います。資源エネルギーの脱炭素/脱化石燃料の流れはより加速しており、最近では景気回復により石油の価格も徐々に回復しています。しかし、化石燃料依存からエネルギーの転換は大きな流れになりつつあります。特に電力、ガスにおいてはこの傾向が強く、長期的な緊急事態宣言や感染対策によって、今までの需給バランスの構造が変わってきています。
今後この変革に応じて供給体制を見直す必要もありますし、電力供給の施設の投資も拡大していくでしょう。


-脱炭素化の加速

また「脱炭素化の加速」もまたコロナ状況における大きなキーワードだと考えています。
まずESG投資に対しては市場に大きな影響があり、特にコロナによって社会的なリスクについて読めない時代になってきました。
これを踏まえると国際機関は気候変動などのリスクに対しても十分な対応や準備が必要だと考えられます。
企業に対しては短期的な視点で経済回復やサプライチェーンの最低限の稼働が挙げられます。中長期的に考えてもサプライチェーンを強化すること、リスクに関する情報網を強化していくこと、そして気候変動の対応などが求められると考えています。


-コロナ後のサステナビリティ

次にエネルギー業界におけるコロナ後のサステナビリティの動向について説明します。コロナ状況の悪化に伴い、多くの業界がカーボン排出量を実質ゼロにすることを宣言しました。特に欧米を中心に石油ガス産業が社会に対してゼロ宣言をしたことは大きな出来事です。
ここから見えてくることはパリ協定や行政の圧力や投資家の圧力だけでなく、これから景気を回復していくためにはグリーンテクノロジーの経済に対する刺激が重要になってくるということです。

具体的にイタリアの大手エネルギー会社Enel社はSDGsというテーマに限定し、資金調達を2017年ぐらいから継続的に行ってきました
2019年までEnel社ははグリーンボンドという債券を3回発行し、基本的に全額、再生可能エネルギーやグリーンテクノロジーなどの事業分野に活用しました。この戦略によりうまく自社の事業ポートフォリオを大転換し、企業の価値を高めることに成功しました。


-中長期的な影響

最後に投資、共有、販売の観点からエネルギーサプライチェーンにおける中長期的な影響について簡単な考察を共有したいと思います。
まずコロナと共存していく時代のなかで、燃料価格の大幅変動は続くと考えております。
さまざまな不確定要素がある中で、緊急事態宣言により資源開発に投資しにくいことも考えられます。
発電/製造の部分では、長期化したコロナ対策により受注予測が非常に難しくなってくる可能性があります。脱炭素に対する投資は景気を刺激する対策の一環でもあり、再生可能エネルギーやグリーン電源に関する投資はさらに増加していくと考えられます。とはいえ供給面において、現場の作業員やインフラの維持管理はリモートワークで行えない部分があるため、感染防止に配慮しながら人や技術の確保が重要になります。
販売においては、通信の発達に伴いリモートワークによるエネルギー需要が拡大しています。人口は地方に拡散しつつあり、これから地方の経済圏をどのように形成していくのか、それに合わせたエネルギーのインフラの設計は重要な論点になると考えられます。

■企業パートナーとのパネルディスカッション

今回、Plug and Play Japanの企業パートナーとしてChampion*を務めていただいている株式会社INPEX 西将利氏、株式会社電通 志村彰洋氏、株式会社東芝 田中豪氏、千代田化工建設株式会社 高嶋公介氏、ダイキン工業株式会社 安井俊介氏と共に、コロナ渦における状況をテーマにディスカッションを行いました。

*Champion:Plug and Play Japanが提供するアクセラレータープログラムに参画する企業パートナーの担当者の呼称。プログラムの窓口として、スタートアップと事業部門とのビジネスマッチングやPoC案件におけるニーズヒアリング、プロジェクトマネジメントなどに携わる。基本的に各企業2名体制でChampionを担当する。

・コロナになって変わったと思う点はどこでしょうか?

