【声劇フリー台本】通り魔の刃
通り魔に刺されても全然死なない『僕』がただひたすらに嘆く陰鬱台本です。
ドロドロとした感情が蠢いていますのでご注意ください。
ご利用の際は利用規則をご一読くださいますようお願い申し上げます。
【利用規則】
◆この台本の著作権は全て影都千虎に帰属しています。
商用・非商用問わずご利用いただけます。
ご自由にお使いください。
利用時のご連絡は任意ですが、ご連絡をいただけますと大変励みになりますし、喜んで影都千虎が拝聴致します。
音声作品には以下を明記するようお願いいたします。
・作者名:影都千虎
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(@yukitora01)
配信でのご利用も可能です。
配信で利用される際には、上記二点は口頭で問題ございません。
また、配信で利用される場合、台本を画面上に映していただいて構いません。
台本のアレンジはご自由に行いください。
便宜上、一人称・二人称を設定しておりますが、いずれも変更していただいて問題ございません。
◆無断転載、改変による転載、自作発言は絶対におやめください。
【台本】
どうして、こんなことになったのだろう。
上手く呼吸が出来ない。
じくりじくりと傷口が疼く。
気付いたときには遅く、僕は滅多刺しにされていた。
何度も何度も、たくさんの刃が僕のからだを切り裂いた。
傷口からはドロリドロリと僕のなかみが零れ出ている。
こんなものを出したくは無いのに、僕の意に反して傷口から溢れ出す。
ああ、嫌だ。
こんなことをしたかったわけではないのに。
どうして。
どうして、こんなことになったのだろう。
僕はどうして刺されなきゃいけなかったのだろう。
呼吸をすることすら許されないのだろうか。
僕という存在がダメなのだろうか。
僕はどうすればよかったのだろうか。
どうして、どうしてと答えのない疑問が渦巻いて消えない。
僕を切り裂いた刃たちは、今日も美しく白い輝きを放っている。
今日もきれいだね。きれいで、楽しそうだ。
ずっとそちらで楽しくしていてくれ。
わざわざこっちに、その切っ先を向けないでくれ。
見たくないし聞きたくないし知りたくも無かった。
白い刃を、互いを鏡のように写し合う悍ましい世界を知らずにいられたら、僕はもう少し穏やかに過ごせたはずなのに。
どうしてこんな目に遭わなければいけないのか。
僕が何をしたというのか。
ねえ、その白い刃をどうして僕の血で汚そうと思ったんだい?
わざわざ、どうして、そんなことをしようと思ったんだい?
分からないし、分かりたくもない。
からだの感覚は酷く鈍い。
まるで他人事のようで、傷口から溢れ出るものの汚さに嫌悪感がこみ上げた。
汚くて醜くて気持ち悪い。救いようもないし、救われたいと思っているその浅ましさに反吐が出る。
何もかもが嫌いだ。
相変わらず呼吸は苦して、吸って吐くだけの動作があまりにも痛い。
傷口は少しも痛まないのに、呼吸することが痛くて痛くてたまらない。
いっそのこと息が出来なくなってしまえば楽になれたのに。
僕は一体、何をしたいのだろう。
塞がることのない傷口を眺めて、悲劇に浸っている姿があまりに滑稽で。
何にも楽しくないのに、自然と笑いが零れた。
はは、ははは、あはははは!
……ああ。どうしてこんなことになったのだろう。
こんなことになるのなら、初めから呼吸など止めてしまえばよかった。
なあ、いっその事……僕のことを、殺してくれよ。
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