帰省の夜
秋虫の鳴き声が好きなので、東京の一人暮らし部屋ではこの動画を流しながら寝ている。
これがとっても落ち着く。なぜかというと長野に住んでいた頃ずっと聞いていた音だから。
東京ではまだ秋の音は聞こえない。
毎年8月13日は早朝に祖父母とうちの家族でお墓参りに行く。
お墓が山のほうにあって、祖母は私の腕を杖代わりにして転ばぬようにゆっくりと歩いた。その姿が、ずっとそこにいるとは限らないことを感じさせた。けれど私の腕を掴む力はたくましくて少し安心。あと10年は一緒に生きていてほしいとご先祖様にお願いした。(日頃の感謝もちゃんと伝えた)
そのあとはお互い家に帰って、夜ご飯の時間に再び祖父母の家で集まった。そして、かっぱ寿司をたらふく食べた。寿司は絶対かっぱ寿司。これも毎年恒例。
ひとしきり食べ終わって各々話している時に祖母が、
「60代から70代の記憶が全くなくて、もう80歳かと驚いた」と言った。病気的に記憶がないとかではなく、本当に時の流れが早かったみたい。でも私との思い出は覚えているんじゃないかと、私の小学生時代を聞いてみた。すると、すらすら思い出を話してくれた。
「小学生の時も、中学生になってからも、熱を出した時に学校まで迎えに行ったことあったよね。
そういえば〇〇ちゃんがブラスバンドで演奏会していたの毎年見に行ってたな〜
中学は運動公園にソフトテニス見に行ったね。
高校は、、、弓道か。弓道も一回だけど見に行って応援してたよ。」
というような感じで、私が忘れていた思い出まで全部話してくれるから泣きそうになった。なんだ、ちゃんと覚えているじゃん。
父方の祖母は認知症でおそらく私のことを忘れている。だからこそ、今回会った母方の祖母が私との思い出を今もずっと覚えてくれていることがうれしかった。それと同時に今まで計り知れないほど、めいっぱいの愛情を注いでもらってたんだと気がついた。
帰省は案外いいものなのかもしれない。毎年数回しか会えない祖父母にもらいっぱなしの愛情をどう返していこう。そんなことを考えながら、いつものように寝ようとしたら、長野ではもう秋虫の鳴き声が聞こえ始めていた。
今日は、今日だけは、YouTubeを流さずに安心して寝れるんだ。やはり帰省はいい———。
うーんそうじゃなくて、自然が近くにあって、大切な家族や祖父母がいる長野という故郷が好きなんだ。そう気づけた帰省の夜。