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どうでもいい話(2022年 6月分)


セカンドハイスクールライフ⑤

前にも ちょろっと書いた学校行事、年一回のスクーリング。
毎年 北海道に行けるのが、楽しみで楽しみで しかたなかった。

なんだけど、どうにも記憶が混同して 一個にカテゴライズしてまって、部分的に時期が分からん…
三回分、まとめて書いちゃおうと思う。

─飛行機の思い出─

これは二年かな。
私服可なので 私は制服のツナギでなくて、お気に入りの フード付きニットパーカーに ジーパン、ニット帽を被ってた。
飛行場で 付き添いの先生方と学年全員 合流した。

皆一列になって保安検査。

手荷物をトレーに移し、金属探知機の大きなゲートを通る。
ゲートの下に入った瞬間、アラームが鳴り、赤ランプが点灯した。

あわわ!?金属類 残ってたか!?

ゲートを引き返した。
思い当たるものと言えば、ピアス?ベルト?あとは…

私はニット帽を脱いだ。
当時なんだかハマってた、髪留めのパッチン多数、めっちゃ髪型キメてた。私なりに。

頑張ったのに…

早起きして沢山 留めたパッチンを、全部 外してトレーに乗せる。
ゲートを くぐれば、再びアラームに点灯。

ええ!?もう何も着いてないよ??

後方で控える学友達が爆笑するのを尻目に、保安係の方に 輪っかに柄の付いた 手持ちの金属探知機を、体の前面・背後・股間 にかざされた。
特に反応は無い。
もう一度、ゲートを くぐってみる。
やはりアラームは鳴り点灯する始末。

今度はボディチェック。
保安係の方に身体中 はたかれ、危険物は持って無い、と判断してもらえた。

一体 何が原因なんだろう…

ゲートの すぐ先の壁に寄りかかり、パッチンを適当に髪に留めながら、先生方が通るのを眺めた。
学校と同じ先生用のツナギに身を包んだ先生方。
軒並み、金属探知機に引っかかった。
慌てふためきながら、ボディチェックを受ける先生。

面白えw

こんな光景まず見れない。写メっとこ。

私は携帯をパカッと開き、カメラを立ち上げ構えた。

「ダメだよ!」

突然、保安係の掌でカメラを塞がれた。

え、何で?

「機密情報 有るから、撮影禁止!」

見れば確かにゲートの周囲には、モニターやら検査機やら 精密機器が並んでる。

あ、そういう事か。
裏側は撮っちゃダメなんだ。

軽く謝罪し、携帯を仕舞う。

勉強になりました。悪気は無かったんですよ。

私自身は 飛行機に乗るのは 数度目。
まだLCCの無い時代。

上昇してシートベルトサインが消えれば、お飲み物タイム。

キタキター♪

わくわくしながら、一列一列カートを押して配膳する 客室乗務員を待つ。
コーヒー・ジュースなんか が有ったと思うけど、私の注文は決まっている。

「スープ 下さい!」

一択。やや巻き気味に即答。

小さめの紙コップに注がれた、湯気の立つスープに鼻を近付ける。

うーん、いい匂い。

いやもう、すんげえ美味いのよ。飛行機のスープ。

何の変哲もないコンソメスープだと思うんだけど、めちゃめちゃ美味い。
米に掛けて食いたい。

こんな小さな紙コップじゃ足んない。長靴いっぱい飲みたいよ。

新千歳空港に降り立てば、再び金属探知機ゲート。
怖々くぐると、やはり アラーム音が響き 点灯。

「安全靴だね」

保安係の方に指さされ 見下ろせば、実習で傷つきまくった黒皮の つま先。

ああー、こいつだったかー!

安全靴を脱いでトレーに乗せ、靴下で金属探知機を通れば、難なくクリア。
当時は「ブーツは脱ぐ」という決まり無かったもんで。
私服にショートブーツの安全靴だなんて、紛らわしいコーデしてて スンマセン。

先生方も安全靴を脱いだら、引っ掛からず通れました。

─大自然の思い出─

初めて北海道に立った一年。

空港から本校まではマイクロバス。
揺られ 風景を眺めた。
どこまで続くんだ、という 広大な平野。
地平線の彼方には、淡くなってる山脈が ぐるっと取り巻いている。

おおお、山だー!

山には凄くテンションが上がる。

なんせ、私は埋立地育ち。
ビル群に囲まれ、雑草茂る開拓中の平原は見慣れたものだが、山が無い。
彼方には海の水平線しか見た時無い。
見渡す限りの 平野の末が “山” だというのは、衝撃だ。

これで青空だったら、感動も更に ひとしお だったろうに…

こういう時 大抵 私は晴れるんだけど、学友か先生か 雨男が紛れているらしい。
梅雨は無いはずの 初夏の北海道、どんよりと降りた雲は 厚く太陽を遮っている。

連日、晴れ間 無い。

現地スタッフの話だと、この時期に 晴れない だなんて、大変 珍しいらしい。
初夏は太陽は心地好く、気温も湿度も低くて 過ごしやすい気候なんだそう。

こんな曇天。ある意味、ラッキーなのかも。

山の名前は忘れてしまったけど、ハイキングコースの整った山に登った。
山肌に遊歩用の板が張られ、眼下には 背の低い高山植物や 可憐な蓮華草。

綺麗だなー…

なんだけど、寒い。
風景を楽しむ どころじゃない。

初夏だが 一応、薄手の長袖パーカー 持って行ってたけど 標高高くて、凍える。
両腕をさするが、震えが止まらない。

寒い、寒 過ぎる。
この寒さ、なんなの…

北海道、ナメてた。

─本校の想い出─

本部は移動したらしい本校。

使わなくなった 旧校舎を、全国の系列校向けに 宿泊施設 として、軽めに設備を増築し 校舎は ほぼそのまま、解放していた。
当時でも まず見ない、古びた木造校舎。
地震で 倒壊しそうな程、古い。
ズラリ屋根からかかる、黄色いハンカチが お出迎え。

「高○健!」
「山○洋次!」

まるで映画のワンシーンに入り込んだ錯覚に、私も先生も大はしゃぎ。
映画話に花が咲く。

「先生ぇ、まだあ?」

ハッとして、背後を振り返った。

大荷物を地面に置き、地べたに座り込む学友達。しらーとして、誰一人として感動してない。

もの凄い世代の壁を感じた。

空き時間に 旧校舎内を 独り散策。
だって珍しいじゃない。木造校舎なんて初めてだもの。

わくわく しながら、ギシリギシリ きしむ床板を踏み歩く。
キョロキョロ と廊下を進み、いくつか 教室を通り越した。

壁に手を当て さすってみる。
年季の入った 年輪の浮く 木板の感触は、案外と滑らかだ。

なんか、あっちの方 暗くてヤだな…

目前の廊下の先は薄暗い。

節電のため、使われていないエリアは電灯が点いていない。
採光が悪いのか、昼間だと言うのに 夜のように暗く見える。

まだ昼だし。

好奇心の方が勝っていた私は、そのまま歩み続けた。

二階に上がる階段が見えた。

上は何だろう?

階段を上がろうと、廊下を曲がった。
突如、私に覆い被さるほどの大きな影が現れた。

ぎゃああッ出たああぁ…ぁあ??

よくよく見れば、お化けでは無い。
2mは あろうか、大きなヒグマの はく製だった。

スゲー、スゲー!でけぇ!

小さな前ならえの姿勢で固まったヒグマは、ケースにも入ってない。

触って良いのかな…

こういうの、とにかく触りたいタチなもので。

ヒグマの掌には クリームパンみたいな 大きな黒い肉球。
つついてみる。

…結構、硬いんだな。

ニャンコの肉球とは雲泥の差だった。

しばらく見上げ思いを馳せる。
何でこんなものが学校にあるんだろう。ハンターでも居んのかな。
せっかく本物のプ○さんだ。やりたいじゃん、アレ。

私は背伸びをして、ヒグマに 抱きついてみた。
三日月模様の入った胸毛は、案外と剛毛だった。

──なんか、思ったのと違う。

ヒグマ越しに階段を見上げてみた。
小窓は在るが、ガラスは曇り光が弱い。

……上は、止めとこ。

恐怖が勝った。
宿泊施設は 過去学生達が勉強しただろう、教室だ。
真ん中に壁が一枚 増設され 二分割。中には二段ベッドが6機。12人部屋だ。

oh…

教室が当時の まんま 使われているので、黒板なんかも そのまま残っている。

剥がしたら壁の修繕 大変だしね!

いや コレ、かなり怖かったんだ。私的には。
小さな学校だから、学年の人数は少ない。お部屋を悠々使える 少人数の班 構成。

しかも なんか知らんが、私だけVIP待遇な一人班。

いっそ先生方とか スタッフさん達と同じ部屋で良いよ!!

と 思ったのは、内緒だ。

学校に一人で寝泊まるんだよ、怖過ぎでしょう。
ふんるい 木造校舎なんだよ。
夜のうちは学友が 私のお部屋に遊びに来たりしてたけど、皆 眠くなったら帰っちゃうし。

とりあえず 二段ベッドの階下に空間が存在するのは怖かったので、黒板側の端の一階に横になった。
黒板も離れてて見えちゃうと、何か映りそうで嫌だったもんで…

草木も眠る丑三つ時、暗いベッドで目が覚めた。

ヤバ、おしっこしたい…

皆 寝静まっているだろう時間に、尿意だ。しかも、夜トイレ怖くて寝る前に行けず、限界値だ。

い…行くしか…

この歳で漏らす訳にはいかん。
いい歳して「トイレ怖いから誰か付いてきて」なんて、隣室に声も かけられない。

私は勇気を奮い立たせ、立ち上がった。
恐る恐る引戸を開けて 廊下を確認。
蛍光灯は一応 点いていたけれど、光量は弱く 端々まで照らされていない。

ごくり…

抜き足で廊下を進む。度々ギシッと きしむ床に身が すくむ。

時間を掛けて どうにかトイレまで行き着いた。
流石にトイレは改修されて いたものの、造りは普通に学校のトイレ。

鏡 怖い!窓 怖い!

確か、三番目の個室はダメなんだよな…そんな学校の怪談が頭を よぎっていく。

窓の外は真っ暗闇の大自然。
ガラスに写った自分の姿にさえビビる。

用を足し終えば、戸をバシンと閉めて猛ダッシュで逃げ去りたい、気持ちをグッと こらえた。

だって、恥ずかしいじゃない。
足速に お部屋に戻り戸を閉めきれば、ホッと一安心。

よかった、何も無くて…

ベッドに座り、毛布を たぐった時に、気付いてしまった。

黒板の下の余白の白塗りの壁。
そこに、黒い中太な文字が。

『助けて』

ひいいいいぃ!!!

私はベッドから飛び上がって頭を強打した。
それどころじゃない。
大慌てで斜向かいのベッドの はしごを駆け上り、だいだい色の重たい毛布を 頭まで被った。

成仏してくれぇ(号泣)

そのまま朝まで 眠れませんでしたよ。

誰かのイタズラか 他校でイジメでも あったか、どちらにせよ悪趣味。
今思えば、隣室に泊まりに行けば良かったんだ。
ベッド空いてたんだから。

─VS羊の想い出─

「捕まえに行こう、羊!」

──は??

