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『日本が先進国から脱落する日』   全文公開 第1章の2

『日本が先進国から脱落する日 』 円安という麻薬"が日本を貧しくした‼ (プレジデント社)が3月1日に刊行されました。
これは、第1章の2全文公開です。

2 価格が安いことより、
  賃金が低いことが問題

価格が安い国は、賃金も低い
 ところで、価格が安いのは、それだけを見れば、悪いことではない。所得が決まっているとすれば、価格が安いほどたくさんのものを購入できるからだ。
 では何が問題なのか?
 それは、ビッグマックの価格が安い国では、賃金も安い場合が多いからだ。つまり、ビッグマックの価格は、賃金の代理変数になっているのである。
 次項で見るように、ビッグマックの価格とその国の賃金の比率は、どの国でもほぼ同じと言ってよい。つまり、「平均賃金がビッグマック価格の何倍か」という数字は、どの国でもほぼ同じと言える。

日本の賃金はアメリカの約半分で、韓国より低い
 OECD(経済協力開発機構)が賃金に関するデータを公表している。
2020年のデータを見ると、つぎのとおりだ(2020年基準の年間実質賃金、2020年ドル表示)。
 日本は3万8515ドルだ。他方でアメリカは6万9392ドル。したがって、日本の賃金はアメリカの55・5%でしかない。(注)
 本章の1で、日本のビッグマック価格はアメリカの62・8%と述べた。それとほぼ同程度の数字だ。
 したがって、ビッグマック指数は、その国の賃金の国際的な位置づけを表していると解釈することができる。日本のビッグマック指数が世界水準より低いのは、日本の賃金が世界水準より低いことを示している。
 OECDのデータでヨーロッパの主要国の賃金を見ると、ドイツは5万3745ドル、イギリスは4万7147ドル、フランスは4万5581ドルなどとなっている。人口が少ない国を見ると、スイスは6万4824ドル、オランダは5万8828ドル、ノルウェーは5万5780ドル、アイルランドは4万9474ドル、スウェーデンは4万7020ドルなどと、概して高い。大雑把に言えば、日本の水準はこれらの国の6〜8割程度ということになる。
 韓国の賃金は4万1960ドルであり、日本の値はこれよりも低い。
日本より賃金が低い国は、旧社会主義国と、ギリシャ、イタリア、スペイン、メキシコ、チリぐらいしかない。日本は、賃金水準で、いまやOECDの中で最下位グループに入っている。

注 OECDの賃金データは、実質賃金の購買力平価による評価だ。        このため、過去の時点での国際比較はできないことに注意が必要だ。しかし、2020年基準であるので、2020年の値は、名目値を市場為替レートで換算したのと同じ値になるはずだ。なお、購買力平価については、第3章を参照。



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