【朗読フリー台本】言葉を飲む
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【利用規則】
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頭の中で言葉がぐるぐると巡る
延々と自問自答を繰り返して、結局また言葉を飲み込んで
吐き出せないままの言葉が幾重にも積み重なって僕に重くのしかかる
今日も頭の中は随分とおしゃべりで、言葉が途絶えることは一度もない
仕舞いには、かつて放たれた言葉や場面が一緒になって飛び交う
言葉の渦に閉じ込められた僕は今日もまた抜け出せない
いつものこと
よくあること
そうやっていつも通りに受け流そうと思っても、酷い胸の痛みがそれを許さない
ああ、そうか
僕はあの言葉で、あの場面で、知らぬ間に傷ついていたのか
あれも、それも、これも
次から次へと出てきて途絶えることが無いのはそういうことなのだろう
どうしたら消えてくれるのだろう
どうしたら忘れられるのだろう
どうしたら何も感じなくなるのだろう
いつかきっと時間が解決する類のものだ
でも、その『いつか』はいつ来るのだろう
どれだけ待てば現れるのかも分からない『いつか』まで、僕は何度も何度も同じことで苦しまないといけないのか
あのとき少しでも言葉を口に出していたら何か変わっていたのだろうか
なんて、どうしようもない『イフ』を考えてしまう
だが、きっと口に出したところで何も変わらなかったのだろう
その証拠に、ホラ
あれも、それも、これも
いくらでも出てくる記憶の端々をつなぎ合わせればすぐに見えてくる
何を言ったところで返されるのは口先だけの謝罪と、その場しのぎの嘘だけだ
それで御せる相手だと侮られていたのだ
僕はずっと馬鹿にされていたのだ
悔しいという気持ちよりも、悲しいという気持ちのほうが大きい
僕は僕なりにやっている
なのにどうしてあんな扱いをされなければならなかったんだろうな
今思えば、あれもこれも全部嘘だった
そう言っておけば良いだろうと思われていたのだろう
信じるべきじゃなかった
信用などするものではなかった
僕の感覚ほど当てにならないものはない
もっと周囲の感覚を頼ればよかった
僕とずっと親しくしてくれている人たちの意見を聞くべきだった
勝手に好きになったのは僕だけど
嫌いにさせたのは相手だ
信用できないだけの理由を積み重ねたのも全部
あのときパッと消えて仕舞えばよかった
躊躇うことなく、衝動のままに
きっかけはいくらでもあったのに
なんて、今更としか言いようのない言葉がいつまでも腹の奥底で燻っている
僕は弱い人間だ
強いフリをして、逞しいフリをして、こうして悪態をついていなければすぐに崩壊してしまう
僕は弱い人間だ
気にしなければ良いだけの事にいつまでも引っかかってしまう
僕は弱い人間だ
言葉一つまともに吐けずに飲み込んでしまう
弱い人間だからこそ、『何もかも無駄だった』とだけは思いたくない意地がある
それだけは認められない
認めてしまったら、負けてはいけない何かに負けてしまう気がするから
自問自答を何度も繰り返してようやく拾い上げた言葉だけを綴る
愚かな僕の無様な姿が、もしかしたらなにかになるんじゃないかって、そんなことを思いながら
こんな言葉でも誰かに響くなら、ほんの少しだけ僕は報われるのかもしれない