なんか阿呆な事に誘ってきたのは、学友ではない。

普通学科の教鞭をとる、引率の男性 教員 二名。
整備の補佐もするから、先生用のツナギだ。

二人共まだ二十代かな。
私とは歳が近い。生徒と先生 よりは、きょうだい みたく仲良が良かった。
日が傾きかけた晩飯前。腹ごなしのつもり なんだろうか。

何のハントだよ。

懐中電灯片手に、途中すれ違う学友にも声を掛けつつ、木造校舎の外に出る。
やはり馬鹿にされ、付いてくる者は少なかったな。

ターゲットは 流石に 野生の羊ではない。
本校の広い敷地の片隅で飼育されていた、数頭の羊。
胸の高さの ぐるりと取り巻く、牧羊の柵。
季節柄か、育ちに育った雑草類は 部分的に 腰まで伸びていた。

夜露が降りて しっとりと、むせ返るような 青草の香り。
自然の息吹を感じる。

楽しそうに柵を乗り越える、教員 二名。
本校のスタッフにバレたら お目玉なので、内緒だ。

羊達は警戒した。
私は柵に両肘を置き、懐中電灯を構える。
珍入者に 逃げ惑う羊達。正直、可哀想…

「そっち行ったぞ!」
「後ろ、茂みの中!」

大騒ぎしながら 暗がりで羊を追い立てる教員二名は、さながら統率のとれない 牧羊犬。

私は羊を照らしつつ、あっちだ なんだ、思いながら眺めてた。

全然、捕まらない。
飼育されているとはいえ、そこは動物。優れた身体能力には、人間は足元にも及ばない。

追われ続けた牡羊に、カチンとスイッチが入った。
ドフッと 腹に強烈な頭突きを食らって うめく教員。

そりゃもう 私は、腹を抱えて大爆笑。

え?私ですか?
もちろん、手伝いませんよ。こんな 無益なハント。
気持ちは完全、お馬鹿な事ばかりしでかす 馬鹿息子達を見守る、お母さん。

と 言うのは建て前で、あんな うっそうと密集した雑草。
分け行ったら最後、ひっつくこと確定じゃないですか、ヤツらが…嫌じゃん。

ボロボロに なり、戦果無く終わった教員二名。
捕まえて、何する気だったんでしょうね。

─女学生の想い出─

一日だけ、他校と宿泊期間が被った日があった。
共学らしい高校は、女子の比率が高めの大所帯。

久方に聞いた 女子連の「わあー♪ きゃあー♪」黄色い声。

こちとら むさ苦しいほどの男所帯。
ドキドキしちゃいますよね。女子だよ!JKだよ!

まだJKなんて言葉 無かったけど。
青春 真っ只中の、若き学友達。突然の女学生らの出現に、当然 色めき立つ。

誰か声掛けねえかなあ。

目の前で繰り広げられる学園ラブコメディな光景を期待した。
私は長テーブルに肘を着き、学友達に「行け行け」と念を送っていた。

15歳の少年少女が繰り広げる、胸キュンな“萌え”に飢えてたんだ。

「あのコ、可愛くない?」
「俺は あっちのコだな」

いっちょ前に品定め しおってからに。

「お前、声掛けろよ」
「ヤダよ、お前 行けよ」

お互い どうぞどうぞ、と なすり合い。
気持ちは前のめり なのに、皆 腰が引けちゃってて 可愛いなぁ…

普段ツッパっていても、中身は ウブなシャイボーイ。
誰一人として、声を掛けずに終わってしまった。切ない。

え?私ですか?
挨拶くらいは普通にしましたよ。
流石に、成人近い私が 15歳引っ掛けるのは犯罪でしょう。
教員だと思われてたし。

と 言うのは建て前で、私にだって そんな大それた勇気無い。
こちとら中身は ただのオタクなんですから(泣)

─芝刈りの想い出─

昼の空き時間、校舎裏で K先生 M先生 理科教員が集まって、ワイワイやってた。

何やってんだろう。

楽しそうだし、気になるじゃん。

校舎裏に出れば、やはり季節柄 伸びに伸びた 背の高い雑草の茂み。
結構な範囲 裏庭を占めている。

先生方の足元の地面には 芝刈り機 が3台。
聞けば、男手の少ない本校のスタッフさん方に代わり、毎年 雑草群を刈っているのだそう。

なんて紳士な心意気。

ホロリときた。

これは私も ひと肌 脱がねばな。

軍手を お借りし、意気込んだ。

虫なんか、怖くないぞ!多分…

とはいえ、芝刈り機なんぞ使った時 無い。
人数的には 機数が足らん。
刈り落ちた雑草を拾い集める係かな。
なんて、勝手に自分の役割を位置付けていた。

「○○、やってみるか?」

──はい??

先生に指さされたのは、地面に横たわる芝刈り機。

公園整備なんかで見た時有る方も多いだろう、小型のエンジンから伸びる長い軸の先に ギザギザ円盤の刃が付いた、アレだ。
円刃の付いたのは 1機のみで、残りの2台は 軸の先に刃が無い。

「これ、刃が無いのは 壊れてるんスか?」

疑問に思った事は、即座に口から出ちゃう性分な、私。
整備科の教員らだ。芝刈り機も 直したりするのかな。
替え刃を着けるのかと思い、先生に尋ねた。

「違う違う。刃が無いタイプなんだよ」

え???
刃 無くして、どうやって草を刈り取るの???

先生は丁寧に 芝刈り機のしくみ について、ご教授を始めた。

金属の円刃の付いたブレードカッタータイプ。
刃の無いのはワイヤーカッター。
目の前の芝刈り機は、この2種類。

見れば 刃無しタイプの軸の先には、極太のピアノ線の様な白いワイヤー。
ワイヤーが回転することで、金属刃に代わり 草を断ち切るんだそう。

ほおお、芝刈り機にもそんな違いが!奥が深い!

40cm程のワイヤー位置を調整して中心を取り、回れば代替40cm刃の完成。

原付みたいな小型エンジンに ガソリンを補充し、スタート用のワイヤーを強く引けば、ドルンッドドドと始動。
金属刃は重たいので、2kg位 軽量なワイヤー芝刈り機を手渡された。

ハンドルを下腹にくっつけ本体を支え、軸の先を少し浮かせて ポチッとな。

高速回転するワイヤーは目視出来ない。
かろうじて 風圧で舞う砂や、切れた草で存在が分かる。
背の高い雑草群に先を入れてみれば、スパパッと刈れ行く。

ほおおぉ、面白ーい!

まるで デジ画を 消しゴムで消すかのように、ワイヤーの直径分 雑草が落ちる。

「○○!足とかスパッと切れるから、気をつけろよ!」

それ、先に言って!

M先生の注意喚起に、某推理漫画 御用達のワイヤーギミック、ピアノ線でスパッと首が はね落ちた画が浮かんでしまった。

スパッと逝ったら 怖いじゃんか…(泣)

それでも段々と使い方に慣れていき、目前の草は あらかた刈ってしまった。
隣を見れば K先生の進みは私の倍以上。

流石、先生となると出来が違うもんだなぁ…

他に やっつける箇所は無いだろうか。
辺りを見渡し 背後を振り返り、目に入った光景にハッとした。
せっせと独り、刈れた雑草の山を こさえている、M先生の姿。

──そんな雑用、本来ならば わたくしめ の役目!
あああ…私が先生の仕事を奪ってしまったばっかりに…!

思いはしたが、私に芝刈り機を経験させたい 先生の親心なのか、とホロリ涙を呑んだ。
気づいてましたよ、M先生が頑張ってたこと。
なんやかんや 学友もちらほら手伝い始め、私も芝刈り機を他の子に渡し、草山作りに精を出した。

ふうう、終わった終わった…んんん??

皆で お片付け。その時、気付いてしまった。

K先生が使っていたワイヤー機。
ワイヤーの遊びが5cm位…だらんと伸びた主線は軽く30cm超。

K先生…改造してたな。

単純計算で 私が使ってたワイヤー機より 刈り取る範囲が広い、60cm刃。
そりゃあ、サクサク芝刈りが はかどるというもの。

温厚そうな見た目に反して ワルなんだから…

K先生、ちゃんと元に戻してから仕舞いましたか?
他の方が使う時、危ないでしょうよ。

私と芝刈り機の縁は、ガッツリ結ばった。

─キャンプ場の想い出─

少し時間は巻き戻る、お天気の良い初夏の放課後。
帰宅しようと思ったしな、先生方が実習場前に集まり、何やら工作していた。

何やってんだろう?

もちろん、覗きますよね。駐輪場目前で、バイク出すのに無視出来ない位置だし。

かたわらに積まれた一斗缶の山。
塗料や オイルや シンナーの、消耗品が入っていた空いた一斗缶。これ、凄い出る。
実習場の片隅に うずたかく積まれていた一部の、比較的汚れの少ないものだ。
私が降りた時には、既に洗浄されていた。

「○○、時間有るなら 手伝ってけ」

「何やってんスか?」

「これな、かまど作るんだよ!」

今でこそキャンプブームで調理器具をお手作り、なんて良くあるけど、当時はそんなの自分で作れるなんて考えもしてなかった。

工作大好きじゃん。作って遊びたいじゃん。

ぽかぽかに温まった一斗缶の一つに腰を据えた。
黒マジックで雑に切り取り線を書いた一斗缶と、金属用のハサミを受け取った。

おおお、これが噂の金属も切れちゃうハサミか!

道具の方に感動しちゃうのも、また私。

キッチンバサミ位の軽いハサミなんだが、一斗缶の厚みが切れるんだろうか…

半信半疑のまま、一斗缶の蓋部分に三角缶切りで、側面の くり抜き線には刃先が入る程度に 釘で穴を開ける。

いざ、チャレンジ。

なんと!スッスとハサミが進む!
手応えは厚紙を切ってるくらいだ。

何このハサミ!超 欲しい!

日常には使い道 無いんですがね…ホムセン行くと 今だに眺めちゃいますよ、欲しくて。

上部に穴を4つ開け、太めの針金を十字に渡して 五徳代わり。

あっという間に 十数機の かまどが完成した。

K先生が「完成したー!」と声を上げた。
独り一斗缶と にらめっこして、違う工作をしていたらしい。
ほくほく満面の笑みで見せてきたのは、側面穴に観音扉の付いた かまど(?)

なんかクオリティが違う…

私作の 量産かまど が恥ずかしい。

座り心地好かったもんで、一斗缶 一つ貰って帰りました。

戻って、北海道。キャンプ場に皆でバス移動。

早速始めるのは、炊き出しだ。
晩御飯のメニューは アウトドア定番、カレーライス!

うわ~い!カレー大好き♪

火起こし・食材切り分け・飯ごう炊き、班に別れて作業開始。

さて、私はどこに行こう…
飯ごうは中学でやったな。包丁も毎日使ってるし。

「○○、とりあえず食材切り方、教えてきて」

プラプラ悩んでいたら、先生から指示が飛んで来た。

おっとぉ、私 教える係なんだ。

キャンプ場の一角にある炊事場。見れば学友達が包丁片手に大騒ぎ。

「人参どうやって切んの!?」

「じゃがいもって皮むくんだっけ!?」

「玉ねぎ何枚むいたら良い!?」

えぇー…これ教えんの大変そうだなぁ…

「○ちゃん、○ちゃん!どうしたらいい!?」

うん。イケメン諸君の為に ひと肌 脱ぎましょう?

教えを請われれば、野郎共 皆 可愛く見えるもの。
腕を まくり、私は今から家庭科の先生だ。
自分で役付けて入りきる。

うん、ノせられやすいですね…自分。

人参・じゃがいも・玉ねぎ、にざっくり人員を分け、じゃがいもを洗わせている間に、玉ねぎを むかせる。

「玉ねぎは、茶色の皮まで」

そんな ところから…

人参の皮を包丁で むいて見せ、乱切りにする。

「猫の手ね、手切るんじゃねぇよ」

そんな ところまで…

まあ、皆 器用なコら だから。
プルプル震える包丁は やや怖かったけど。
ざっと実演とレクチャーを済ませ、大丈夫そうなので そっと離れた。

多少 形悪くてもカレーだし。

私が パパッと やっちゃうより、未経験者に 家庭の晩飯係の 有難味を知ってもらった方が良い。

と いうのは建て前で、私だって未経験な事やってみたい。
あ、ついでに飯ごう班に米の とぎ方も教えたっけな。

先に配送されてた先日作った、一斗缶かまど。
広場に間隔を開け設置されてた。
全部に火は入ってない。

よおし、やるぞー!

「…先生ー!どうしたらいい!?」

私だって学生なんだもの。

薪がくべられた一斗缶を目の前にして速攻、先生を呼んだ。
駆け付けて来たのは、ツナギにエプロンを掛けた 国語教員。
ちょっと変わった経歴の持ち主で、サバイバル事に長けている(らしい)。
先日、羊 追っかけてた 片割れだ。

良く乾いた薪の 着火に使うのは 新聞紙。
ぐしゃっとシワを付けた新聞紙を、薪下の隙間に押し込み、1枚 捻って手に持たされた。

先生、色濃いなあ…

バランス悪く大きな掌は 節くれだってて、正直、男らしくて羨ましい。

この太い指で かき混ぜられたら さぞや気持ち悦かろ…

違う!そんな話ちゃうねん!
煩悩退散!

え、もちろん 好きですよ。今だって好きですよ。開き直り。うぇぇん(泣)

手持ちの新聞紙にマッチで火を点け かまど の新聞紙に 火を回して行く。
あらかた移ったら、手持ち新聞紙も かまどにポイ。

「吹いて、吹いて」

渡されたのは、細い竹筒。

おおお、昔みたい!