千代田化工建設 高嶋氏


コロナ渦で変化したことは沢山ありますが、デジタル化が非常に進んだことが一つ挙げられると思います。
移動の機会が減ったこと、物理的移動ができなくなり、移動時間が減ったことは大きな変化であったように思えます。
当社はエンジニアリング企業として産業設備のEPCと呼ばれる設計調達・建設、O&Mオペレーションやメンテナンスを行っています。コロナになってからは、産業設備のEPCやO&Mも変化してきており、マニュアル作業から脱却し、デジタル化のニーズが増えてきていることを感じます。
また我々が取り扱う扱う産業設備が化石燃料中心から脱炭素に変化してきていること、パンデミック対策の観点でライフサイエンス設備のニーズ増えてきたように思えます。

INPEX 西氏

最も印象的なことは、出張に行かなくても人に会えることです。 特にさまざまな会議がオンラインで行われることで、地方や海外にいらっしゃる方と畏まらずに簡単に話ができる状態に変わってきています。
また会社業務の観点でも、コロナ渦という環境がデジタル化を進めるための大きなトリガーになったと思います。
今まで、デジタル化を進めきれていない状況がありましたが、コロナウイルス感染拡大に伴い、出社0%を3ヶ月間実施することになり、デジタル化が大きく進んだと思っています。
また周りを眺めていると、物流や航空運輸、海運など、サプライチェーンの潮流が大きく変わってきていることを感じています。

・コロナと共存していく時代において、コロナ前に戻ることと、戻らないことは何でしょうか?

電通 志村氏

コロナ以降も戻らない点は「プロセスを圧縮して時間短縮を行うこと」が挙げられるのではないかと思います。
コロナ渦で事態が深刻になる中で、社内の予算執行の申請など1ヶ月かかると言われていた工程が1日で行えるという前例ができ、対応できることが実証されたからには、あえて戻さずにうまく使いたいなと思っています。

一方でハード面は、コロナ前と変わらないと思っています。例えば家や建物、違う角度で言うとコロナに直接的な影響を受けない宇宙空間や宇宙開発などが挙げられるでしょう。また、建物のエネルギーマネジメントなど、各国でEnergy Transitionを行う時に、風が吹いていなければ 風力発電はできないですし、海の近くでなければ洋上風力発電はできません。つまり、広い意味で地球というハードは変わらないので、改めてそこを見つめながらビジネスチャンスを広げられる可能性はあると思ってます。


・コロナによる世の中の変化を踏まえて、どのようなビジネス機会を感じますか?

ダイキン工業 安井氏

エネルギーとは関係ない部分にもなりますが、コロナという観点で”空気”への感度が一般の方々の間でも高くなっているように思います。例えば、お店に入る際にも、多くの人が店内の空気が淀んでいないのか気にされるようになってきています。このような変化を踏まえ、現在、理化学研究所や鹿島建設様などとともに室内の空気の流れを可視化できるような実証を行っています。

また、私たちが提供している空調機は多くの電力エネルギーを消費するものなので、カーボンニュートラルにも深く関係しています。どのような観点からカーボンニュートラルに貢献できるかということを検討している最中ですが、今後スタートアップや研究者の方々のお力を借りることが不可欠な領域と考えています。

東芝 佐藤氏

私からは特定の領域ではなく、共通の考え方として大事だと思うことをお話しさせていただきます。カーボンニュートラルに対する注目が高まるとともに、類似したようなサービスが増えてユーザーにとって選択肢が増えてきます。そのときに、サービスの利便性やユーザーエクスペリエンスでいかに差異化できるかが、ビジネス機会として重要になると思っています。また別の観点では、社会的な意義に共感できるようなサービスが重要になり、それが企業だけでなく、生活者や街・自治体、国というレベルまで巻き込んで広がっていくようなものが出てくるのではないかと思います。


