【声劇フリー台本】とある夏の日
夏の日。何もない休日。
何の変哲もない日常。そんな一人用台本です。
雰囲気は暗いので苦手な方はご注意ください。
ご利用の際は利用規則をご一読下さいますようお願い申し上げます。
【利用規則】
◆この台本の著作権は全て影都千虎に帰属しています。
商用・非商用問わずご利用いただけます。
ご自由にお使いください。
利用時のご連絡は任意ですが、ご連絡をいただけますと大変励みになりますし、喜んで影都千虎が拝聴致します。
音声作品には以下を明記するようお願いいたします。
・作者名:影都千虎
・当台本のURLまたは影都千虎のTwitter ID
(@yukitora01)
配信でのご利用も可能です。
配信で利用される際には、上記二点は口頭で問題ございません。
また、配信で利用される場合、台本を画面上に映していただいて構いません。
台本のアレンジはご自由に行いください。
便宜上、一人称・二人称を設定しておりますが、いずれも変更していただいて問題ございません。
◆無断転載、改変による転載、自作発言は絶対におやめください。
【台本】
逃げるように眠った。
眠っている間は何も考えずに済む。
眠っていれば嫌なことなど何も起こらない。
そう思いながら惰眠を貪った。
だけどこんな時に限って夢を見たんだ。
肉親が死ぬ夢だった。
知らぬ間に倒れた肉親は病院に搬送される前に自宅で亡くなった。
何が起こったのか分からなかった。
どうしてそうなったのかも分からなかった。
一緒に暮らしていたはずなのに気付けなかった。何もできなかった。
もっと早くに気付けていれば、自分が何かできていれば、もしかしたら助かったのかもしれないのに。
そんなことを延々と後悔しながら、僕はその後の処理に追われていた。
何もかもわからない状態で、何もかもを自分でどうにかしなければならない。
助けてくれる人などいるわけがなくて、ただただ焦りだけが募っていった。
一人きりになった時に少しだけ肉親の死に涙して、それ以外は手続に追われていた。
夢と現実の区別がつかないまま、突然目が覚めて全てが夢だったということを知った。
起きてみればそこには夢の中で死んだ肉親がいて、そこでやっと夢を見ていたのだということを理解した。
それと同時に、夢の中ですら何もできなかった自分をひたすらに悔いた。
でも後悔するばかりで結局体は動かない。
頭はずっしりと重たくて思考は思うように回らない。
また逃げるように眠ろうとしても、眠りに落ちることはできなかった。
なにかしないと。
なにもせずにいるなんてダメだ。
なにか、なにか。
そう思いながらも何も出来ずただただ時間だけが過ぎていく。
夕暮れ時の涼しい風が外から吹き抜ける。
風に揺られて風鈴が微かに鳴った。
外からはひぐらしの声と、どこかの誰かが草刈りをする音が聞こえる。
それらの音が今日は妙に耳に突き刺さる。
ぐわんぐわんと頭に響いてきて逃げ場がない。
逃げられないまま、眠れないまま、ずっしりとした感情が少しずつ滲み出てくるのがわかる。
ああ、今日もダメだった。
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