竹筒を吹いて酸素を送れば、あれよあれよ と薪が燃え始める。

すげー、私にも出来たー♪

ある程度で竹筒を うちわに持ち替えパタパタ。

パタパタパタ…

こういうツール、私に持たせちゃダメ。
しゃがみ膝を抱えたまま、もうもう と立ち上る煙を見上げるうちに、ふと思った。

私は立ち上がり獲物を探す。
近くに居たM先生にロックオン☆

「うわあ!? 止めろー!! 目にしみる!!」

「あーっはっはっはっは!」

思い切り煙を あおぎ高笑い。
なんかね、やりたくなっちゃうんですよね、こういうイタズラ。なりますでしょ?
そりゃもう、慌てふためく先生の姿に ご満悦。

カレーを煮るのは、給食 小食缶程の 寸胴鍋だ。
かまどに置いて熱したら 油を流して、肉を焼く。
取り出して置いたりなんか出来なかったので、野菜も上から ぶっ込んだ。
軽く炒め、お水を入れ ひと煮立ち。

「アクも旨みなんだって」

へええ、知らなかった。教えてくれたのは、調理中 見かけなかったK先生。

「テントな。集団と離して、しっかり組んどけよ。

毎年メンツ違うのに、必ず倒壊して 周りのテント壊し始める馬鹿が居るから」
ご助言、凄く助かりました。

カレーを煮込んでいる間に テントを張る。
3~4人位の班に別れて、テント一式を受け取った。

だからさ…

テントが余ったからか、学校側の配慮なんだか、私だけ、VIP待遇の一人班。

いくら私でも、15歳と犯罪 犯す気、さらさら無いからね!
そんなに心配なら、マジで先生方と同じテントで良い(泣)

と 思ってましたよ、勿論。

だって渡されたテント一式、ポーンとワンタッチで開くのでなくて、ガッツリ旧式の多人数用のデカいの なんだもの。
仕様的には 体育祭とかで組む日除けに近い。

えぇー…これ、一人で組むの?大変過ぎない??

袋から出した 幕やらポールやらを地面に並べ、途方に暮れた。
軽く先生方のテントで実演を見ただけの状態。

再生しろ、手順を!

頭フル回転。

ベースのシートを広げ ペグを四隅に打ち、ポールを組んで 幕にセット、立ち上がらせて 固定ロープを張り ペグに縛り、補助ロープとペグを増設…だったかな?

やりきりましたよ、独りで。誰の手も借りずに。えっへん。
テントが組み上がる頃には日も傾き、先生が火の番をしてくれてた カレー鍋も いい具合。

中辛のカレールーを贅沢使いの二種類。
溶いて少し煮込めば、カレー完成☆いい匂~い?

結局 後半、私が全部やっちゃってましたな。面目ない。

お米は少しベチャッとしてたけど、皆お代わりしてくれました♪
ところで、K先生のかまど(?)の中には何が入っていたかというと。

K先生が観音扉を御開帳。
ふわんと漂ってきた、この香り…

スモークだ!
食欲そそる、凄くいい匂い!

針金で直接、豚バラの塊が ぶら下がってた。
サクラのチップで いぶした、ベーコンだ。

超絶 美味かった。
K先生、マジ ネ申✨

─湯場の想い出─

新雪が降り積もる、真冬の北海道。

この年のスクーリングは、スキー・スノボだ。
私はスノボを選択した。全日程 ほぼ山篭りで、初体験から随分と滑れるようになれた。

ゲレンデからの帰り道、バスが ひょいっと入ったのは、汗と疲れを落とす温泉施設。

なんて贅沢な年なんだ!
良いの?高校生が こんな贅沢しちゃって良いの??

やや貧乏性が 入ってる、私。
至れり尽くせりで ドギマギしちゃう。

時間は一時間ちょい もうけてあったかな。
普段の お風呂は カラスの行水でめちゃめちゃ早いし、充分だ。
脱衣場からガラリ戸口を開ければ、立ち上る湯けむり、硫黄の香り。

はわわ、温泉だあ~✨

温泉など小学校以来、入ってない。多分。
冷やり冷たい石の床。一歩目で温泉の魔法に かかってしまった。

石造りの大浴場にサウナ、奥のガラスの先には露天風呂まで付いている。

サウナって初めてかな。

早速、ヒノキの香り立ち込める、むわっと熱気が溢れ出す扉を開いた。

結構 熱いんだな。

熱された石で温まっている室内。壁に掛かる温度計は軽く70℃オーバー。
タオルで汗を拭き拭き、座ってみた。

ご…5分が限界…

そんなに入ってられない。

サウナは水風呂が格別と聞く。
ぽっかぽかな体を水風呂に沈めてみた。

うわわ、生き返るコレ✨

しばらく浸かっちゃった。
いい感じに冷えたので、温泉の大浴場に移動した。

染み渡るぅ…

お肌うるぴち になるかな。
手持ちタオルを頭に乗せ、顔に温泉水 叩き込み洗ってみた。

腕とか肩とか、水滴の弾き具合がいつもと違~う♪

凄いですね、温泉。入りたい、今(現在)入りたい。

大ガラスの外は、雪がチラつく冬景色。
露天も行きたい!
でも外 寒そう…もうちょい温まってから。

冷たい外気に、もうもうと立ち上る湯けむり。
しっかり露天も堪能しました?

のんびりしちゃったけど、時間 大丈夫かなあ?

脱衣場で携帯を確認。まだ集合まで10分位 残ってた。

そうだ!牛乳 飲まなきゃ!

小銭入れを出し、自販機へ。

フルーツ牛乳、悩む…コーヒー牛乳も捨て難い…

しばらく飲んでなかったし、普通の牛乳にした。
ガコンと落ちたビン牛乳。
上蓋と紙蓋をペッと はがし、腰に手を当てゴッキュゴッキュ。

ええ、こういうの形から入りたいんですよ。

うんま~い♪

ぷはーッと姿勢を戻せば、大鏡に映る自分の姿。
すっかり のぼせて赤ら顔だ。

…ちょっと、この顔で学友に会うの嫌だな…

そういうの、気にしちゃう人間なんですよ。

お風呂上がりに化粧品 塗りたくなかったけど、持ち歩いてたポーチを取り出し、鏡前の藤の腰掛けに座った。

コンパクトを開いてパフでポンポン。

…ファンデだけだと白塗りだな…
温泉入ったというのに、これでは具合が悪く見えてしまう。
チークも入れれば、なんだが眉も薄いし 目元もぼんやり…

リップまでしっかり塗ったところで、館内放送が聞こえた。

『♪ピンポンパンポン
○○学園の○○さん、先生と お友達がバスでお待ちです。至急、向かって下さい。繰り返します…』

ハッ!しまった、夢中になってた!

ええ、何か始めると周りが見えなくなるのが、当時の私。

時間を見ようと携帯を開けば、着歴全部 先生方で埋まっている。

ヤバーッ!!!

大慌てで上着を丸め持ち 出入り口に向かえば、既にバスは発車して 道路で停車している状態。
しかもボタ雪が吹雪いてる。

ええい、上着 羽織ってる時間が惜しい!

バスまで軽く100m。
私はTシャツのまま、吹雪の中を雪に足を取られつつ、急ぎ足。
バスの窓から 学友らが立ち、私を待ちかねているのが うかがえる。

超恥ずい(泣)!

「○○どうした!
…なんだ、化粧してたのか?」

出迎えた先生に速攻ツッコまれる始末。

穴があったら入りたい…

皆 ゆうに30分は待機していたらしい。
私はペコペコ平謝り。
集団行動 出来なくて、本当にスンマセン…

座席に着いて思う。

しっかり温まってると、案外と吹雪の中も平気なんだな。
雪は払えば落ちるし、雪で交通機関 死なないし、食べ物美味いし、マジで北海道 住みたい。

─ラーメンの想い出─

スクーリングの合間に、息抜き用 観光の時間も もうけてくれてあった。
修学全時間 観光旅行の遊び気分だったんですがね、私的には。
お昼間近、バス移動の合間に立ち寄ったのは、屋外に数件の ラーメン屋が立ち並ぶ施設。
テーマパークなのかな?

味噌ラーメン食べたいなぁ…
北海道ラーメン といえば、私が思い浮かべるのは コーンにバターがたっぷり乗った 味噌ラーメン。

絶対 美味い。
ていうか、お腹空いた。今(現在) 食いたい。

特に行動のグループ なんかも決まっておらず、完全 自由時間だ。
自由だと聞けば フラッと独り散策しちゃうのが、マイペースな 私。

街角でも見かける ガチにラーメン屋な建物をぐるっと見て歩き、ガイドブックも見ておらず 違いなんかも分からない。
なので、看板デザインが うさぎ模様で可愛かったラーメン屋の引戸を引いた。

そこそこな人数はけた はずなのに、店内に客人は居ない。

あれ?何人かは同じ店かと思ってたんだけど…

流石に無人は入りにくい。いらっしゃいませ も無い。
私は調理カウンター内の店主に声をかけた。

「すみませーん、ひとりなんですけど 良いですか?」

店主の返事は驚いた様にワンコンマ遅かった。

「あ…どうぞどうぞ、座って下さい」

私が席に着くと、パタパタと店主がカウンターから出て来た。
私の背後を通過して そのまま表戸を開け放ち、店主は内側に掛かっていた のれんを外にかけ直す。

あ!オープン前だったのか!

客人が居ない はずだ。
のれんが出てなきゃ準備中、という常識を知らない若造でスンマセン…

悪いことしちゃったなあ…
私のせいで オープン時間を早めさせちゃった(汗)
今更「出る」とも言いづらい…

現在だったら「うわあ、オープン前だったんですね(汗)ごめんなさあい!」とか 大袈裟なくらいに言うんだけど、当時の私は言ったかな?
覚えが無い…本当に ごめんなさい(礼)

店主が笑顔で出してくれた お水を一飲み、メニューを広げた。

…やばい、さっぱり分からん。
とりあえず、目的は味噌ラーメンだし。

「味噌ラーメン下さい」

私は単品注文した。

数分して元気な声と共に、湯気が立ち上るラーメン鉢がカウンターに置かれた。

美味しそ~う♪
…あれ?コーンとバターが無い。

その店ではコーンとバターはトッピングだった。
現在だったら 追加注文したのに…
まあ、味噌ラーメンには違いないし。レンゲでスープを ひとすくい。

──ッ!!!
辛いッ!!!

そう、辛かったんだ。
これは追追 話すが、とある一件で 辛い食べ物に過敏になっていた、私。
もの凄く辛かったんだ。

あ、一応 お店の名誉の為に検索しましたが「初心者でも食べられる優しい辛さ」だそう。
私が 辛さ に異常な程、抵抗力 無かっただけで…

思ってたのと違う。どうしよう…

私の知ってた味噌ラーメンは辛くないんだ。ほんのり甘さ さえ感じる程に。
鉢にレンゲを沈め、しばし悩んだ。

か…辛いから食べれません、だなんて失礼千万…
わざわざ お店を開けさせてしまった以上、残せない…
食べるしか、ない(泣)!

意を決した。

辛味を少しでも感じぬよう めっちゃ フーフーして冷ましつつ、だらんだらん 吹き出す汗を 卓上のティッシュでガシガシ拭き 山にしながら、食べ進める。
はたから見たら 異様な光景だっただろうな。

ラーメン鉢に口を付け、ぐいっと最後の一滴まで 飲み干した。

「ごちそうさまでした!」

ごめんなさい、味は 辛い以外 分かりませんでした…

お店を出て、再び散策。
先生方 御一行と出くわした。

「あ、○○居た!ラーメン食いに行くぞ!」

「え?もう、食べちゃいましたけど」

「ええー!?なんだよ、一緒に食べようと思って探してたのにー!」

先に言って。
先生方と一緒だったら、こんな失態 起こさなかっただろうに…これはこれで、はた迷惑だが 私的には勉強になったから良いんだけど。

私は学んだ。
ラーメンには “地域差” が あるってことを。
そして、自分 全く “集団行動が出来ない” ってことを。
宿泊の一人班も、地味に私に合ってんだろうな。

─遊戯の想い出─

学生達が暇を持て余さぬよう本校には、木製パズル・将棋・花札・麻雀なんかが 用意されていた。後者は誰かの持ち込みかな。

お風呂上がり、タオルを首に引っ掛け 共用浴場を出ると、湯上り休憩用のベンチで、理科教員と K君が腕を組み にらみ合っていた。

何やってんのかな?

