年金支給開始年齢の70歳引き上げは不可避
公表の遅れていた「2019年財政検証」が来週公表される予定と報道された。
問題は、「100年安心年金」(100年間にわたって年金財政を維持する)が実現可能かどうかだ。
2014年財政検証によれば、被用者年金の被保険者数は、2015年から2040年の間に20.8%減少する。これは、年率で言えば、0.93%の減少になる。
他方で、老 齢 厚 生 年 金受給者(老齢相当)は、2015年の1760万人から2040年の1990万人まで、13%増加する。これは、年率で言えば、0.49%の増加になる。
以上合わせると、年金財政は、年率で1.42%悪化すると考えてよい。
これにどう対処するか。
現在、支給開始年齢を65歳まで引上げることが行なわれている(3年に1歳づつの引上げ)。この効果は、年金支給額を年率で1.3%ほど削減する効果を持つ。
これは、支給開始年齢が65歳になる2025年までは強力な手段だ。しかし、現在のところ、これ以上の引き上げは考えられていないので、それ以降の年度については、効果がなくなる。
マクロスライドは、年金支給額を年率0.9%ほど削減する。
ただし、その実行に制約がかかっているので、実行できるかどうか分からない。
実行できるとしても、これだけでは足りない。上述の「年率で1.42%悪化」と比較すれば、年率で0.5%強不足だ。
実質賃金が上昇すると、年金財政は好転する。
仮に実質賃金が1%上がれば、保険料収入は1%増える。しかし、給付はその年の新規裁定には効くが、それだけだからだ。
したがって、実質賃金が年率0.5%以上上昇し、かつマクロスライドを実行すれば、「100年安心年金」は実現できる
しかし、この数年間の実質賃金は下落している。
以上を考慮すると、支給開始年齢の引き上げを2025年以降も継続し、70歳支給にすることが不可避と考えられる。
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