演劇団体に突ゲキ! 9月編
はじめまして、関口真生(まおすけ)です。新しい企画を打ちます。
様々な演劇関係者の方のお話を聞きたいという私の欲望から企画が生まれました。コロナ禍でも上演を続ける演劇団体を応援し、共に宣伝することを目的としています。公演1ヶ月〜2週間前までを目安に各団体のインタビューを掲載させて頂こうと思います。
記念すべき第一回は、9/23からこまばアゴラ劇場で上演される「スーパーポチ」を取材すべく、コトリ会議の山本正典さんにお話を伺いました。
【コトリ会議】2007年結成。劇団の中核となる作家・山本正典は近未来を想起させるSF感あふれる壮大な設定の中に、現代社会における "ふつうの人”の持つ気持ちを反映させた物語を創作。その作品でもちいる言葉は、軽妙で笑えるが、詩情に満ちて切なくも響く。そして発話するテンボとボリュームを操り声や音を聴かせる演出を得意とする。2016年に地方3劇団協働の「対ゲキツアー」以降、ツアーをともなう本公演と、イベント的な小規模公演、演劇祭では誰も狙わない"隙き間”を利用した神出鬼没な小作品を、規模によって変幻自在に上演している。
【山本正典受賞歴】2018年、第9回せんがわ劇場演劇コンクール「劇作家賞」受賞。第6回せんだい短編戯曲賞最終候補。第25回OMS戯曲賞佳作に入選。2019年、第26回OMS戯曲賞佳作を2年連続入選。2020年、第27回OMS戯曲賞大賞を受賞
以下、インタビューになります。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ー改めまして本日お時間頂いて本当にありがとうございます。
山本 ありがとうございます。
ー先月行われた「もしもし、こちら弱いい派」の公演お疲れ様でした。終わってみて何か感想とかあればお聞きしたいんですけどありますか?
山本 そうですねえ...夢のようでしたね。ちょうどオリンピックも開かれた時だったので、池袋も警官の方々がいっぱいらっしゃって。物々しい中で始まってたので、そういう意味でも貴重な経験させていただきました。
ー今、演劇は無事に上演できるまで綱渡り状態というか、リスクが多い中で、千秋楽を終えられたことは本当によかったなあという感じですね。
山本 よかったです、ほんとに。こういう環境だからこそなんですけど、一つお芝居をすることって大変なことだなって、だから無事終わってよかったです。
ー他の二団体の公演をみて何か驚いたことなどありましたか?
山本 はい、驚きましたね。ウンゲツィーファさんは作品自体もなんだこりゃって感じで。
ーはいはいはい。
山本 僕らは何ヶ月も前から三団体でオンラインで打ち合わせから始まって、お互いにどんな作品やるんだ、みたいなことをちょっと牽制しながら。東京で初めてお会いして、実際作品を見て、という風に過ごしてたんですけど、ウンゲツィーファさんは全然打ち合わせで話して想像したものと全然違うものが出てきて驚いたし楽しめましたね。いいへんじさんは、大学卒業したばっかりの方々でこんなにもうまくて、すごい作品が綺麗な...何と言うか達観したと言ったらあれなんですけど、自分の考えの及ばないようなものを考えてそれを実際に舞台にあげる人たちがいるんだなぁと思って舌を巻きましたね。
ー私も観に行って、同じ「弱いい派」という括りに入れられてても本当に全然違う作品が出てて。特にウンゲツィーファさんは私も初めて観たんですけど、「何だこれは!」って凄いびっくりしたんですよね。
山本 僕ら、「弱いい派」っていう風に言われて参加させて頂いたんですけど、最初のミーティングの時、企画コーディネートをされた徳永京子さんが「弱いい派というものでまとめることに私自身も抵抗がある。弱いとは何なのかは私もこれからしっかり考えていきたい」とおっしゃっていて。これが弱いい派ですっていうような決まりはなく、ただ、何か時代が、東京が、今この人たちを要求しているのではないかみたいなことをすごい感じられて呼ばれたみたいで。徳永さんもそうなんですけど、僕たち三団体も弱いい派って何だっていうところを今も考えながら活動してる感じですね。