囲まれた板のマス目を、時折ペシッペシッ と駒が移動する。

おお、将棋だー✨

実はコレ、かなり興味があった。
幼少期 一度だけ、祖父の将棋セットで 将棋崩し を遊んだ。
小さすぎて 駒の動かし方が覚えられなかった もんで。
幼いながらに、駒に彫り込まれた毛筆の文字がカッケェ と思っていた。
興味は有ったが、周りに将棋をやる子がおらず、特に接点も無く 今の今まで経過してしまっていた。

ルールも よく分からないまま、一局傍観した。
どっちが勝ったんだっけな。

「○○、やる?」

「やった時 無いから…」

声をかけてきた理科教員に、私は お断りを入れた。
教わる時間は無いだろう。
なんて思ったんだけど、教員は 快く ご教授くだすった。
K君と席を入れ替わり、駒の動かし方を教わる。

ほおお、駒自体は単純な動きなんだな。

一通り基本だけ覚えて、一局 対局。もちろん、ハンデとして 教員側は 飛車角の二枚落ち。

その頃には傍観者もポチポチ増えて、数人に囲まれていた。

え…この取った駒はいつ使えば良いんだ??

なんて考えてるうちに 結果、惨敗。
野次馬が多いだけに恥ずかしい。

「もう一回、やる?」

「いや…ありがとうございました」

おなかいっぱいです。

とりあえず 基礎は覚えられたし、他の子に席を譲った。
棚から木製パズルを一つ持ち、その場を離れた。
消沈して自室に戻る途中、戸が開放されたY君の部屋の前を通った。

「あ!○ちゃん、○ちゃん、やっていきなよ!」

私が将棋を教わっている間、いつの間にか姿が消えていたY君。他の学友と自室で遊んでたようだ。
直床に あぐらをかいた Y君の前に積まれていたのは、花札。

こいこい なら出来る!

フラッと部屋に上がって、Y君の前に 私も あぐらをかいた。

パシン パシン と札を打つ。

「こいこい!」
「こいこい!」

結果、惨敗。
私、べらぼうに弱い…

「麻雀やる?」

おおお、麻雀やってみたい?

麻雀も遊び方を知らない、私。チャンスだ。
社会に出る前に、是非とも覚えておきたかった。
私は ド○ジャラすら、未経験。Y君も快く 教えてくれると言う。

目の前で ひっくり返された、携帯用麻雀セット。
もの凄く わくわくした。

残念なことに消灯点呼の時間が来てしまった。

あうあう…

後ろ髪 引かれつつ、自室に戻らざるを得なかった。

麻雀パイをジャラジャラやってみたかった(泣)

一度お部屋に戻ってしまえば、根っこが生える。

まあ、またチャンスあるかな。

なんて思いながら、枕を敷いてうつ伏せた。
組んだ腕の前に設置したのは、棚から拝借した木製のパズル。

“箱入り娘”だ。

木枠の中に入っている 娘の駒を、両親・兄姉・下女に番頭なんかを やり過ごし、外に出すもの。

昔の人は面白いこと考えるもんだなあ…

これも初めて見たものだが、造りもネーミングも、エスプリが効いてて感心する。

箱入り娘を箱から出そうだなんて…余程 おてんばさん だったのかしら。

なんて、背景を考えてしまう。
単純に 駒をスライドさせるだけの仕組みだが、初めてだと結構 ムズい。

ぐうう…この、母親が邪魔!

だなんて、ちょっと私情も挟まってしまうんだな。

─屋台の想い出─

大通公園へやってきた。
時計台を観覧して、のんびり公園を散策。
噴水前に屋台が出てた。

じ…じゃがバター だと!?

実は、これも食べた時 無い。
本場の おじゃが にバター、美味いに決まってる!

「ひとつ、くださーい!」

お値段もなかなかだったが、発砲トレーに乗せ渡された じゃがいも には驚いた。

──デカ!!!

拳よりデカい。
軽くソフトボール位は あったと思う。

ぽっくぽく に ふかされ、パリッと裂けた皮の上には、溶けだす たっぷりのバター。

割り箸で皮を避けて、ひと口頬張る。

あっつつ…

ほふほふ と 白い湯気を吐く。

…うんま~い♪

塩加減といい、ふかし具合といい、絶妙。
素材を引き立てる バターが おじゃがを包んで、口当たりは濃厚だ。
ああ、食いてえなぁ…

キ○アカリ だったのやも しれぬ。
値段にはビビったが、納得の逸品であった。

あ、ワンコインですよ。

─お土産の想い出─

空港の物販コーナーで、お買い物メモを開く。
毎回、姉達に お土産を依頼されるのだ。

親友三人にも買って帰らねば。
私の現在も連む親友三人には、一つ目の高校を退学する時、どえらい迷惑を掛けたのだ。
詳しくは、気持ちの整理がついたら語るかと思う。
まだね、ちょっとね。
私は未だに 退学の理由を伝えてられていない。
なのに、馬鹿やったり愚痴聞いてくれたり、変わらず接してくれる、優しい子達なのだ。
泣ける…

さておき、自分にも お土産欲しい。

お目当ては、ししゃも だ。

ご存知だろうか、スーパーで目にする ししゃも、実は ししゃも では無いらしい。
カラフトシシャモ、という。
北海道辺りでしか入手出来ないという、本ししゃも。是非とも一度、食してみたい。

海鮮コーナーを めぐれば、居た居た ししゃも!
見た目も黄身がかって光沢があり、カラフトシシャモより二回りは大きい。
バター焼きにしたらば、さぞや美味かろう。

──高ッ!!!

ざっとカラフトシシャモの 10倍は お高い…
姉にも話したら、送って欲しいと頼まれてた。

ひいい、クール発送料で ししゃもが もう10匹は買えちゃう…

伝票を書きながら、ちょっと泣きそうになった。

でも、北海道でしか買えないし!
このチャンスを逃したら、もう北海道には来れない、かもだし!

別宅住まいの姉の分を配送依頼して、自宅用のは保冷バッグに詰めてもらった。

さて、親友達への お土産は何に しようかな♪

ご予算一人千円位で、時々 足を止め、時間を掛けて吟味する。
こういうの選ぶ時 私は、日常使える物 or 使えない変な物 の二択。

この時は、変な物 を選びたい気分だった。

コレ渡した時、どんな反応するかな。

とか考えちゃうと、ニヤニヤしちゃって。

本当は、木彫りの熊を あげたかったんだけど、流石 工芸品。ご予算オーバー はなはだしい(泣)
手に取った 小さい熊を、そっと棚に戻した。

何か他に変なもの…
鉄板だと、熊○没注意?ま○もっこり?

凄く悩んだ。

ぶらぶら歩いていると、ふと、何かが視界を かすめたので、戻って凝視した。
棚の上には 缶詰の山。

──カレーだ!

しかも普通のカレーじゃない。
デザインの効いた ラベルの柄は、熊・鹿・トド。

コレしか無い!

ひと目で惚れ込んだ。
しかも一缶 千円前後。ご予算的にも、コレしか無い。
三種+トドを買い、渡す時に各々 選んでもらうスタイル。残った分は自分用。

我ながら、凄く満足のいく お買い物であった。

他にも銘菓系、○い恋人・レーズンサンド・三○六・R○YCEの生チョコ…
三回往復含めて、メインどころは網羅した気がする。

じ○がポックル は当時 知らなかったんです(泣)

中でも好きなのが、フリーズドライの いちご にホワイトチョコをコーティングした お菓子。
周りに更に いちごパウダーが まぶしてあって、見た目は真っ赤 いちご色。
商品名 分かんないんだよなあ。まだ製造してるかな??
北海道物産展とか のぞいても、アレは見ないんだよなあ…
また食いたいです。
類似品は他所でも販売してるけど、赤くない。コーティングのチョコの色。
ちょっぴり、味気無い。
あの周りの いちごパウダーが酸味強めで、パンチが後引くのよ。
食べ出すと止まらない。
製菓プランナー様方、是非とも ご検討頂けますと幸いです✨

おっと、話が逸れてしまったな。
集合時間だ。

「おう ○○、何買った?」

早速 戦利品をM先生に お披露目。我ながら自慢の買い物である。

「え…ししゃも??
…お前、カニは?」

──カニだと!!?

「北海道といえば、カニだろう」

ですよね!!!

うわああ、カニ!カニ~(号泣)!

もう帰りのバス代しか残ってない。結局、カニは食えずに終わった。

─おうち帰ってからも、旅─

帰宅速攻 行ったのは、着替えでもなく、愛猫を撫でるでもなく、方眼用紙に 将棋の最初の盤面と駒の動きを書き出したことだ。
せっかく覚えたんだ、忘れないうちに…

晩ご飯には、本ししゃも をバターで焼いて出した。

10本を二人で分けたから、随分と少なかったけれど…
驚いたのは身の厚さ。ししゃもで身を感じるなんて、ほぼ無かっただけに感動した。

ぽこぽこ に詰まった卵も旨みが濃く、美味い。美味いんだよう。

後日、親友三人に お土産 配って、手元にトドが残った。

ラベルも気に入ってたので、しばらく台所に飾った。
賞味期限ギリギリで開けたかな。

トド肉は…
なんとも、臭い…
あ、私的には、ですけれども。

厚紙でヤンキー仕様の将棋を自作して、結構 遊んだ。

将棋はハマったな。

対戦相手 居ないし、CPUには勝てないし、詰将棋も 三手くらいの簡単なのしか解けないから、弱いんですがね。

想い出の大半が 食べ物という…たははw
⑥に続く──

線維筋痛症と私⑤

毎日毎日、背中と両手に、五寸釘を打ち込まれるような痛みが続く。
私の髪を仕込んだ藁人形に、白装束に ロウソクを頭に括り付けた狂人に、五寸釘を打ち込まれているのだろうか。

丑の刻参り されるほど、恨みを買ってしまったのかな…

なんて、結構 真剣に思ってたものだ。
体調不良は 体力で何とかカバーして、休まず忙しく働き続けた。
間で色々 起きているが、とりあえず追追 語るとして、概要だけざっくり挟みながら、続けようと思う。

痛みに耐えていると、心が疲弊する。

ただでさえ 毎日サービス残業して忙しく していたものだから、心のゆとり は削られていく。
いつの間にか、酷い癇癪を起こすようになっていた。

些細な やり取りで当たり散らし、世界の滅亡を願う毎日。
昔、物に当たる部下に対して「良くないよ、我慢出来ないの?」と 説教した分際で、物に当たる自分が止められない。
私物も、職場の備品も、結構 壊してしまった。
情けなくて堪らない。

ある時、晩飯の準備で台所に立っていた折、まな板に向かって包丁を握っていると、頭が良くない考えに支配された。
良くない、良くない、と思いながらも、包丁持つ手が勝手に動き出すんだ。
包丁を振り上げた瞬間「ニャーン」と足元で餌を ねだる、シロ(仮名)の姿が目に入った。

ハッと我に返った。

この包丁、自分に降ろすなら良いけれど、もしかしてシロに降ろしてしまうのでは。
何を しでかすか分からない自分が、恐ろしくて恐ろしくて堪らない。
愛猫や誰かを傷つける、それだけは絶対にしたくない。

私は大好きだった料理から、包丁を封印する決心をした。

もやしにカット野菜、切り落とし。
少し物足りないが、包丁を使わずとも 料理は出来る。

特に見た目や骨には異常が無いんだ。もっと内側の、神経やら精神やらの影響で痛むのかも。
そう考え神経内科か精神科か、どちらに行くか悩み、とりあえず 神経内科に行ってみることにした。
背中の痛みが始まってから、一年が経とうとしていた。

個人病院の神経内科を訪れた。
受付し 問診票を書き、呼び出しを待合室で待った。

平日だと言うのに、結構 混んでるものだなあ…

ほぼ満席の待合室には、お喋りする ご老人ばかり。私位の年齢の者は、他には居ない。

「○○さん、診察室に お入りください」

呼び出され、私は医者の前に座った。

「どうなされました?」

「背中と両手が、突き刺すように痛むんです」

私が軽く症状を伝えると、医者は 大きなため息を吐いて、椅子を回し私に向かった。

「あのねぇ 君、ウチでは 痛みは取れない!」

──えええ???

