映画は終わりが肝心(3) Nobody's perfect
巨匠ビリー・ワイルダー監督のコメディ映画「お熱いのがお好き」(1959年)。
禁酒法時代のシカゴ。サックス奏者のジョー(トニー・カーティス)とベース奏者のジェリー(ジャック・レモン)はマフィアに追われ、女装して女性楽団にもぐこまざるをえなくなった
ジョーは、楽団の歌手のシュガー(マリリン・モンロー)に恋してしまう。
刮目すべきはモンローの演技力がこの頃に急上昇していたことだ。
例えば、列車の中で歌う場面。
あるいはシェルの御曹子に化けたジョーとのやりとり。
これらを見れば、誰も彼女のことをちょっと頭の弱いセックスシンボルなどとは考えないようになっていただろう。
彼女はすでに大女優だったが、アクターズスチューディオで勉強するなどして、演技派女優に脱皮しようとしていた。
この映画の撮影時、精神的に不安定だったが、取り直すたびによくなったという。
この後、1961年公開の「荒野と女」に出演。そして1962年に死亡した(自殺だといわれる)。
映画に戻ると、ダフネに変装中のジェリーは、大富豪オズグッド3世(ジョー・E・ブラウン)から求婚される。
ホテルにマフィアが乗り込んで来たので、オズグッドのモーターボートで逃げ出す。
だが、このままでは結婚しなければならなくなる。
そこで、「私はタバコを吸う」「金遣いが荒い」「身持ちが悪い」など、自分の欠点を列挙する。しかし、I don't care「気にしない」と、かわされてしまう。
最後に万策尽きて、カツラをかなぐり捨てて、「俺は男だ」と怒鳴る。
それに対するオズグッドの答え。
Well, nobody's perfect.
(「完璧な人はいない」)
映画はこれで終わりになる
この文句は、ローマの休日のEach in its own way…と同じく、万能の言い逃れ法になる。
ただし、相手がこの言葉を知っていることが条件だ。
そして、使い方が難しい。
相手がジョークを理解する人か?雰囲気はどうか?などをみきわめる必要がある。
危ないと思ったら、心のなかで、自分の慰めに言えば良いだろう。
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