Kathy

皆様がおっしゃったキーワードからコロナ産業、エネルギー産業という側面でビジネスモデルやビジネス機会を作り上げていきたいと思っています。 引き続き、エネルギー業界でもこれからどのようなビジネスになるのか継続的に考えていきたく思います。皆さんの貴重なご意見色々いただきまして、ありがとうございました。

■スタートアップピッチ、Q&A
今回は国内外4つのスタートアップに登壇していただきました。
ピッチ後に聞かれた質問の中から抜粋したものを掲載します。


・登壇スタートアップ


日本コンピュータビジョン株式会社


画像認識や顔認証のサービスを提供している会社。同社は世界最先端の画像認証、顔認証技術を開発するSense Time社と提携することで、ビルディングアクセス、温度検知、顧客属性分析などのサービスを提供しています。

Orbital Sidekick


独自の分析プラットフォームと衛星により、宇宙拠点のモニタリングソリューションを提供しています。この独自の検出機能により、石油・ガスのパイプラインを運営する主要なお客様など対してコストのかかるダウンタイムや危険な事故を減らし、予測可能性と安定性を向上させます。
現在は、送電線周辺の火災リスクの高いエリアや、化学プラントなどの固定施設を監視する企業とも提携しています。

Syook


企業の業務を可視化し、収益に直結する情報を提供しています。
すべての施設管理のためのソリューションを設計しており、従業員、契約社員、医療機器、さらにはトラックまでボタンをクリックするだけで、施設内外の位置情報を確認できるようにします。Syookは何千もの人や機具などを並行して追跡することができ、効率と安全性の向上につながります。

PHION Technologies

安全性の高いリアルタイム通信リンクと組み合わせて、電力を30フィートまで安全に無線で供給するワイヤレス充電技術プラットフォームを開発しました。
このプラットフォームは、家電製品やIoT機器、小型ロボットなど、多数の機器を同時にワイヤレスで充電できるように設計されています。PHIONの技術は、ワイヤレス充電のプロバイダーとして、パートナーの製品に簡単に統合でき、エンドユーザーが無理なく導入できるように設計されています。PHIONのビジョンは、最も安全で、最も高速で、最も効率的なフリースペースワイヤレス技術を提供することで、世界のワイヤレス充電の標準を形成することです。

・スタートアップへの質問

-顔認証のプライバシーの問題についてはどのような対応をしているか?(日本コンピュータービジョンへの質問)

香港企業の技術を利用しています。プライバシーの問題については、我々独自で、日本側にサーバーを置いてでそこで拳銃なるええセキュリティチェックを行った上で提供させていただいています。iOSに201700といった資格も取らせていただいています。

-日本企業で導入した際、弊害になる要素はあるのか?(Orbital Sidekickへの質問)

特にありません。私たちのサービスは世界中で対応することが可能です。実際、アメリカの反対側にある地域から投資もあります。私たちは日本市場に非常に興味があり、参加することを楽しみにしています。

-プロダクトの日本語対応は行っているのか?(Syookへの質問)

言語翻訳は言語ごとに個別で取り組むべきものだと思っています。今のところ、私たちは スペイン語をはじめ、興味のあるいくつかの言語への対応を検討しています。もし、日本で興味を持っていただけるのであれば、速やかに翻訳作業を行い、その結果を確認することができます。

-サービスをスケールアップをするためには何をする必要があるのか?(PHION Technologies への質問)

純粋に技術革新の問題だと思います。私たちはARレシーバーとトランスミッターをカスタマイズして運用できるようにしました。私たちは常に効率的なソリューションを生み出すことに焦点を当てていくつもりです。

Plug and Play Japanでは業界トレンドやスタートアップインタビュー、Case Studyなどを日々アップデートしています。公式Websiteはこちら:

Plug and Play Japanでは「都市型スマートシティにみる共創からうまれるまちづくり」というイベントを11月30日(火) 16:00-17:30 開催予定です。
Smart Citiesなどのテーマにご興味のある方ご参加お待ちしております。
参加申し込みはこちらから
https://japan.plugandplaytechcenter.com/events/20211130-2/

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