なんか知らんが、怒鳴られた。

診療科の違いは、私には よく分からない。
お門違いだったんだろうか。
医者に痛みは取れない、と言われたら もう、引き上げる以外に無い。

「あ…そうなんですね。失礼しました…」

特に診察もないまま、診察室を後にした。

待合室で会計待ちをしている間、なんで怒鳴られたのか 考えてた。

言葉使いが悪かったかな、伝わらなかったかな…

思うように自分を伝えられないことが、悔しくて悔しくて、涙が溢れてきた。

涙は流れ始めると自分では止められない。

待合室の人の多い中、恥ずかしいのに、声を上げ泣きじゃくった。
見かねた看護師さんが一人、私の横に座って話を聞いてくれた。

自分でも、なんで痛いのか分からないんです。

そう伝えると、看護師さんは私の肩を抱いて擦りながら、自分も原因不明の痛みに悩んだ時期が有ると、話してくれた。
子育てしながら働きながら痛みに耐え、ある時、歯を治したら痛みが治まったらしい。

そういう事も有るのか…

私が ひとしきり泣き終え、落ち着くまでの間、ずっと話をしてくれた。
会計だけして、病院を後にした。

あの時、励ましてくれた看護師さんには、感謝しかない。
お忙しかったであろう最中、私の為に時間を割いて下すって、誠に ありがとうございます(礼)
他の方にも、ご迷惑お掛けしました。
⑥に続く──

現役末期を一気に語るにはシンドイ。分断分断で申し訳ない。

Mon Jun 13

ものすご~く、どうでもいい話

ツイートがジャスト✨777✨だった!
Twitter初めて二ヶ月位か?我ながらヤベェ呟き量だな…

とはいえ、なんだか 幸先いい予感がする♪ https://t.co/C9Dj23ChOW

目撃・通報談②

これは私の人生において、失敗だったなー、と 今でも思う第一目撃 事故、二件。

いや、失敗は毎度の事なんですがね(汗)

一つ目の高校を退学したフリーター時代。
フルタイムで働いて貯めた軍資金で、欲しいと思ってたバイクの免許を取りに 教習所に通ってた。
今日は卒業試験の日。
試験結果が出るのは、昼休憩を挟んでからだった。
いつもなら教習所の休憩スペースで ぼんやり時間を潰すのだが、その日に限って 表に出た。

大安吉日じゃん!宝くじ買わなきゃ!

強く思って、駅前の宝くじ売り場まで急ぎ歩いた。
バラで十枚 買い、ほくほくで教習所まで戻る途中、嫌な予感がした。

駅前のロータリーへ続く本線道路に、雑居ビルの間から 車1台分位の 小道が交わっていた。

ああいうの、学科でやった。
確認しづらい、危ない道っぽいな…

なんて、学んだばかり なので引っかかったのだ。
広い歩道を、小道に向かって歩む。

チリン、チリンッ

突然、背後から自転車のベルが響いた。

おっと、邪魔しちゃった。

前方ばかり気にしていて、つい、歩道の中央を歩いていた。
慌てて左手の本線道路側に寄り、道を開けた。

スパーッと軽快に自転車が雑居ビル側を通過した。

その時だ。

ガッシャン!と、自転車が小道から急に現れた、自動車のボンネットに乗りあがった。

ぇぇええ!!?

私の目先、僅かに5m程での出来事だ。
ほんの少しズレていたら、私が はねられていただろう。

「だ…大丈夫ですかー!!?」

私は自転車に駆け寄り、地面に落ちた女性に声を掛けた。

「い…たた…」

車は徐行してた為か、女性は意識がある。
運転手も慌てて降り声を掛けてる。

あ、私 何したら良い?

女性はボンネットに打ち付けたのか、右足を かばっている。じんわり血も にじんでいた。

え、救急車?? それとも警察?? どっちだ???

悩んだ。

しゃがむ三人の背後を、猛然と 自転車が通過して行った。

「大丈夫ーッ!? 先に職場行って話しとくからねーッ!!」

──いや、ちょっと!お連れの方ー!!?

後続の自転車はノンストップで走り去る。彼女は不幸にも、同僚に置いて行かれてしまったのだ。

えぇぇ、私 どうしたら…

「では、何かありましたら、こちらに連絡下さい」

運転手までも名刺を渡して去りかけた。
女性は起き上がりはしたものの、立ち上がれそうにない。

──このままには出来ない!
「救急車!呼びますね!」

私は携帯をパカッと開き、車に乗り込もうとした運転手に聞こえる様、わざとらしいほどの大声で 女性に申し出た。

事故った運転手は、流石に逃がす訳にはいかん。

「あ、立たれないんですか?大丈夫ですか?」

良かった、戻ってきた。

「では、車で病院に送りましょう」

──んんん?

「じゃあ、お願いします」

んんんん???

女性は運転手に引き起こされ、助手席に乗り込み、そのまま車は走り去ってしまった。
まだ青二才の ひよっこな、私。傍観するしか出来なかった。

ええと…当事者同士が良いってんなら、良いのかな…

駄目です。
病院側が通報するだろうけど、あくまでも病院行ってたら、の話。無いに越したことはないが、万が一って事だって有るかもなんだから。
せめて 一報でも、警察に目撃情報 報告しておけば良かった。

放置された、私と彼女の自転車。

仕方なく 通行の邪魔にならぬよう、自転車を雑居ビルに寄せ 立たせて停めて、教習所に戻った。
凄くモヤモヤとしたまま 卒業書類を受け取って、免許センターで学科試験も合格し、私は念願だった免許証を手に入れた。

あの時 買った宝くじ、1万円 当たってた。

なんか、あんまり嬉しくない…

いまだに思うんだ。

果たして、ご無事であろうか…

連れて行かれた女性と、彼女の自転車。

第二の高校時代。

私は いつも通り、バイクを走らせ、登校途中だ。
ぽかぽかとした小春日和で、軽めにパーカーだけ羽織っていた。

国道に向かう、二車線の枝道。道幅は狭めで抜けにくく、中央分離帯はオレンジライン。
小さい横断歩道、一台の車の後ろで信号待ちをしていた。

今日、暖かいなぁ~…

ギアをニュートラルに入れ フットブレーキだけ踏み 両手をハンドルから離し、心地好い日差しに もの凄~く ぼんやりとしていた。

キュキキキキッ!

突然のブレーキ音に、ハッと目を見張った。

キキーッ!ドカッ!ガッシャン!

轟速の対向車両が 中央分離帯を はみ出し、前方車両に ぶち当たった。
衝撃で破片が飛び散り、前方車両は路肩に 押し付けられた。
当たった車は 速度を緩めないまま、走り去ってしまった。

ぇぇええええッ!!?

当て逃げだ。

目前 僅かに5m程。
前方車両が居なかったら、私が はね飛ばされていただろう。

慌てた私は、バイクを両足でバックさせ ギアをロウに入れた。

運転手の安否を確認せねば!

左側は完全に埋まり抜けられず、車両の右側に バイクを進めた。
運転席側のドアは ベッコリ凹んでいる。
窓の内側で、運転手が動いているのが見えた。

「大丈夫ですかーッ!?」

窓越しに、声を掛けた。

運転手は窓を開けようとするも、パワーウィンドウは下がらない。
運転手は私に向かって 手をパタパタと振り、何かを伝えたいようだ。
前や下を 指さしている。

──あ!
私が邪魔してるのか!

車の運転席側に ピッタリと、バイクを横付けしていた、私。
ドアを開くのを めっちゃ妨害していた。スンマセン(汗)

急ぎ、車の前方にバイクを進ませ 路肩に停車した。
ヘルメットを外して見ると、運転手は車から降りてきた。
パリッとしたビジネスマン風の男性、既に携帯を手にしている。
ちょっとイケメンだった。
パッと見、外傷は無い。

「目撃者なんで、少し残っててもらえますか?」

「あ、はい。良いですよ」

男性は私に待機の指示を出し、携帯を耳に当てる。
まずは保険会社に電話してる模様。次に、警察に通報していた。

凄いな、めっちゃ冷静。

慌てふためく様子も無く、男性はキビキビと応対していく。
見ているだけで勉強になる。

「今から警官が来るので、証言してもらえますか?」

「あ、はい。良いですよ」

同意し、学校に遅れる旨の連絡を入れた。
路肩の縁石に座り 二言三言、男性と会話した。

警官が到着すると、男性は状況を丁寧に説明しながら受け答えている。

大人の男の人、カッケェ。

羨望しながら結構な時間、現場検証の様子を眺めた。

今日、暖かいなぁ✨…

なんて、若干ぼんやり しながら。

「目撃者さんですね、お話伺えますか?」

ようやく私が証言する番だ。

何を聞かれるだなんて、当時は頭に無い。何も考えて無かった。
軽く ぶつかった向きや、逃走方向なんかを聞かれ答えた。

「逃げた車のナンバーは覚えていますか?」

──ハッ!!

全く思いもしてなかった。

そうだよね!要るよね!

そんなの、全然見てなかったんだ。
ドライブレコーダーなんてタクシーくらいにしか搭載されて いなかった時代。
第三者の目撃証言は重要だ。

「車の種類は分かりますか?」

「分かりません!」

“セダン”だった気はするんだが、車名は愚か 車種すら覚えてない。

「車の色は何色でしたか?」

「黒か、紺だと思います!暗い色です!」

当時、私のヘルメットのシェードは、黒。
黒いフィルター越しの状態。
濃い色味は全部、黒に見えてしまうんだ。

……私役立たず(泣)!!

全く有益な情報提供は出来なかった。
一瞬でも振り向いて逃走車両を見ていれば、ナンバーの端くらい、記憶に残ったはずなのに…

私、何のために残ったんだろう…

結局、自分の名前・生年月日・連絡先しか、伝えられなかった。
すっかり消沈して、モヤモヤとしたまま学校に向かった。

今から行っても、お昼からかかぁ…

即、下校時間が訪れた。

日暮れに 実家に帰宅すると、留守電ボタンが光っていた。
再生してみると、当て逃げされた運転手からだった。
当て逃げ犯が 自首した、との事。

なんとまあ!

良かった良かった、これで安心して眠れる。

留守電には続きがあった。
運転手は私に対し、感謝の言葉を連ねる。

いや、私 何の役にも立ってませんから(号泣)!!

本当に、申し訳ない。
申し訳ない気持ちで いっぱいだった。

もう 同じ轍は踏まない…

それから 私は、通学途中に対向車両のナンバーをチラ見する習慣が着いた。
まあ、役には立ってませんね、今のところ。

この時期買ってた宝くじ、1万円当たってた。

私の運気のプラマイに、周囲を巻き込んでしまった気がしてならない…

私の失敗経験が、誰かの一助に なりますように。
③に続く──

セカンドハイスクールライフ⑥

一年生、夏。
まだ昨年働いた分の蓄えの残っていた私は、特にバイトもせず、のんびりとした学生生活を謳歌していた。

あまり家に居たくない お年頃でも あったため、特に用もなく 夕刻 実習場のシャッターが閉まるまで、ダラダラと学校に居残ったものだ。
お気に入りは職員室の、くったくたのソファー。
冷房対策で買った 多分ベビー用の、黄色いクマさんの毛布をかけて、昼寝だ。
もちろん、クマさん毛布にも、デカデカと名前が書いてある。使われちゃうと どっかいっちゃうからね。
この毛布、余程 モノが良かったのか、二十年経つ現在も使用している。
時々 誰かが置いてったジ○ンプを読んだり、先生方と お喋りしたり、あんなに お家大好きで引きこもってた頃が嘘のよう…大差は無いんだけれど。

特に事務員のS女史とは、会話が尽きなかった。
三人息子さんを育てる お母さん。だったかな?
晩御飯の献立が何だ、特売情報の やりとりしたり。
母親の愚痴を言ったり、ご主人の愚痴を聞いたり、息子さんの成長過程 話して下さったり…会話が完全、井戸端会議の主婦トーク。
お互い年齢は違えど、兼業主婦ですもんw

楽しかったなあ♪ 元気になさって いるだろうか。
Sさーん!私は今、こんなんなってまーす!

何の話しようと思ったんだっけな。
そうそう、ある時 S女史からピンク色の封筒を渡された。

なんだろう?

