笠井さんと私 #1
笠井さんを一言で言い表すと「破滅的」な人だった。
5年前、私がまだ高校生で笠井さんは大学生。近所のコンビニのバイトの面接で一緒だった彼は、一緒に合格したのに一回も出勤しなかった。
バイトの面接はすごく機械的に進み、「週何回入れますか」「経験はありますか」だのシンプルな質問をいくつか聞かれただけで、私たちの採用はわずか5分で決まった。思えばクリスマスやお正月を控えた11月のことだったから、人手が徹底的に足りなかったのかもしれない。
その面接で、笠井さんは「髪型は自由ですか?」とだけ質問して帰った。その質問に店長は「はい、自由です」と答えたのだけど、今日まで私は奇抜な髪型をした笠井さんを見たことがない。出会ってからずっと坊主に近いショートヘア。私は、彼が時々バイクに乗せてくれたときに見れる襟足のジョリジョリが好きだった。
いつまで経っても笠井さんがこなかった私のコンビニ初出勤のあの日、私は初めてキスをした。
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