ーなるほど。では弱いい派の話はこのくらいにして脚本についてちょっとお伺いしたいんですけども。よく山本さんの脚本で言われるのは、「 SF の世界」だったりとか「静けさ」みたいなものにフォーカスをしている、など。インタビュー(東京芸術劇場のサイトよりhttps://www.geigeki.jp/performance/theater276/t276-3/)にもそう書かれていたんですけども、お話は自分で凄い考えて生み出すのか、天から降ってくるのかな(笑)とか、どういう過程があってできるのかが気になります。
山本 天から降ってきて作品ができたらそれはありがたい(笑)なかなかそういうことはないので、やっぱり自分でどんだけ長い時間かけられるかですよね。まあ何してたって考えちゃうんですけどね。考えて考えて、そうしてたらもう悩んだら悩んだ分だけ町全体が全部作品に協力してくれるんじゃないかみたいな、それこそ天から降ってくるように何かアイデアがポっとそこに落ちているみたいな感じの生活ですね。
ーコトリ会議の本拠地と言うか活動している場所は関西なんですよね。
山本 そうですね。稽古場はだいたい大阪のどこかで取ってますね。ただ、劇団員は半分今兵庫県に住んでて半分大阪みたいな感じで。最近公演をする場所は兵庫県が多いですね。
ーツアー公演を毎年されてますよね。伊丹とか東京とか。
山本 今伊丹ってパッと仰りましたけど、東京の方って伊丹ご存知なんですか?
ーえー、地名は聞いたことありますけど。確かにイメージはそんな沸かないかも...
山本 地図で伊丹指してって言われてもわかんないですよね。
ーうーんってなっちゃいます。(関西の方、伊丹を愛する方々、世間知らずで大変申し訳ありません...)
山本 今兵庫県の劇団って名乗ってるんですけど、大阪では最近あんまやってないですね。
ー私、ずっと東京育ちで関西の演劇事情はあんま詳しくないんですけど、東京と関西の違いってあるんですか?
山本 それは若旦那さんの方が詳しいかと。
若旦那(実は最初から聞いててくださいました) やってる人口が全然違いますね。人口が多い分東京の方がバラエティに富んでいると思いますね。やっぱりちょっと派手だったりお笑いが好きな人が多かったりとかするので、コトリ会議はあんまり大阪でウケてる感じはしないけどね。よく寝られるから悲しいって山本くんは言ってました。
山本 微妙に照明とかも関西の方がちょっと明るめにしてます。
ーへー!そんな工夫が!
山本 本当に寝るんだよお客さん(笑)
ーコトリ会議さんの作品って、美術で言う現代美術みたいな感じがしてて。東京ってそういうもの(新しいもの)に理解がある土地じゃないですか。だからこそ誰にでも分かるものではない、理解に幅があるものも受け入れ易いのかも。そんな印象を受けてます。
山本 現代美術っぽいんですねコトリ会議。それは演劇とは違うんですかね。
ーいや、もちろん演劇ではあるんですけど、なんか現代美術って意味をそのまま提示するんじゃなくて意味があるあるようでないようで、その意味は自分で考えてね、みたいなものが多いんですよ。そういうのがコトリ会議にあるなって思ってて。演劇にも起承転結がしっかりしてるものとかストーリーが一貫されているものとかいろんな種類があるけれど、コトリ会議さんは解釈が無限大にできる、幅があると思ってるので、それで現代美術に近いのかなって言いました。
山本 よく役者さんから言われるのが、最初に台本を読んでもらった時に、結構どういう風にでも読めてしまうというか。この登場人物は今怒ってもいいし泣いてもいいし、逆にどうしたらいいかわからないと言うか、結構そんなことは聞きますね。
ーそれは山本さんが意識してるのではなく自然に脚本がそうなっているっていう感じなんですか?