封を開くと、中には写真が一枚入っていた。
写っていたのは、若かりし頃のS女史と、男性。
二人で長細い棒を持ち、差し出している。

ウェディングのキャンドルサービスだ。

小さなカードに、メッセージも一言 添えられていた。

『この、白塗り お化けは だ~れだ(笑)?』

S女史!!

一体、何の意図があって あの写真を下すったのか、衝撃過ぎて ド忘れしてしまったんだが…
お美しい お写真だったので、ありがたく頂戴して、今(現在)も大切に保管しております♪
確か、当時の私と同じ歳で ご結婚されたんだったかな。
あの頃から、結婚したらば綺麗な衣装 着てみたいなぁ…なんて、願望だけは生まれましたね。

綺麗な衣装、着てみたかったなぁ…

ハッ、そういう話じゃねえ!
煩悩退散!!

部活が無い代わりに、夏休みも学校は解放されていて、整備の実習場が使い放題だった。
私も もちろん、用もなく休日登校。
一年の夏には、もう一つ、やりたいことが有った。

自動車の免許証を取る事、だ。

学校通いながら、バイトしながらだと、ちとキツいんで、夏休みの間にガーッと、終わらせる予定だ。
一発は流石に無理なんで、バイクの時と同じ教習所に入所した。
一年以内に入所すると、入学金が免除されるのだ♪
バイクの免許有るから 学科も免除で、8万位だったかな?
もちろん、マニュアルですよ。

二つ免許取ってトータル26万位。我ながら賢い運用だったと思う。うん、うん。

バイク乗り回してたから道路慣れしてて、教習官の方々には結構 褒めてもらえた。
コレ、地味に自慢なんです。

褒められちゃうと調子に乗るのも、私の悪いところ…これも 追追ですけども。あ、一部は既に話しましたね(汗)
無事、特に問題も起きず、車の免許証は取得 出来た。

そうなると 欲しくなるのが、マイカーですね。

流石に軍資金 尽き、車は買えなかったので、マイカー目指し、秋からはガススタでバイトを始めた。
セルフスタンドは ちょいちょい目立ち始めていたけど、まだ フルサービスのスタンドも多い時代。
小さなガススタで、人生初の接客業だ。

一度言ってみたかったんだ。

「灯油、18リッター入りま~す!」

理由が阿呆。

これがまた、色々 起きましてね。起こしたって言うか…たははw
⑦に続く──

ガススタ物語①

ほぼ空欄の簡単な履歴書と軽い面接で、ぺろーん と即バイト採用された、小さなガススタ。
支給された制服と制帽を被り、バックヤードから スタンドに出た。

最初は、発声練習だ。

「いらっしゃいませ!」を、四車線挟んだ道路先に待機する、店長に届かせなければ ならない。
突然の体育会系なノリに、文化部しか経験の無い私は、酷く狼狽したのを覚えている。
普段の声は腹式呼吸だし デカい方なんだが、緊張で全然 声量が出ない。

「もっと!腹から声出せや!そんなもんか!? まだ出るだろ!」

道路先の店長の指示は、怒鳴り声でもないのに、クリアにハッキリと聞こえる。
凄いな と尊敬しながらも、全然 真似する事が出来ない。
道を歩行者や自動車が往来する最中、恥ずかしさの方が どうしても勝ってしまうんだ。

フルサービスのガソリンスタンドでは、スタッフ同士の声掛けには勿論、窓が閉ざされた車の中の お客様に 誘導の声が届かねば始まらない。
声出しは重要だ。
大声を出そうと意識すると、どうしても “喉” を使ってしまう。怒鳴り声に近い。
小一時間 発声練習して、喉はガラガラだ。

これ、腹から声出せないと 喉死ぬな…

初日から先が思いやられた。

基本業務を流して教わる。
小さなガススタの給油機は、据え置き4台・大型車用1台・灯油機2台。
他にも 洗車機2機+拭きあげ場・休憩所+トイレ なんかが、ぎゅっと狭い敷地に収まっていた。
内側から見ると、想像以上に設備は充実している。

繁忙期 以外は、基本的に車道側の普通の給油機2機しか、稼働しない。
道路から見て、お客様が入っているように見せる為だ。

給油機の使い方を教わる。
ハイオク・レギュラー・軽油 の三種が長黒いホースの先、各々の ノズルから出る仕組み。
セルフで お馴染みの給油機と大差無い。

油種の違いは、ご存知ない方には知っといて欲しい部分が有るので、軽く書いておこうと思う。

油種は一括りに“ガソリン”と 私含め言ってしまいがちだが、違いは大きい。
まずは “レギュラー” 一般的なガソリン燃料だ。

次に “ハイオク” 略さず言えば“ハイ オクタン価”。
オクタン価とは、ガソリンに含まれる添加物の量。添加物が増えると、ガソリンは燃えにくくなる。
hi なので、レギュラーより添加物が多い事になる。つまり、ハイオクの方がレギュラーより燃えにくい。
最後に “軽油” これは既に原油の精製段階でガソリンとは異なる。
レギュラーは常温でも燃えやすく、軽油は高温で燃える。つまり、軽油の方がレギュラーより一段と燃えにくい。

燃料は燃えれば良いというものでも無い。
圧力でピストンを上下し駆動力に変えるエンジン、圧力が高まればパワーになる。
このレギュラー・ハイオク・軽油の油種の違いは、エンジンの違いだと思って欲しい。

エンジンの仕様からして違うんだ。

細かいことは別口で語るかもなので置いといて、質の合わない燃料を使えば、おのずと エンジンは故障する。若しくは不具合を起こす。
間違った燃料を入れるのは、車に良くない。
車の寿命を縮める事になる。

簡単にまとめると、

レギュラー車 → 一般普通自動車
ハイオク車 → スポーツカーや高級車
軽油 → トラックやバス等のパワーが必要な車両

こんな感じかな。
もちろん、これは一般的な まとまりなので、お乗りの車の詳しくは ディーラーや 仕様書を参考にして欲しい。

最初の業務は窓拭きだ。フルサービスのガススタの売りでもある。
給油している間に、車の窓を 濡れ拭き・乾拭き駆使してピッカピカにする 来店サービスだ。
これ、地味に好きだったな。
中にはガラスに 防水防塵コーティングした車もあるので、必ず お客様に拭き上げても良いか確認する。

初めのうちはベテランスタッフが誘導した車に補助で付くのだが、万が一 混雑した時のため 入店誘導も習った。

「ライッライッライッ…オッケーでーす!」

て、やつだ。
「オーライ」だと思うんだが、「ライ」にしか聞こえん。

道路でウインカーを出した お車を見つけたら、大きく手を上げる。
「誘導します」の合図だ。

確認せねばいかんのは、給油口。
車種により右側面・左側面・背後、様々だ。

給油ノズルのホースは長いので 反対側でも届くっちゃ届くんだが、ホースで お車を傷つける恐れが有るので、給油口側を給油スタンドに付けるのが基本だ。

右側面の お車なら、右腕を真横にさす。
この給油口の見極めが、初心者には難しい。
車の塗装と同じ着色の 給油口の外カバーは、目立たない。

ベテランスタッフが「右!」「左!」とか 指示してくれるんだが、これが また、私には難儀で…

お気づきの方もいらっしゃるかもしれないが、お恥ずかしながら 実は私、右と左が未だに分からない。

小学校の時、覚えられなかったんだ。

小一の頃は 黒板に「みぎ」「ひだり」と書かれていたので全然 覚えなくて良かったんだが、小二に上がって 表記が消えたのは 衝撃だった。
左右を覚えるチャンスを、みすみす逃してしまった。
「お箸持つ手が右」と言われても、私 両利きなのでサッパリなんだ。

「東!」「西!」と言って貰えた方が分かる…
これは、ゲーム脳w

早く仕事に慣れなくては。

私は登下校のバイク給油を、セルフ・フルサービス どちらも行くように努めた。
給油スタンドの使い方、接客用語・接客の方法、どちらも実地で学べるように。
②に続く──

母親は、アレ④

あー…これ本当に申し訳ないんですが、学生時代のではなく、今(現在)の愚痴です。スンマセン…
やっとこ十円ハゲが治ったので、溜め込みたくない。発散したい。

心穏やかに、好きな人の事だけ 考えて生きていたいんだ!

すんごい くだんねえ事なんで、薄らぼんやり流して下さい(礼)

私は母親の言うことを聞かないが、母親も私の言うことを聞かない。
私が母親の言うことを聞かないのには明確な理由が有るが、母親には無い。
母親は、格下の相手の言うことは一切 聞かない。
私が言っても聞かないが、同じことを専門家が言うと 一挙に信用する。

私は、母親に 見下されているのだ。

先日、あまりにも私が何もやって無いと思われてるのが しゃくで、何かやってますアピールをしようと考えた。

朝イチからパソコンに向かい、せっせと絵を描いた。
母親が我が家に到着した時、私は机に向かっていた。
描き途中の絵は、半分程 色を塗ったところだった。

ゴロゴロしてるだけじゃない。
分かって欲しかった。

母親は開口一番、全く心が こもってないイントネーションで「上手いじゃない、綺麗じゃない」と言った。
社交辞令 以外の何もの でもない言い方だったが、そんなのでも調子に乗るのが、私。

「こうやって塗るんだよ、こうやって影付けるんだよ」

得意になって実演して見せた。
私は、モニターに映し出された描き途中の絵を指さした。

「でね、これが “シロ”」

「え?そうなの?」

──あれ?

「これがパソコンと、今写ってる画面」

「え?そうなの?」

──あれれ??

「で、これが私の代わりの人」

「え?これ、アンタなの?」

──おっとお。

私の画力が とぼし過ぎて、母親には一切、絵の中身が伝わっていなかった。トホホ…

あんまり悔しいので、お昼を食べた後、夕方まで一生懸命パソコンに向かい、色を塗った。
私は完成した絵を、母親に自慢げに見せた。

「完成したー!」

母親の感想は、

「…ふーん」

それだけ。

それだけなんだよ(泣)!
悲しいだろう!?

粗大ゴミも捨てられてない事に気付いた母親。

「捨ててないじゃない!もー、お母さんが電話してあげる!」

「止めて!」

別に電話出来ないから捨てられないんじゃない。
その後 責任取れないことは やらんでくれ、て しょっちゅう言ってんのに。

親に とって子は いつまでも子 なんだろうけど、
私を一体いくつだと思ってんだ。若造ならまだしも、中年なんだぞ。
それなりに電話応対くらい出来るんだぞ。
幼稚園生じゃ、ないんだぞ(泣)

とりあえず、梅雨が明けるまで捨てられません、と 理由を懇切丁寧に説明して黙ってもらった。

来月も一悶着あるんだろうな…

そして、三度 忘れられた 百均の らくがきブック…

ええい、悔しいから10個位 何か描いてやるわ!

あ、全ページは無理です…
64ページもある上に、額縁しかない ほぼ白紙のページが半分 占めてるんだ。

他にやりたい事有るのに、遅筆で ひと月じゃあ、無理です…

いつか絶対、母親を唸らせる絵を描いてやる!
ふえぇん(泣)

セカンドハイスクールライフ⑦

学校主催のイベントに “ツーリングの会” があった。
参加出来るのはバイクと免許証 持ってるヤツらに限られるけど、学年の半数はそんなヤツらだ。

ただ、今回は高速にも乗ると言う。
当時の道路交通法では、125cc以下の原付は 高速には乗れない。

参加したいなあ…

私の愛車のアメリカンバイクも、漏れなくピンクナンバーの125cc…
原付免許しか持ってない子だって行けないんだし、私も皆の お土産話を楽しみに お留守番しよ。
自ら気持ちの決着を付けていた私に、M先生が尋ねてきた。

「○○、行くか?」

「私、高速乗れないし…」

「俺の隣、空いてるよ」

ん?どういう事だ?

詳しく話を聞けば、ツーリング途中で有事が起きた際、自分らで直す用の工具を乗せ、最悪 動かなくなったバイクを引き上げる為に、軽トラが引率するのだと言う。
M先生は、軽トラ引率係。助手席一名分、空きだ。

「一人で運転するのも淋しいし、お喋りしようよ」

M先生(感涙)!!

