<文献紹介 第5弾 入れ歯の手入れを毎日しないと肺炎リスクが高まる!(高齢者)>
【概要】
誤嚥性肺炎は高齢者の死因の上位を占めており、病院や介護施設に入所する高齢者に対して口腔ケアを行うことが肺炎予防に有用であることが示されています。
しかし、地域で暮らしている高齢者において口腔ケアが肺炎予防に関連しているか明らかにされていません。
本研究では、65歳以上の地域在住高齢者約7万人を対象に、入れ歯の清掃頻度が少ないことが過去1年間の肺炎の発症と関連するのかを明らかにしました。
【ご紹介する文献】
高齢者では歯の喪失に伴い、入れ歯(義歯)を装着している者が多く、義歯の表面には「デンチャー・プラーク」と呼ばれる細菌などからなる有機物が付着しており、それらが誤嚥により肺に到達し、肺炎を引き起こす可能性があります。
【対象と方法】
研究デザイン:横断研究
研究対象者:要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者の内、義歯を使用している71,227人
【調査内容】
①対象者の属性
性別、年齢、喫煙歴、等価所得、教育歴、現在歯数、ADL、脳梗塞・認知症の既往、肺炎球菌ワクチンの接種
②義歯の清掃頻度
義歯の清掃頻度は「毎日入れ歯の手入れをしていますか?」という質問に「はい」または「いいえ」で回答してもらった。
③過去1年間の肺炎発症の有無
【結果】
●対象者71,227人のうち、過去1年間に肺炎を発症したと答えた人は2.3%
●義歯を毎日は清掃しない人は4.6%
●義歯を毎日清掃する人では過去1年間に肺炎を発症した人は2.3%
●毎日は清掃しない人では3.0%
〜〜〜75歳以上の場合〜〜〜
●義歯を毎日清掃する人では過去1年間に肺炎を発症した人は2.9%
●毎日は清掃しない人では4.3%と肺炎発症のリスクが高くなった。
〜〜リスクの増加(傾向スコア分析)〜〜〜
●65歳以上の全対象者では義歯を毎日は清掃しないことにより、
肺炎リスクが1.30(95%信頼区間:1.01-1.68)倍高くなる
75歳以上では、1.58(95%信頼区間:1.15-2.17)倍高くなる
【私見】
入院患者に限らず、日々の口腔内の清潔が「肺炎の予防」に関連していることが明らかになっている。やはり、日常の生活習慣の見直しが、こういった病気の予防の可能性を秘めていることになる。入院患者に限らず、日々の口腔ケアの習慣があるかどうかがとても重要である。