どうしていつもこうなのか
今朝起きると右目に違和感を感じた。痒さと共に異物感がある。洗面所へ行き、鏡で自分の姿を見た時にゾッとした。右目の白目が、赤く膿んでいるのだ。直ちに眼科へ行かねば。しかし、手元の時計は十一時を指していたため、午後から医者にかかることにした。取り敢えず、暇を潰す為に、ff14にログインしてメインクエストを進める。その後、昨日買った星野源のエッセイを読む、恋人と通話をしながらマインクラフトをする、和訳がされていなく、英語で書かれている故毎回読むのを後回しにしていたDoris Lessingの著書を読む。……。変わらず右目は痛痒い……、そうだ! 私は今、右目が赤く膿んでいる、そのため午後から医者にかかる予定だったのだ! 完全に忘れていた。予定まで時間がある時、その暇つぶしに何かを始めてしまうと、予定を忘れてしまう悪癖がある。そもそも、私は忘れっぽいのだ。
去年、私がまだ高校生であった頃、私は多くの物を忘れた。課題の提出・模試の振込・京大模試の受験……。特に、京大模試の当日、模試があることをすっかり忘れてしまい、高校がはじまった時担任にテストの結果を聞かれ、その時初めてその存在を思い出したことがある。私は私の記憶力を呪った。「忘れた」と、言った時の、担任の呆れ顔ときたら! 生活に関することはすぐに忘れる割に、担任の、私のことを軽蔑するような、あの表情は、いまだに鮮明に思い出せることが始末に悪い。
しかし今日はなんとか思い出せた! 保険証と、診察券と、お薬手帳を手提げ鞄に入れて家を出る。もちろん財布とスマホは持ったし、家に鍵もかけた。
万全な状態で家を出ることができたのである。
病院に着き、看護婦さんに病状を伝える。お薬手帳に挟んである保険証と診察券を渡し、お薬手帳をポケットへと入れる。
診察が始まる。どうやらアレルギー性の腫れであり、目薬を挿せば恢復を見るようだ。一先ず安心。会計時に薬を受け取り、病院を後にする。
車に乗る、そこで私は異変に気づく……。
お薬手帳が、ない。来る時は手提げに入れていたお薬手帳が失くなっているではないか! 急いで車から降り、待合室に入ると看護婦さんに呼び止められる。私は事情を彼女たちに告げた。
失せ物は受け取ってないと言われる。待合室、廊下、そして診察室を確認する。やはり手帳は落ちていない。……。その時私は思い出した。
私はお薬手帳を自らの手でポケットに入れていた。
ひどく決まりが悪い! 私は伏目になりながら看護婦さんたちにその事実を告げ、心から謝罪をした。しかし、最後まで彼女らの顔は見れなかった。おそらく、呆れ顔だろう。冷めた顔をしていたであろう。私の顔は熱していたというのに……。
どうしていつもこうなのか。頭が悪いのか? だから大学受験に失敗して無職なのではなかろうか? 責任者はどこだ。私の物忘れの責任者がいれば、今すぐ出てきていただきたい。私の人生の、物忘れによる失敗の責任をとっていただきたい!
物忘れが原因の失敗を、他にも具体的に挙げてみろって?
……、そんなもの、忘れてしまったよ。