千鳥のどういうお笑い⁉はどういうお笑いなのか?
きのう、『千鳥の路地裏探訪』という番組をみた。
千鳥が路地裏を歩いてクセのある場所を探したり、
そこに住む人を“深掘り取材”していく、街ブラバラエティー!
※番組公式HPより(画像出典も同様)
「熱海」の回で、様々な場所や人・グルメを紹介していた。海をおとずれるシーンがあり、大吾(画像左)が服をきたまま唐突に海にと飛び込み、ノブ(画像右)が「どういうお笑い⁉」というツッコミを入れるくだりがあり、ケラケラと笑わせてもらった。
この、海(水)にとつぜん飛び込む→どういうお笑い⁉
の流れは彼らの定番のネタとなっており、他の番組でもよくみかける。ちょっと前は日本テレビの「笑神様は突然に・・・」で、2017年キングオブコント王者「かまいたち」たちと一緒におなじくだりを繰り広げており、これもとても面白かった。
きのう見て、思ったんですね。
なぜ「どういうお笑い⁉」は面白いんだろう?
明日のライターゼミ第一回講義で教えてもらった
『すべての新しさは歴史の線上にある』
『アイデアの因数分解』
をつかって考えていきたいと思います。
アイデアの因数分解含め講義内容のレポートも書いていますので、いっしょに読んでもらえるとよいと思います。
■お笑いの当たり前を壊す唐突な飛び込み
『どういうお笑い⁉』は2つの要素で成り立っています。
【行為】海(水)に突然とびこむ
【言葉】どういうお笑い⁉
まず【行為】について。
海(水)に飛び込むという行為は今までのお笑いにも存在しています。
■ダチョウ倶楽部に代表される「押すな、押すな絶対に押すなよ」という合いの手から、押されての飛び込み
■クイズの不正解の対決の罰ゲームとしたの飛び込み
■すでに飛び込んだ人をひっぱり上げようとして、逆に水のなかからひっぱられての飛び込み
■「とんねるずのみなさんのおかげでした」の企画『水落オープン』に代表される、予期せぬドッキリとしての飛び込み
いずれも「自らの意思とは関係なく水に飛び込む(落ちる)」わけで、その悲劇性(かわいそーw)が笑いの要素になるように思います。水から顔をあげた時の表情やリアクション、ずぶ濡れの姿が笑いを誘うわけです。
一方、『どういうお笑い⁉』はそうではない。
自らの意思で唐突に海(水)に飛び込む。そして上がったあとは「海が好きだから」「飛び込みたかったから」など、かわいそうとは無縁にあっけらかんと答える。
「この人なにしてんの?おっかしーw」みたいな感じだろうか。
明らかにこれまでとパターンがちがう。だから、新しい。
でもこれ、先人たちが作り上げた、「他者から無理やり行われる飛び込み」があり、その歴史と比べてはじめて新しいといえるわけです。講義のなかで大谷翔平の二刀流の凄さが語られるのはべーブ・ルースとの比較があってこそだ、という例えもでました。先人たちの積み重ねた歴史を知り、そこにないこと、そこより優れてはじめてあたらしい価値となるのでしょう。
ここから公式化するならば
『歴史を知り、壊してこその新しさ』
という感じでしょうか。
■言葉の力で新しさを「意味不明」にしない
つづいて、
【行為】海(水)に突然とびこむ
【言葉】どういうお笑い⁉
の【言葉】について。
唐突な飛び込みは新しい。と書きましたが、新しいことはえてして「意味不明」になります。見ている側にも「飛び込みは無理やりやれらてそのリアクションを楽しむもの」という当たり前がインプットされていますから、その展開を想像するはずです。しかし、そうならない。唐突に自ら飛び込みます。多くの人の頭には「??????」が出るはず。何なら、このひと大丈夫か?くらいに思って笑うどころではなくなるかもしれない。
そこで、『どういうお笑い⁉』という言葉の出番。
見ている人側にたったノブが
(わたしたちの知っているお笑いでは誰かに無理やり飛び込まされるものでしょ、その唐突に自ら飛び込むってのは)
どういうお笑い⁉
と言うことで見ている人は、
ああ、当たり前を分かったうえであえて裏切ってきているんだな。ということがわかり、安心して受け入れることができるのではないでしょうか。
たった8文字の言葉が、お笑いの歴史という線上に見ている人を引き込み、その目線で楽しませてくれるのです。
よい企画・コピーというのは、
「当たり前」と「意味不明」のあいだに存在する。
と教わったことがあります。
【行為】海(水)に突然とびこむ
【言葉】どういうお笑い⁉
は2つセットになることで、当たり前と意味不明の中間にある絶妙なバランスの面白さになるのです。漫才コンビの2人ならではの芸ですね。
公式にするならば
『当たり前じゃ意味がないし、意味不明じゃ伝わらない』
でしょうか。
千鳥の「どういうお笑い⁉」はなんで面白いのか?をつらつらと考えてみました。
ただ面白がるだけでも十分だと思いますが、こうして書いてみることでより深く楽しむことができる、なんて思います。
つぎ「どういうお笑い⁉」を見たとき、
そういえばあんなこと言ってたけどたしかにそうかも。
なのか、
いやいやそれは違うでしょ。でもなんでもいいですが、
少しでもなにかを感じてもらえたら嬉しいです。
それはわたしの文章で、誰かのものの見方を少しでも変えることができた証になると思うので。
サポートありがとうございます!ありがたく受け取ります。次の映画評のための映画鑑賞、資料購入に使わせてもらいます。