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間違った報道はしないでほしい
「フェイクニュース」ということが言われる。
日本の新聞はフェイクニュースを流さないと考えられている。しかし、そんなことはない。
経済の問題で話がやや専門的になると、平気でフェイクニュースを流している。
その典型が、「2013年からの異次元金融緩和策によって、市中に流通するマネーがじゃぶじゃぶに増えた」との説明だ。
この説明は、金融緩和についての記事で、決まり文句のように出てくる。
しかし、これは全くの誤報である。
異次元金融緩和政策によって増えたのは、「マネタリーベース」である。マネタリーベースの対前年比は、13年の秋から14 年の春まで、50%を超えた。
「マネタリーベース」とは、具体的には、日銀当座預金と日銀券の和である。これは、「マネーのモト」である。この大部分を占める日銀当座預金は、民間主体が支払いに使えるマネーではない。
市中に流通するおカネの残高は、「マネーストック」と呼ばれる。これは、預金と日銀券の和である。
「マネタリーベース」が著しく増加した半面で、市中に流通するマネーの総額(マネーストック)は、ほとんどは増えなかった。年率2~4%で増加しているにすぎない。
15年9月を12年 9月と比べると、マネタリーベースは2.67倍になった が、M2は、11.1%増えたに過ぎない。
テレビや新聞で流されているニュースや解説の大部分は、以上でマネタリーベースとマネーストックの違いを理解していない。
だから、間違った報道になっているのである。
日銀は、マネタリーベースを動かすことはできるが、マネーストックを直接に動かすことはできない)。
異次元金融緩和は、市中から大量の国債を買い上げることによって、マネタリーベースを著しく増大させた。しかし、日銀が国債を買い上げた代金は、日銀当座預金に積まれたまま になっており、日銀券や銀行貸し出しなどの「オカネ」にはなっ ていないのだ。マネーストック増えなかったのである。これは、貸し出しが増えなかったからだ。
これは、正統的な金融政策の理論からすると、緩和政策の失敗だ。なぜなら、マネーストックが増加しないと、金融緩和が実体経済に影響を与えることはできないからである。
金融政策が実体経済に波及するルートは働かず、期待だけが実態と乖離して変化した。そのため、為替レートや株価などの資産価格だけが大きく変化した。
経済活動に直接の影響はないマネタリーベースの増加を見て「マネーが増えた」と言っているのは、ある種の幻惑効果なのである。