山本 そうですね。書いてる方からしたらそんなにわからんかこれって思うんですけど、やっぱり難しいみたいで。結構この人は何を考えてるのか、とかそういった事を役者さんと一緒に話し合いながら作っていく感じが多いですね。
ーじゃあ稽古場は山本さんが仕切るんじゃなくて、みんなで話し合ってフラットに作っていく雰囲気なんですか。
山本 そうですねえ。とりあえずやってみてもらって。僕も結構天邪鬼なので、役者さんがすごくお客さんに伝わりやすいストレートな感じで演技をされた時に「そういう説明演技はいらないので、お昼ご飯を考えながらやってください」みたいな(笑)よくわかんない注文つけて作ってますね。
ーでは、今度次の作品の「スーパーポチ」についてちょっとお聞きします。8月14日に神戸公演が終了しましたが、上演してみて何か感触などありましたか?
山本 実はスーパーポチ、書いてても自分で演じていてもそうなんですけど(山本さんは今回作演に加え自ら出演もなさいます)、ぶっちゃけたところこれの何がおもろいのかわかんない、やってる自分もわかんない、みたいなことを思いながらやってました。だから物凄い不安というかもう諦めの気持ちで。そんなんでお金をいただいたら申し訳ないんですけど。これは果たして何と言われるんだろうと思いながらバンと上演してみたら、思いのほか「面白い」というふうにおっしゃっていただけて。あんまり関西で面白いって言われることはないんですけど。よく言われるのは、今までのコトリ会議よりちょっとテーマが分かりやすかったみたいですね。
ー神戸で分かりやすいって評判を頂けたなら、東京に来たらもっと評判になるかもしれないですね。
山本 そうなんですかね。東京の人たちって本当によく分からないので、「こんなのが好きなの?」とか「こんなとこで笑うの?」みたいな。関西のお客さんって全然笑わないですよね。で東京行ったらいきなりこんなとこでバッと笑われて(セリフの)間の取り方であれあれってなってしまったりとか。東京のお客さん分からないので、逆に分かりやすい演劇をしたら逆に「いやコトリ会議に求めていたのはそんなんじゃないんだよ」て言われるかもしれないですね。
ー2020年の東京公演が1回中止になってるんですよね。
山本 そうなんですよね東京公演だけ。「晴れがわ」という作品だったんですけど、伊丹公演と石川県の金沢でやった公演だけはできたんですけど東京だけ中止でしたね。
ー1年半ぶりの東京単独公演になるんですね。弱いい派から息つく間もなく公演って感じですけど大変じゃないですか?
山本 はい。せわしないですけど、ありがたいですよね。こんなご時世でできるんだから。今、上演できるか半々って感じですよね。緊急事態宣言も出てて。
ーでも、確かに危ない中で上演してますけど、東京の人たちって公演がやってれば観に行く意思はすごくある気がしてます。なくなっちゃったらそれは仕方ないけれど、やってるんだったら好きだし観に行こうって。コロナだから観に行くのやめよう、とまではなってない気がします。
山本 そうですね、東京の方々って演劇好きですね。この前の芸劇の時も、こんなに危ない時にお客さん観に来てくれるんだろうかと思ったら、客席がいつもの半分という事情はありましたが、予約がどんどん埋まっていって。東京の人ってすごいなぁ、演劇愛してるなと思って。そこは結構嬉しいと言うか感動するぐらいまですごいなと思いましたね。
ー演劇好きな人は自分だけじゃなくて他にもいるんだって私もめっちゃ思います。客席に座って他のお客さん見ると、こんなご時世でも演劇観てる人いっぱいいるんだ!って。
山本 あれは嬉しかったですね。
ー話せる範囲でいいんですが、スーパーポチのあらすじがあればお願いします。
山本 僕は福井県の出身なんですよ。福井県って田舎ですごい田んぼに囲まれた生活をしてたんですけども、作品の舞台は福井県の実家をほぼベースにして、僕がポチいう名前ではないんですけれども犬を飼っていて。中学ぐらいから飼い始めて大学で福井県を離れる時にワンちゃんは家に残して一人暮らしを始めるんですけど、そのワンちゃんとの思い出を書いたって感じですね。実家にも全然帰れないので、毎年正月かお盆には一年に一回帰ってたんですけどそれもできないので、せめて作品の中だけでも帰った気になろうと思って書きました。