これね、申し訳なくは思ったんだよ。
他にも参加してみたい子だって居ただろうに、私ばっかり特別扱いしてもらって…
先生方に取り入るのが上手かった年功って事で、勘弁してくれ。

私だって、行きたいんだもん。

紅葉が始まるくらいの秋口だったかな。
軽トラ乗るのも初めてで、超ワクワクしてた。

ツーリング当日の早朝、学校に集合した。

集まったのは、250cc 400ccのバイク通学をする、Y君をはじめとする数名。
引率バイクに整備科のK先生・T先生、理科教員。教頭先生もいたっけかな?
一年初回は10名程の少人数での出発だ。

軽く注意やサインなんかを伝達して、K先生を筆頭に隊列が組まれた。

「いよっしゃ!しゅっぱーつ!」

「しゅっぱーつ♪」

軽トラは隊列の しんがりを見張る。
朝っぱらから近所迷惑な騒音な気もしたけれど、ドルンドドド ブオンブオーン と排気音が協奏する。
全台バイクが路上へ出れば、M先生が運転する軽トラも発進する。

カカッ とギアがチェンジされた。

──コラムシフト、カッケェ!!

コラムシフトは運転席の座面横ではなく、ハンドル左側から生えるシフトレバーを操作する。タクシーなんかに多い。

うわー、一度触ってみたいなあ…

なんて思ってたけど、結局触ったんだっけな?
覚えが無いな。忘れたかな。

ううんと…どこへ行ったんだっけかな…
確か半島を時計回りに周回するコースだったと思うんだが、私どうにも終着地点でなくて道程を楽しむ人間らしくて…スンマセン、どこに行ったかはハッキリ覚えてないです。スンマセン(汗)

年2回 6回は参加したはずなんだが、ほぼ全部 助手席参加だったもんで、ね。
連れて行かれるだけだと余計に、ね。
あ、スクーリングの書き漏らしたエピソード出てきた。
これは、また後日。
いかんな、一度 卒業アルバム見た方が良さげだな…
グダグダしてて ごめんなさい。

最初に訪れたのは、割と有名な地元の神社。
神社・仏閣は好きな、私。だから多分、覚えてんだ。

参道手前の駐車場にバイクを並べる。

「ここの名物、草団子なんだって」

それは是非とも買いたい。

軽トラを降りた M先生に追従して、参道一番手前の団子屋の のぼりに吸い寄せられた。

「あんたたち!ご挨拶には行ったのかい!?」

突然、団子売りの お姉さん(?)に話しかけられた。

「いや、まだです…」

「ご挨拶が先!土産は後!」

あ、そういうもんなのか。

M先生とペコリ頭を下げ、まずは境内目指して歩き始めた。

途中 小さな澄んだ川には石橋が渡り、錦鯉が泳いでいて涼やかだ。

「ここ、願いが叶う井戸が在るらしいよ」

それは是非とも行ってみたい。

とりあえず、土地神様に ご挨拶せねば…
想像以上に神社の敷地は広い。

「結構あるね…」

なんて、少しボヤきながらも境内に たどり着き、お手水済ませて お口をゆすぐ。

お賽銭箱にお賽銭を投げ入れ、一礼二拍手、パンパンッ

…え、神様に何て言えば良いんだ??

弱った。神様に お願い事なんて、物心付いてから した時 無い。
手を合わせたまま、しばし首をひねった。
何の気の利いたフレーズも思い付かず「初めまして」と だけ、お伝えした。
これ、後の他所参拝の鉄板となる。

「長く お祈りしてたけど、何お願いしたんだ?」

「ええと…あはは」

笑うしかない。

私、井戸に何お願いするつもりだったんだろう…

他の先生方や学友とも合流して、お昼ご飯だ。
鯉料理の のぼりが出てたので、生まれて初めて“鯉こく”を食べてみた。
味は…覚えとらんな。私的に普通だったのかな。

草団子は一箱お土産に買った。
K先生が、そんなにどうすんだって箱数 買ってた気がする。

駐車場から再び、バイクと軽トラが発進する。
この先は高速に乗って、一気に南下だ。
料金所でチケットを受け取り、高速入って直ぐの路肩で点呼する。
念の為 出口を共有してから、みなバイクに またがった。

私も軽トラの助手席に乗り込み、シートベルトを掛ける。

安全確認して、K先生を筆頭に隊列が吹かした。

「うわー、置いてかれる!」

排気量は ほぼ同じでも、重たい四輪。
バイクのフルスロットルな加速には、到底 敵わない。

「ベタ踏みなのにー!」

M先生、めっちゃ悔しがってましたよw

この後は、あ…自粛しとこうかな。
皆 ヤンチャなバイカー、お察し下さい。
もちろん、他に走行車両は居ませんでしたよ。

出口の料金所 前路肩で、再び点呼。
軽トラ待ちされてた。

手近なコンビニで小休憩を取った。
バイク居並べ灰皿囲んで、革ジャンのオッサンら が地図を広げ、金髪若造ら はヤンキー座り。私も含む。
来場した他の車から、こちらをチラ見しながら 足早にコンビニに入店して行く、お客様方。

この一団、何だと思われてんのかな…

と 思ってたのは、内緒だ。

車通りの少ない 内陸の森林を突っ切り、海っぱたへ出た。
バイク連中は さぞかし爽快だったことだろう。

これで お天気良ければ最高なのに。

薄灰色の雲が かかり、青空は見えない。
いつも天気良くないんだよな…

岬で日暮れまで遊んで、確か現地解散だった。
県内方々から皆 通学してるので。
私は 学校に戻るM先生が運転する軽トラで、実家まで送って貰えるとのことだった。凄い助かる。
晩御飯に何か食べてから帰ろうか、なんて話しながら海辺の国道を北上していた。

そんな時、M先生の携帯が鳴った。路肩に寄って停車し、電話に出た。

「──え?」

かんばしくない声が上がった。

「○○、ちょっと道戻って、送るの遅くなっても良いかな?」

既に辺りは真っ暗、まだ実家までは距離が残ってた。
まあ、遅くなっても私的には問題無い。

一体、どうした事だろう?誰か転びでもしたんだろうか…

話を聞けば、一台バイクがエンコして 手近なディーラーに間借りして修理してるとの事。

それは大変だ!はやく助けに行ってあげなきゃ!
で、誰のバイク?

エンコしたのは、理科教員のバイクだった。

oh…

古いバイクを趣味でレストアしつつ愛用していた、理科教員。
パーツは新品では無く、同じバイクを数台保有し、移し替える手の込んだことをしていた。
当然、トラブルも多かった。
まさか軽トラが、学生ではなく教員のバイクを引き上げる羽目になるなんて…恥ずかしい人だな。

と 思いましたよ、当然。

途中コンビニに立ち寄り、M先生は何を買うのかと思えば、レジ後ろに陳列されている手土産用の箱菓子だった。

「お世話になってるディーラーに、お礼しなきゃ」

M先生…(尊敬)

M先生の心配り、大変勉強になりました。

無事、理科教員のバイクを軽トラの荷台に乗せ、三人並ぶと軽トラはぎゅうぎゅうで ちょっと狭かったけど、実家に送ってくれた上に 晩御飯も奢ってもらえた。

先生らは、そこから一度学校に戻り、軽トラを返しに行くのだと言う…

ここから往復したら、先生方お家着く頃には日付変わっているのでは…

大変だなあ“先生”という職業も。
なんて思いながら、軽トラが夜道に消えゆくまで見送った。

その節は、ごちそうさまでした!
助手席ツーリング楽しかったです♪ お誘い、ありがとうございます✨

あ、草団子、一箱じゃあ食い足りませんw
⑧に続く──

線維筋痛症と私⑥

私が “線維筋痛症” の名前を知ったのは、ひょんな出来事であった。
症状が出始めてから、3~4年 経過していたかな。

細かい話は すっ飛ばして、なんやかんやで 分譲マンションの小さな一室を買い、ご縁あった方と入籍し、一国一城の主であった頃。

とあるチラシがポストに入った。
その頃私は、背部の痛みに耐えかね仰向いて眠ることが出来なかった。
うつ伏せ でしかいられなかった。

そんな私を心配してくれていた配偶者が、私に一枚のチラシを差し出した。

「あなた、これ なんじゃない?」

A4程のカラーチラシに、大きく“線維筋痛症”と表記されていた。

治験の募集である。
詳細に書かれた症状は全身性のものだったけれど、読めば読むほど、部分的な痛み以外は 自分の症状と似通っていた。

私、これかもしれない…

治験を行う幾つかの病院のうち、近場が一件 。
昨年の出来事で、病院に行くのが ちょっぴり 怖くなっていた、私。
問い合わせるものか、凄く悩んだ。

職場でも失敗を繰り返し、降格 昇進、また 降格。
同じ大きな失敗で、始末書を何枚も書いていた。

無責任にも 家事全般は配偶者任せ。
料理の一つも振る舞えない体たらく。

住宅ローンも有るのに、このままでは いけない。
我が家を守らねばならない。
病気なのなら、治さねば。

そう、思い込んだ。

治験の募集チラシなぞ、未だかつて見た時 無い。ちょっとした運命的なものも感じていた。
問い合わせには、症状なんかのアンケートで30分程の時間がかかると記載されていた。
仕事があったため、なかなか窓口の時間と合わず、チラシが投函された数日後の、休みの日まで電話出来なかった。
ようやく電話してみると、結構な問診アンケートで小一時間、説明に時間が かかった。

線維筋痛症の お薬(リリカ)の治験で、プラセボという偽薬と リリカと、どちらが処方されるかは治験対象者には分からない。

それでも構わない。私は、自分の病名を知りたかった。

最後に どこの病院希望か答えた。

「申し訳ございません。そちらの病院は定員でして、受付終了しております」

──何だと!?

アンケートに答えた労力 返して。先に希望病院 聞いてくれれば良かったのに…
と 思ったのは、内緒だ。

他の病院は遠く、通うのは厳しい。
仕方なくキャンセル待ちにしてもらったが、結局 連絡は無かった。
それから数ヶ月後、運命の日が訪れた。

仕事で直属の上司と喫茶店ミーティングをした後、珈琲を飲みながら雑談した。
上司が私の体調を酷く心配してくれていた。

「もう個人病院じゃなくて、おっきい病院で徹底的に検査してもらって!」

そう言い、その場で上司はスマホで病院を検索してくれた。

「次の休みで絶対に、ここ行くんだよ!行ったら結果を必ず教えて!」

約束して、私は言われた通りに検索してもらった総合病院に足を運んだ。
総合受付で症状を伝え 何科を受診したら良いか分からない旨を言い、最初は神経内科に案内された。

問診し お医者様が「線維筋痛症かもしれない」と言った。

あ、やっぱり そうなのか。

この総合病院で、私は お医者の口から初めて“線維筋痛症”の名前を聞いた。
ただ、その病院には線維筋痛症の専門医がおらず、診断は出来ない、との事。
他の病気の可能性も有るので、脳外科や整形外科も回る事になった。
その日は触診とレントゲンを数枚撮り、帰宅した。

重だるい猛烈な疲労を覚え、触診で うにうにされた箇所が強烈に痛んで眠れない。
私の体調で病院 行くのって、結構大変なんですよ。

一応 上司に「原因不明で検査続きます」と 一報入れた。

休みの度に病院通い。

MRIに筋力検査。既に 40kg有った握力は、15kg。女子レベルにまで落ちていて凹んだ。
診療科が代わると、同じ病院内でも都度、問診票を書き、症状の説明をせねばならない。
加えて、その病院には装置が無かったため、別の病院に検査してもらいに行ったりと、結構 面倒だ。

二ヶ月程、休みの度に 色々検査で回ったかな。

検査結果は、全く正常。やはり、体自体に異常は無かった。
「線維筋痛症の可能性が高い」
との事で、大学病院に紹介状を書いてくれた。

念の為、予約した方が良いかな、と思い、大学病院に電話した。

「線維筋痛症かもしれない」と伝えると受付嬢に、

「うちではやってません!」

ガチャンッ

と、受話器を置かれてしまった。

──えぇー??

