【対談集 vol.3】 鈴木ユキオ「刻の花」/「moments」について
今回の公演の新しい試みの一つは、衣装に山下陽光氏(ファッションブランド「途中でやめる」デザイナー)を迎えたことにあるだろう。お互いの作風の違いから、一緒に舞台を創ることに驚きの声があがっているが、実は20年以上前からの付き合いの二人にとっては必然のタイミングだったとのこと。あまり知られていない二人の繋がりや、クリエイションの過程についてざっくばらんに話を聞いた。
ユキオ「知らない人も多いと思うけど、実はヒカルくんとは20年以上前からの付き合いで。『ブルドックエキス』『金魚×10』(*どちらも鈴木ユキオの以前のカンパニー名)の時はトリッキーポジションでよく出演してもらってた。作品自体も今とは違って、いろんな人が出てるような作品で、作品中にコントしたり、喋ったり、絵描く人いたり….」
陽光「まだほっそかった頃ね(笑)。そういえば、すんごい昔『スズ(鈴木ユキオ)の衣装制作が間に合わない』ってなって、徹夜でgog(*板橋にあったオルタナティブスペース)に行って衣装制作手伝ったこともあった(笑)」
ユキオ「一緒に大阪のダンスボックスとかいろんなとこ行ったよね。静岡の公演に行った時は、まだ専門的な人誰も知らないから、ヒカルくんを謎の『舞台監督役』として連れてったし(笑)。その後も、地方公演観に来てくれたり、ヒカルくんの直売会に行ったりして、時々会ってた感じだよね」
陽光「最近、及川さん(*蹄ギガ = 鈴木ユキオが所属していたSALVANILLAの主宰)とのpodcastも聞いたよ。その後、会いに来てくれたりして。あの時の人たちがまだ自分でやりたいことやってて、たまに会うと嬉しくなる」
ユキオ「そんな時間の繋がりを経て、今回衣装をお願いしたんだけど、コロナ禍ということもあり、出演者が多い劇場作品に挑戦するのが久しぶりで。だからこそいろんなセクションで新しい挑戦をしたいと思ったんだよね。ゲストダンサーの出演や、ソロ作品とのダブルビルというのも挑戦のひとつ。『じゃあ、衣装はどうしよう』ってなった時、ヒカルくんの名前がスッと浮かんだ。今、作ろうとしている作品も瞬間の断片というか、時間のカケラみたいな物の集積を身体でやりたいと思ってたから、ヒカルくんのデザインと呼応するんじゃないかと」
陽光「いつもは衣装はどうしてんの?」
ユキオ「たまにお願いすることもあるけど、基本的には自分達で既製品をアレンジしたり加工したりすることが多いかな。衣装は、いつも悩むポイントだよ、最後まで。僕の舞台は、美術や空間をシンプルにすることが多いから、意外と衣装って大きな役割があるんだよね。美術としての役割も持ってるというか。そういう意味でも、ヒカルくんの『服』っていう概念そのものの広さみたいなものに面白さを感じてる」
陽光「声かけてくれたのは、自分的にもいいタイミングだった。前に、瀬戸内国際芸術祭で、ファッションブランドのPOTTO(ポト)さんに、ファッションショーの司会を頼まれたんだけど、それがPOTTOの服を着た人達のねるとんパーティーの司会だったのよ。それが面白くてさ。POTTOの服は変な感じだから、初めは服に着られているようなぎこちない感じだったんだけど、ある一定の空間に閉じ込められてずっと見ていると似合ってくるのよ。それで、こんなのやりたいわって思ってて。そんな時にスズから依頼があって、『こりゃカモネギだわ』って(笑)」
ユキオ「ステージ空間で、ダンサーが着て、動きがあって、照明もあって。洋服の見え方も全然違うだろうね」
陽光「確かに。それと、同じ舞台でも、演劇だと衣装に意味が必要になることが多い気がするから、衣装の立ち位置的にはダンスの方が面白いかもと思ってて。クリエイション中の映像を見せてもらったんだけど、やりながら普通にみんな爆笑してて、『これめちゃいい!』って思った。なんかよくわからんけど、何かのルールがあって笑ったり、動いてる。これこのまま見せてもいいじゃんって思ったくらい。プロセス段階のアイデアをそのまま舞台に乗せる感じで」
ユキオ「衣装からもいろいろアイデアもらってる。『刻の花』は再演だけど、衣装も新しく作ってもらうし、2作品は全然違うけど、どこかで繋がりを持ったらいいなと思ってる、衣装的にも。『moments』はいろんな瞬間を、いろんな身体がいろんな切り取り方をする小作品を並べるような意味合いもあって。ヒカルくんの一点ものだけど量産型のスタイルとも噛み合っていいと思ってるしね。もう一息がんばっていい作品にしますよ。っていうか、今日(公演2週間前)新しい衣装持ってきてくれて、そこからアイデアもらって新たなシーン出来そうだし(笑)」
陽光「こりゃ、たくさんの人に観てもらわんといけませんな」
<山下陽光 Hikaru Yamashita>
ハンドメイドファッションブランド「途中でやめる」主宰。1977年長崎県生まれ。18歳で上京し、文化服装学院を出て、劇団員や借金とり、Tシャツプリント工場勤務など2004年に「途中でやめる」をスタート。2005年に松本哉と高円寺で古着屋「素人の乱」をオープン。全商品無料販売などを行う。バイトをやめて好きなことだけして生きるためのワークショップ「バイトやめる学校」を日本全国各地で開催中。その内容をまとめた「途中でやめるがっこう」(タバブックス)発売。最先端の過去をガン見する「新しい骨董」のメンバー。
【途中でやめる】https://tochuyame.thebase.in
【twitter】https://twitter.com/ccttaa
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