ー作品の中での里帰りなんですね。
山本 昔の思い出を思い出してたら出来上がった作品です。
ーチラシにもちょっとあらすじが書いてあるじゃないですか。そのイメージと今聞いた話が全然違くて、ますますどんな話なのか分からなくなりました(笑)
山本 チラシのイメージで話をすると、今回のお芝居は「旅」って単語が出てきます。昔実家に住んでた頃はとにかく田舎が嫌いで外に出たくてたまらなかったんですよね。実際今もう外に出て兵庫県に住んでるわけなんですけど。住んでて生活してる実感というか、人とコミュニケーションとってる実感ってのはあるんですけど、なんかどこか実家にいた頃の自分とはちょっと違うふわふわした感じというか。そういうのを凄い感じていて。
ーそういう気持ちを作品にまとめたって感じですか。
山本 故郷って福井県のあそこなんだなーっていうのを実感するように最近なってて。それは年をとったからかもしれないですけど。本当に、人生って旅だなあ〜って思っていて、そんな事を考えながらそのチラシの文章を書きました。
ー山本さんは稽古を重ねていくうちにどんどん台本を書き換えていらっしゃるっていうの聞いたんですけど、それは今回もですか?
山本 そうですね、早速どんどん書き直して神戸公演からはだいぶ違うことになってるので。
ーじゃあ神戸と東京では全然違う作品が観れるんですね!
山本 流石に登場人物とか舞台とかはそのままなんですけど。シーンが丸ごと変わってたりとかありますね。
ー何か面白いですね。神戸で観た人と東京で観た人が違うものを観てるって不思議。
山本 よく感想でも、東京公演の感想が上がった時に神戸で観た人が「え、こんなシーンなかった!こんなシーン知らない!」とか結構ありますね。だから神戸で観た人もまた来てくれたら面白いと思いますね。
ーちょっと制作的な話になるんですけど、この前スーパーポチ申し込んでびっくりしたのが、18歳以下が500円だったんですよね。いいんですか(笑)
山本 まぁそこら辺の値段設定は若旦那さん(制作)が仕切っているのであんまり僕は関与してなくて。僕自身とか若旦那さんもそうなんですけど、あんまり演劇で儲けようぜみたいなことは考えてなくて。そこら辺は賛否両論あると思うんですけど。本当だったら僕はタダでいいじゃんみたいなこと思っちゃう人で。何だったら、いつか全くお客さんのいない砂浜とかで上演するみたいなことがやりたいとか(笑)そんな事を若旦那さんにぶつけてて。そういったところを若旦那さんが反映してるのもあるかもしれないですね。
ーへえー、砂浜で。
山本 砂浜で。楽しいと思うんですけどね。どこでやるかは何も言わずにただやってきました報告だけみんなにするって結構、楽しいな。
ーいや絶対楽しいな。
山本 でしょー?
ー観に行きたいと思っちゃうけど観に行ったら違うんですもんね。
山本 ねえ、難しいですよねえ。やったらやったで観に来て欲しかったなって思うんでしょうけど(笑)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
インタビューは全くの未経験でしたが山本さんが気さくにお話ししてくださったのでとっても話しやすかったです。本当にありがとうございました!
[東京公演]
9/23 (木) ~ 9/27 (月) こまばアゴラ劇場
チケットはこちらから↓
こりっち https://stage.corich.jp/stage_main/92289
チケットぴあ https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2115961
ローチケ https://l-tike.com/search/?lcd=34485%2C53844
おすすめはこりっちです。当日精算で手数料が無料でした。
今後もこの企画はシリーズ化していく予定で、近日中に第二回もアップする予定です。お見逃しなく!
関口真生
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?