途方に暮れた。
紹介状にはキッパリと大学病院宛の記載。

ううん、どうしたものか…

別の病院に行くにしても、他所宛の紹介状も受け取ってはもらえるらしいが、なんだか失礼な気もする。

総合病院に事情を電話して、紹介状の封筒を無地のものに替えてもらった。
医療事務の方が、線維筋痛症の専門医が居る病院を
検索して、プリントしてくれた。

その中に、治験のチラシに載っていた国立病院の名前が有った。
私は、その病院に行ってみる事にした。
⑦に続く──

「病院に行け」と言ってくださった上司には 頭が上がりません。
恐らく、仕事と思わねば、根気強く検査通いしなかったと思います。
感謝御礼です✨

時代劇フリーク

小学校低学年頃、私が観ていたのは 特撮シリーズ・合体ロボ や 魔女っ子アニメ、とりわけ必ず観ていたのが、時代劇だ。

当時は週に数本 時代劇ドラマが放送されていて、有名な題目のシリーズはチャンネル争奪戦にも及ばないほど、強い意志と情熱でテレビ画面に
かじりついていた。
時代劇ばっかし観てる幼い私を、家族は「変な子」だと思ってたらしい。

いや、今でも変な奴ですが…

私の言葉尻に ちょいちょい古臭い言い回しが出てしまうのは、その所為だと思う。

今でも 時代劇 好きですしね♪
小説のキャラ設定にも遺憾無く反映されていたり。

ただ、困った部分も有る。

台詞回しは覚えていても、お馬鹿な 私。
言葉の意味や 使い方を、軒並み間違えて 覚えているんだ。

コレ、地味に困る。

特に筆が乗ると そういった台詞がパンパン浮かんで来るんだが、言葉の意味を調べ直したり、なんか間違って覚えてて調べようもなかったり、事ある毎にフリーズしてしまう。
本当に、困る。

なんか良い 時代劇台詞の一覧みたいの、ないかな…

どのくらい時代劇が好きかって言うと、由○かおるさんの入浴シーンを引退なされた報道に、物凄く消沈したくらい 時代劇が好き。
なんか違うかw

中学校くらいまで、『水○黄○』を「みずときもん」と読んでいた、お馬鹿なんですよ。

セカンドハイスクールライフ⑧

一年生には整備の実習以外に、週1~2時間 整備学科の時間が有った。
大抵の整備関係の うんちく は、この時間で学んだものだ。

エンジンにも基本的なピストン式のもの、ロータリー型のもの、なんかの仕組みを習った。
ロータリー型の緻密な設計に惚れ惚れした。

並行して、実習もエンジンになった。
車から降ろされた、むき身の大きなエンジンが一機。
皆で取り囲んだのを覚えている。
エンジンを覗き見ていた私に、背後から整備補佐の理科教員に肩を叩かれた。

「これ、直して動くようにして」

抱えられている、オレンジ色の鉄の塊。

なんか見覚え有るな…

「何スか?それ」

「芝刈り機のエンジン」

どおりで見覚えの有る…

北海道で見たばかりの、芝刈り機。軸やハンドル 円刃の無い、オレンジ色に塗装されたエンジン単体。

ご縁は繋がっていた。

話によると、古く動かなくなってしまった 芝刈り機のエンジンを、動くまで直して欲しい、との事。
実習時間に やって良い、とも言われた。

とりあえず、差し出されたバレーボール程の小さなエンジンを受け取った。
表面の塗装は剥げ、砂や劣化したオイルで汚れた、古いジャンク エンジン。

なんか よくわかんないけど、任されたからには やり遂げねば。

その日から、実習上の片隅でエンジン修理。
壁に向かって あぐらをかき、独り黙々と 作業に打ち込んだ。

そもそも、どうやって始動するんだ?コレ。

北海道で見た芝刈り機は、スターターのワイヤーを引っ張っていたけど…

パッと見、エンジンのみで、ワイヤーなんか付いていない。

とりあえず、オレンジ色のカバーを外してみる事にした。
開いてみると、エンジンのオイルパンの横の針金パーツに、ちぎれたワイヤーが結ばっていた。

なるほど、仕組みは同じようだな。

エンジンを点火するためには、スパークプラグから火花を飛ばす。
スパークプラグは電気が通電して火花を出す。
基本的なエンジンの点火の最初に必要なのは、電気だ。

方法はいくつか有る。
バッテリーから電気を流す、キックスターター等で磁石とコイルで発電する、バイクだと大抵この二通り。
芝刈り機のエンジンもワイヤーだが キックスターターと同じ、エンジンを回転させると連動して動く、磁石とコイルの発電で電気を作る。

試しに切れたワイヤーを引いてみる。
針金から繋がった連動パーツがカタッと動くものの、エンジンが回転しない。
力いっぱいワイヤーを引いても、にっちもさっちも回らない。
中でパーツが錆びついてるのか、エンジンが焼き付いているのか。
回らないものだから、もんの凄おく力いっぱい誰か引っ張って、ワイヤーが切れちゃったんだな…

すげぇ剛腕だ。

なんて、ちょっと感心した。
ワイヤー千切れるって なかなか無いじゃないですか。

もし、焼き付いるなら、私で直せるもんだろうか…

エンジンは爆発を起こし、ピストンを動かす。
高熱の上に摩擦も加わる。潤滑用オイルが少なかったり劣化していると、部品が焼き付いてしまうんだ。
どんな状態かは知らんが、金属がくっつき合っちゃってるのって、溶接みたい感じだろうか…剥せる気がしない。

とりあえず、どんな状態なのか分解してみよう。

ドレインボルトを外し 中のオイルを出してみた。

oh…

とぽとぽ と流れ出たのは、真っ黒タールに変色した、古そうなエンジンオイル。
恐らく 新品で購入された芝刈り機は、ワイヤーが切れるまで、一切メンテされる事なく芝を刈り続けたに違いない。
農機具(?)もメンテした方が良いですよ。せめて、オイル交換くらい…

即、手が真っ黒。
ウエス(古着の雑巾)が重宝した。

マフラーにキャブレター、中はバイクのエンジンと変わらない。

あは、マフラー可愛い~い♪

だって蛇口みたいに ちいちゃいんだもの。可愛いじゃない。

周りのパーツは さておき、エンジン本体に取り掛かろうか。

──えぇと…え?コレ、どこが外れて、どこが開くの??

ひっくり返して見ても さっぱり分からん。
密閉されたエンジン内部、苦戦を強いられた。
見えているボルトを外せるだけ外してみた。
接合されている つなぎ目が、なんとなく有る。

箱を開くように、パカッと いけそうなものだけど…

試しに両側を掴んで左右に引いてみた。
ピクリともしない。

内部で爆発を起こすんだ。余程 強固に止まっているに違いない。

うし、てこの原理やるか。

精密なエンジン内部に傷を付けないよう マイナスドライバーにウエスを巻き付け、ドレンボルトを外した穴から突っ込んだ。

「うりゃッ」

パカッと つなぎ目が浮き、パッキンのゴムが剥がれた。

キタキター!…あれ??

ガチンッ と 数センチ離れた所で、エンジンは開ききらずに固まってしまった。

──まだ在るだと!!?

表面からは見えない内部に、数本のボルトが存在していた。
なかなかに奥まっていて、僅かな隙間から回すのは難しい。

ようやく全てのボルトが外れ、エンジン内部が御開帳。

おおお?授業で見たエンジン内部の絵の まんまだ!

教科書的なステレオタイプの構造に酷く感動した。

縦に二つに割った、ひょうたん を連想してもらいたい。
上の小さな小部屋で爆発が起き、ピストンの頭が推し下がる。
下の大きな部屋には、カムシャフト という卵型の円盤が刺さったような軸棒が在り、ピストンの垂直運動を、円運動に変換する。
ううん、伝わりにくいかな。

焼き付いてはなさそうだ。

(誤記) カムシャフト × → クランクシャフト ○

すんません、間違えてました。

ええと、説明難しいんですが、クランクシャフトが ピストンの上下動を円運動に変換。
連動するカムシャフトは、上の小部屋の給排気を促す。
…で、合ってるかな?
自信無くなった…興味有る方は画像検索なさって(泣)

エンジンを開いてみても、ワイヤーを引いて回転しない原因は分からない。
こういう よく分からん時は、オーバーホールに限る。

徹底的に清掃するのだ。
パソコンやスマホに例えると、キャッシュ削除かな。
バラせるとこまで分解し、研磨剤やシンナーで古く固まったグリース類を根こそぎ落とし、
エンジン内部と ピストンや シャフト(軸)、なんかは傷を付けないように 灯油で古いオイルを洗い流した。
時々、学友達に取り囲まれ、磨くのを手伝ってもらいながら、細かいボルトの一本一本まで、全部ピカピカに磨いた。
キャブレターという、ガソリンを噴射するパーツの目詰まりも清掃した。

ふいー、結構 綺麗になったんじゃね?

清掃が終われば、組み付けだ。
若干 期間が掛かっただけに、あれ?ここと ここ、どう組み合わさるんだ?
なんて、悩む事も多かったが、どうにか組み合わさった。

ピストンやシャフトを据えて、エンジン内部のカバーを開いたまま、切れたワイヤーを引いてみた。
パーツがピタゴラ的装置が如く連動し、ピストンが僅かに上下した。

やったー!

回りもしなかったエンジン、一歩 前進である。

長いワイヤーが有れば、エンジン かかるかもしんない。

いかんせん、短いワイヤーでは ピストン一往復も出来ない。
実習場でワイヤー的な物を探すが、見つからない。

「なんか紐みたいな物、無いッスか?」

職員室で事務員のS女史に相談した。

「こんなのしか無いけど」

S女史が出してくれたのは、荷造りに使う ビニール紐だった。
ビニール紐なら結構丈夫だし、いけるきがする。
早速、ワイヤーの代わりに長めに切ったビニール紐を結び付け、景気よく引っ張った。

「──ぎゃんッ!」

ドスンッ と、しりもちをつき背後に転がってしまった。
ビニール紐が切れたんだ。

流石にワイヤーの代わりにはならんのか…

ぼそぼそに ほぐれ 千切れたビニール紐を、しばし眺めた。

ううん、一本で強度が足りんのなら、束ねたらどうか…

工具箱の持ち柄に、5本引っ掛けた。
自動車整備の実習場で何やってんだ、と思わんでもなかったが、組み紐 編みである。
50cm程 編めただろうか。
ビニール組み紐をワイヤー代わりに、再挑戦。

カシュカシュカシュ…

組み紐がピストンを上下している感触がした。

いやったー✨

カバーを開き、エンジン内部を見ながら引いてみた。
組み紐に引かれ、ピストンが内部で上下し、連動する磁石とコイルも回転している。

これなら、発電して火花が飛ばせる!

新しくグリース類を塗布しつつ、仮止めだったボルトを締め付けていった。

ガソリン入れて、掛けてみたいな。

わくわくとしながら、ハッと気付いた。

ガソリンタンクが無い…

託されていたのは 芝刈り機のエンジン単体。他の部品は一切、付いていない。
M先生に相談した。

「キャブレターに直接 ガソリン入れたらどうかな」

なるほど、そんな手が!

ガソリン噴射装置のキャブレター、管の僅かにだが ガソリンを溜めることが出来る。

ドキドキしながら、組み紐を引っ張る。

いざ、尋常に!

──ドルンッ ドッドッドッ
シュウン…

即 ガス欠で止まったものの、確かにエンジンは掛かった。

いーっやっはー♪♪♪

長かった、本当に長かった…

あ、ヤッバ。エンジンオイル入れんの忘れてた。

慌てて教材のエンジンオイルを分けてもらい、補充した。
マネしちゃダメですよ。
見た目にも小綺麗になり、原因不明なのが ちと心残りではあるが、直ったエンジンを 理科教員に提出した。

ビニール組み紐のままだし…

私の青春時代の1ページに、色濃く刻まれ 濃密な時を共に過ごした、芝刈り機のエンジン、シバ君。

彼は一体 どこから来て、どこへ消えていったんでしょうね…
余談ではあるが、その後「タキサイキア①」が発生。
すっ転んだ自分のバイク修理に、夢中になって明け暮れていた、私。

一年生 後半の実習授業、皆が何をやって 何を学んでいたのか、実は知らない…
⑨に続く──

恋愛体質

ああああ、ヤバいヤバい…久々に想いの線が一本に紙縒りつつある…
ひょっとして、記事を読んでくださってるのかな、なんて盲目な勘違いを起こしている。
これは、いかん兆候だ。
嫌だ、嫌われたくない。同じ誤ちは二度と起こさない!
自制しろ!私は恋愛しちゃいけないんだ!勘違いなんだ!
だから、今 爆発させておく。

会話してみたい!
お逢いしてみたい!
ハグしたい!

好きです!
好きになっちゃいました!
大好きです!

私なんかに好かれても嬉しくないと思いますが、想いが溢れて止まりません。
私なんかに好かれても迷惑なだけなのに…

好きになっちゃって、ごめんなさい(号泣)!!

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