【声劇フリー台本】一番の思い出
一番記憶に残った思い出を振り返る二人用台本です。
リップ音が入ります。
BLっぽく書いていますが性別は問いません。
台本では「」と【】で読み手を分けて記載しています。
《》の箇所はそのままでもお読みいただけますが、読み手の方のお名前に変更していただいてもお楽しみいただけます。
※の箇所は音の指示となりますので読み上げないでください。
ご利用の際は利用規則をご一読くださいますようお願い申し上げます。
【利用規則】
◆この台本の著作権は全て影都千虎に帰属しています。
商用・非商用問わずご利用いただけます。
ご自由にお使いください。
利用時のご連絡は任意ですが、ご連絡をいただけますと大変励みになりますし、喜んで影都千虎が拝聴致します。
音声作品には以下を明記するようお願いいたします。
・作者名:影都千虎
・当台本のURLまたは影都千虎のTwitter ID
(@yukitora01)
配信でのご利用も可能です。
配信で利用される際には、上記二点は口頭で問題ございません。
また、配信で利用される場合、台本を画面上に映していただいて構いません。
台本のアレンジはご自由に行いください。
便宜上、一人称・二人称を設定しておりますが、いずれも変更していただいて問題ございません。
◆無断転載、改変による転載、自作発言は絶対におやめください。
【台本】
「ねぇ、今までで一番記憶に残っている出来事って何?」
【なんだ、漠然とした質問だな】
【一番記憶に残っているってかなり難しいぞ?】
「そうかな?」
【そうだよ。せめてもう少し具体的にしてくれないか?】
【一番楽しかったこととか、悲しかったこととか】
「うーん……そのどれでもいいんだよね」
「一番記憶に残っていて、一番忘れられない出来事。それを聞いてみたいんだ」
【なるほど? ……一番忘れられない出来事、か】
【あー……そうだな】
【今、ぱっと思ったのはやっぱり《お前》と出会ったことだろうな】
「俺と?」
【ああ、《お前》と出会った時のことだ】
【あの時、《お前》は海にひとりでいた。真っ黒な海だったな】
「そうだったね。海は真っ黒で、空は不気味なぐらい赤かった」
「この世の終わりみたいな空だったよね」
【あんな空を見たのはあれが最初で最後だったな。忘れられそうもない】
「うん。僕もあの空は忘れられないだろうなぁ」
【で、だ。そこに居た《お前》はとにかく白かった】
【白い服に、青白い顔をして、今にも黒い海の中に消えていきそうだった】
【幽霊かもしれない、なんて莫迦なことを思ったよ】
「ああ、だからあの時の《君》はあんなに怯えた顔をしていたんだね。納得がいったよ」
「そっかぁ。幽霊かもって思われてたんだね、俺」
【そうだな……悲鳴をあげなかった自分を褒めたい程度には】
「え? そんなに?」
「それはちょっと聞いてみたかったなぁ」
「惜しいことをしたかも」
【冗談じゃない】
【もしかしたら、叫びながら走って逃げてたかもしれないぞ】
【そうなってたら、今こうしてお前と一緒にいることもなかった】
「そっか。それなら《君》の悲鳴を聞けなくてもよかった」
「ふふ……そっかぁ。《君》はその時のことが一番記憶に残ってるんだね」
【……あの時のことで聞きたいことがあるんだ】
「ん? なぁに?」
【あの時、《お前》は死のうとしてたのか?】
「んー……どうだったかな。忘れちゃった」
「でもまぁ、《君》と出会って今日までこうして生きてるから」
【それもそうだな】
【生きていてくれてよかったよ】
「ふふ。俺にそんなことを言ってくれるのは《君》だけだよ」
「もうすぐ、世界が終わるね」
「気分はどう?」
【さあ……あんまり、実感はわかないな】
【怖いとも思わない。呆気ないなって感じだな】
【《お前》は?】
「俺も似たような感じかも」
「いつもと何にも変わんない。こんなもんなんだなぁって感じ」
「あ、だけど、このあと本当に世界が終わって何もかもがなくなるなら最後に一つ、やりたいことがあるんだ」
「付き合ってくれる?」
【お、いいぞ。未練は残さない方がいいだろ】
【なんでも言ってくれ。付き合うぞ】
「ありがとう。じゃあ早速」
※リップ音
【……は?】
「あははっ、変な顔」
「びっくりした? でも、ずっとこうしたいって思ってたんだ」
【……びっくり、した】
【だって、おまえ……いや、それよりも、ずっとこうしたかったって】
「本当に《君》ってば鈍いよね」
「ねえ、どうかな? 今までで一番記憶に残った出来事、塗り替えられた?」
【あ、ああ……そうだな。生まれ変わっても忘れられそうにねぇよ】
「ふふ、それならよかった」
「生まれ変わったら、また会えるかな?」
【会いに行くさ。最後にこんなことをしてくれたんだからな】
「そっか。ありがとう」
「じゃあ、またね」
【ああ、またな】