貿易戦争で中国の経済成長が鈍化

 中国の対米貿易額は2018年7月に米中双方が第1弾の制裁関税を発動して以降、減少傾向が続いている。
 今年5月には、米中貿易協議が決裂したことを受けて、アメリカが年2千億ドル分、中国が600億ドル分の相手国産品に対する追加関税率を最大25%に引き上げた。

◇中国の対米輸出は8%程度減少
 これによって貿易額はどのような影響を受けているか?
 中国税関総署が7月12日発表した貿易統計によると、6月の対米輸出は、前年同月比7・8%減の392億ドル、米国からの輸入は同31・4%減の93億ドルだった。
 上半期(1~6月)の対米輸出は前年同期比8・1%減、輸入は同29・9%減となった。

 以下では、簡単化のため、上記の7.8%と8.1%という数字を丸めて、中国の対米輸出減少率を8%としよう。
 ところで、中国の対米輸出は、中国のGDPの3.43%を占める(2016年の値)。この8%とは、GDPの0.27%だ。
 したがって、対米輸出の減少によって、中国のGDPは、直接的には0.27%ほど減少するはずである。

◇中国の実質GDPは0.4~0.7%ほど下落
 では、中国の実際のGDPは、どのように変化したか?

 中国国家統計局の発表によると、2019年第2・四半期の実質国内総生産(GDP)は、前年比6.2%増となり、第1・四半期の6.4%増から鈍化した。これは、1992年第1・四半期以来、27年ぶりの低い伸び率だ。
 2017年の実質成長率は6.9%、18年は6.6%だったことと比べると、0.4~0.7%ポイントほど下落したことになる。

 この数字は、上で計算した0.27%に比べて、2倍ないし3倍の水準だ。

 なお、これは実質成長率だが、中国の名目成長率は実質成長率より3%ポイント程度高いので、名目GDPの変化はもっと大きくなるだろう。

 中国のGDPが貿易戦争で悪影響を受けるのはあらかじめ予想されたことだ。ただ、影響は意外に大きい。
 この原因としては、いくつかのものがある。
 第1に、上で見たのは貿易額だけGDPが減少するという直接効果であるが、実際には波及効果が発生しうる。例えば、設備投資が減少することだ。そうなれば、GDPに対する影響はもっと大きい。

 第2は、中国GDPに対する影響は対米輸出だけではないということだ。その他の国との貿易が影響けている可能性影響受けている可能性がある。


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