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デジタル・リマスター のマジックに乾杯!
古い映画のデジタル・リマスター版が、最近いくつも作られている。これまでは、名作なのにDVDの画質が非常に悪く、残念に思う場合が多かった。ところが、デジタル・リマスター版によって、これまで諦めていた鮮明な画像を見ることができるようになった。
1950年代は映画の黄金期だった。原版の保存状況が良く、現代でも良質の画像を見られる場合もある。しかし、多くは、フィルムの保存状態が悪いためか、DVDの画質が極めて悪い。
例えば、51年のイギリス映画「黒水仙」。「色彩のマジック」と呼ばれたほどの美しい画面のはずなのだが、これまで購入できたDVDでは、見るも無残な色調になっていた。マジックは想像するしかなかったのだ。
ところが、このデジタル・リマスター版が、制作された。期待通りのすばらしい色彩だ。目も眩むほど美しいシスター・クローダ(デボラ・カー)の映像を見ることができる。
デボラ・カーは不思議なことに、オスカー(アカデミー主演女優賞)を一つも取っていない。「美貌に頼って、演技力不足」と思われているのだろう。映画女優は、美人過ぎると損するものだ(そのせいか、最近の女優には、彼女のような完璧な美女はいない)。
「クオヴァディス」(デボラ・カー主演)や「聖衣」もデジタル・リマスター版のBLDが制作されている。
「聖衣」は、ジーン・シモンズ。彼女は「黒水仙」のカンチ役。彼女もオスカーを取っていない。彼女は、出る映画ごとにまったく異なる姿を見せてくれる。
ローレンス・オリヴィエの「ハムレット」でオフィーリア役をやっている。宮中劇の場面が最高。
「黒水仙」と並んで高質画像を長年求めていたのは、「静かなる男」。
巨匠ジョン・フォード監督の1952年の作品。元ボクサーのショーン・ソートン(ジョン・ウエイン )が、アメリカから生まれ故郷のアイルランドの村に戻り、そこで出会う人々との物語。
私は、これまでDVDで、百回以上見たと思う。しかし、見るたびに画質の悪さを残念に思っていた。違うバージョンと思われるDVDを3枚購入した(うち1枚はアメリカ製)が、すべて駄目だった。
フォード監督生誕120年を記念してリマスター版が作られたことは知っていた(これは、日本でも2014年に映画館で上映された)。「イニスフリー」という実験的記録映画では、鮮明になった画像の1部も紹介されていた。しかし、映画本編そのものは、日本では発売されていなかった。
このデジタルリマスター版を手に入れた。アメリカで制作されたもの。 BLDなので、リージョンフリーであることは確かめていたが、届いたディスクの表紙には「北米地域での販売を勧める」とある。果たして再生できるかどうかドキドキしながらプレイヤーにかけると、見事に素晴らしい画面が現れた。
久しぶりに、心からのしあわせを味わった。デジタルリマスター技術に乾杯!
メアリ=ケイト・ダナハを演じる主演女優モリーン・オハラの表情、とくに目の動きが、これまでははっきり分からなかった。背景の風景もよく見えなかったところが多かった。これらがはっきり分かると、別の映画のように感じられる。
ちなみに、この映画は、当時のハリウッドでは珍しく、現地ロケが行われた。場所はアイルランド西部のコング(Cong)という町。
Google マップで検索すればすぐに見つかる。ストリートビューを見ると、映画に出てくるCohanというバーが、映画のままの姿で町角に立っている!
ストリートビューなので、周りを歩き回ってみることもできる。
ここでもIT技術のすごさに感激する。
驚くべきことに、バーの建物も、道も、映画の様子とまったく変わらない。違うのは、道に自動車が見えることだけだ。
映画では、2人が乗った自転車がT字路から下っていく。ストリートビューでそのとおりに下ると、静かで美しい道が続いており、映画のとおりの清流が流れている。
ところで、この町の名は、映画ではイニスフリーになっているが、現実にはそうした名の町は存在しない(これは、アイルランドの詩人ウィリアム・バトラー・イェイツの詩に出てくる湖の島)。
映画で、メアリ=ケイトがIsle of Insfreeを歌う場面がある。この歌はCeltic Womanのシリーズにも収録されている。非常に美しい歌だ。歌詞は映画とCeltic Womanで違うが、私は映画のバージョンのほうが好きだ。