【声劇フリー台本】動かなくなる手

文字を綴れなくなっていく人の独り言。
陰鬱です。

ご利用の際は利用規則をご一読下さい。


【利用規則】


◆この台本の著作権は全て影都千虎に帰属しています。


 商用・非商用問わずご利用いただけます。
 ご自由にお使いください。


 利用時のご連絡は任意ですが、ご連絡をいただけますと大変励みになりますし、喜んで影都千虎が拝聴致します。


 音声作品には以下を明記するようお願いいたします。
・作者名:影都千虎
・当台本のURLまたは影都千虎のTwitter ID
(@yukitora01)


 配信でのご利用も可能です。
 配信で利用される際には、上記二点は口頭で問題ございません。


 また、配信で利用される場合、台本を画面上に映していただいて構いません。


 台本のアレンジはご自由に行いください。
 便宜上、一人称・二人称を設定しておりますが、いずれも変更していただいて問題ございません。


◆無断転載、改変による転載、自作発言は絶対におやめください。


【台本】


 何かを書こうと思ってすぐに手が止まった。
 何かを書きたかったはずなのに言葉が出てこない。
 何かを書きたいと思ったのにその気が失せてしまう。


 投げかけられた言葉がずっと頭の中でループするんだ。
 ただの冗談として吐かれた言葉。
 その場のノリで出てきただけの言葉。
 きっと、言った本人は何にも思っていない。
 そこまでの意味を持って吐かれた言葉ではない。


 分かってる。気にするだけ無駄だってこと。
 分かってる。そんなつもりで言ったんじゃ無いってこと。


 自分でも馬鹿馬鹿しいと思ってる。
 頭では分かってるんだ。
 なのに追いつかない。
 どうしても引っかかってしまうんだ。


 何かの真似事。
 質の悪い模倣品。
 どれもこれも剽窃ひょうせつしたもの。


 言葉が巡り巡って変換されて。
 じわりじわりと毒のように全身を巡って。
 思考が全てそれに囚われていく。
 雁字搦がんじがらめにされて動けなくなる。


 ずるりずるり。
 どろりどろり。
 ぐちゃりぐちゃり。


 全身に巡った毒が自分を溶かしていくようで。
 原型もとどめないほどぐずぐずになっていくようで。


……ああ。
 言葉が詰まる。
 何も出てこない。

 埋めることのできない空白が、増えていかない文字数が自分を追い詰めていく。
 頭から離れることのない言葉が、少しずつ体積を増していく。


 そんな中、笑いながら吐き出された軽口が僕にトドメを刺した。



 ははは。
 もう、無理だ。

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