【声劇フリー台本】一番近い他人
ただひたすら自問自答をして自己嫌悪に陥る台本です。
陰鬱としていますので苦手な方はご注意ください。
まあまあよくあるお話です。
ご利用の際は利用規則をご一読くださいますようお願い申し上げます。
【利用規則】
◆この台本の著作権は全て影都千虎に帰属しています。
商用・非商用問わずご利用いただけます。
ご自由にお使いください。
利用時のご連絡は任意ですが、ご連絡をいただけますと大変励みになりますし、喜んで影都千虎が拝聴致します。
音声作品には以下を明記するようお願いいたします。
・作者名:影都千虎
・当台本のURLまたは影都千虎のTwitter ID
(@yukitora01)
配信でのご利用も可能です。
配信で利用される際には、上記二点は口頭で問題ございません。
また、配信で利用される場合、台本を画面上に映していただいて構いません。
台本のアレンジはご自由に行いください。
便宜上、一人称・二人称を設定しておりますが、いずれも変更していただいて問題ございません。
◆無断転載、改変による転載、自作発言は絶対におやめください。
【台本】
やること為すこと全てが裏目に出る。
こんなはずではなかったのに、なんて後悔が自分の言動について回る。
「俺は……俺は、一体なにを……?」
身体と思考と感情がバラバラに動いてどれが俺なのか分からなくなる。
俺は一体何をしているんだ?
俺は一体何をしたいんだ?
俺は一体何を思っているんだ?
俺は一体何を感じているんだ?
他人と会話をしたときに、口から出る言葉と感情が一致しない感覚が気持ち悪い。
どこまでも平坦な感情のまま、激しく動き続ける思考に辟易する。
「なぁ……俺は、一体誰なんだ……?」
鏡に向かってあまりにバカげた問いかけをする。
鏡に映っているのは自分だ。分かっている。俺は俺だ。
でもどこか他人のようで、これが本当に自分なのか分からなくなってしまうんだ。
訳が分からない。
自分でも理解できない。
視線を落としてみれば薄汚れた自分の手が目に入った。
綺麗なものに触れることなど到底許されないような汚い手。
自業自得とはいえ、そんな選択ばかりしてきた自分に嫌気が差した。
自分の手など見ていられなくて顔をあげてみると、鏡に映った自分と目が合う。
鏡に映った自分は、一番なりたくない姿によく似ていた。
「うわああああぁッ!」
そのあまりの醜悪さに情けない悲鳴が漏れた。
連鎖するように思考が巡って、これまでの自分の言動を強制的に振り返る。
あれも、それも、これも。
嫌いだ嫌いだと口にしながら、自分も全く同じことをしているという現実が容赦なく突き付けられていく。
「やめろ……やめろ! 止まってくれ……俺は……」
蹲って懇願するように呟いてみても思考は止まらない。
「う、ぐ……おえッ」
思考が巡れば巡るほど、これまでの自分の言動を振り返れば振り替えるほど、ギリギリと胃が締め付けられて吐き気がこみ上げてきた。段々胸も苦しくなって、呼吸が次第に荒くなる。
最悪だ。
最悪で最低で、どうしようもない。
さっさとくたばるべきなのは俺だった。
その罵詈雑言を浴びせられなきゃいけないのは俺だった。
これまでの自分の言葉が全て跳ね返ってきて、雨のように俺を穿つ。
「はやく、消えてくれ……」
「今すぐ、この世から消え去ってくれ……」
切実な願いを口にしてもそれを叶えられるのは自分だけだ。
そして、出来損ないで屑な俺はそれを叶えることが出来ない。そんなことすらも出来ない。
ならばもう、誰にも迷惑をかけないよう、誰の視界にも入らないようにしてくれ。
隅で一生小さくなって、死んだように過ごしながらその時を待っていろ。
「ずっとひとりで、そうしていろ」